2016 Fiscal Year Annual Research Report
子牛神経疾患の生前診断と予後判定を目指した神経障害マーカーの網羅的検索
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16H05034
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
猪熊 壽 帯広畜産大学, 畜産学部, 教授 (70263803)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 牛 / 神経障害マーカ― / Neuron specific enolase / S100B / Neospora |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、神経疾患症例収集と材料採取、および既知神経障害マーカーの測定と感度・特異性の検討を中心に研究を進めた。1)2005~2016年度の間に確定診断を得た神経疾患症例146検体の血清S100BをELISA法により測定し、既に報告している脳脊髄液S100B測定値と比較検討した結果、血清S100Bは脳脊髄液S100Bよりも相当な低値を示した。また、神経疾患牛の血清S100B値は健常牛に比べて有意に高かったが、非神経疾患牛と比較すると有意差がみられず、血清S100Bの測定は神経疾患に対する特異性が高くないものと思われた。しかし、脳腫瘍、小脳変性症、水頭症症例の血清S100Bは非神経疾患牛に比較して高値を示し、血清S100B測定が神経疾患の診断に利用可能であることが示唆された。2)後躯麻痺を呈し、病理組織学的に脊髄神経変性が確認された子牛の症例において、脳脊髄液中neuron soecific enolase (NSE)をELISAにより測定したところ、複数の健常牛の脳脊髄液NSEに比べて高値が認められ、脳脊髄液中NSEの測定が子牛の神経疾患の臨床診断上応用できる可能性が考えられた。3)子牛の先天性ネオスポラ感染症による後躯麻痺症例に遭遇し、血清および脳脊髄液中の抗ネオスポラ抗体を測定したところ、著しい高値が認められた。臨床診断が困難であった先天性ネオスポラ症による子牛の神経疾患の診断に抗体価測定が有用であると考えられた。このため、新たな研究項目としてネオスポラ抗体測定の臨床的意義の検討を追加で開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は当初計画に従い、神経疾患症例収集と材料採取、および既知神経障害マーカーの測定と感度・特異性の検討を主に研究を行い、次のような結果が得られた。1)神経疾患については2005~2016年度に病理解剖により確定診断を得た症例146症例の血清および一部の脳脊髄液サンプルを整理するとともに、新たに得られた神経疾患症例の症例報告を行った。これらサンプルについて、既知神経障害マーカーとして血清S100BをELISA法により測定し、既に報告している脳脊髄液S100B測定値と比較検討した結果、血清S100Bは脳脊髄液中のS100Bよりも低値を示した。2)神経疾患牛の血清S100B値は、健常牛の血清S100Bに比べて有意に高かったが、非神経疾患牛の血清S100Bと比較して有意差がみられず、血清S100Bの測定は神経疾患に対する特異性が高くないものと思われたが、脳腫瘍、小脳変性症、水頭症症例の血清S100Bは高値を示すものが多く、血清S100B測定が神経疾患の診断に利用可能であることが示唆された。3)脊髄神経変性を認める子牛の後躯麻痺症例において、脳脊髄液中NSEを測定したところ、健常牛に比べて有意に高値が認められ、脳脊髄液中NSEの測定が臨床診断上応用できる可能性が考えられた。4)自然発症神経疾患症例のネオスポラ感染症に遭遇したため、新たな研究項目として、血清および脳脊髄液中ネオスポラ抗体の診断的意義の検討を開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度以降は以下のように研究を推進する予定である。1)引き続き神経疾患の自然発症例を収集し、血清および脳脊髄液サンプル採取を継続して行う。また、病理解剖により確定診断をつけることができた症例についてはS100B、NSEなどの既知神経障害マーカーを測定してその意義を検討し、積極的に症例報告としてその知見を公表する。2)プロテオーム解析による新規蛋白マーカーの検索:採取保存されている症例の脳脊髄液を材料に二次元電気泳動を行い,疾患特異的蛋白質を検索する。疾患特異的スポットがみられた場合には,質量分析法により蛋白質の同定を行い、診断に有用な蛋白質の性状を解析する。3)体液中疾患特異的遺伝子マーカーの検索として、神経疾患症例からRNA解析用サンプルとしてのCSFおよび血液を採取し、mRNA抽出後ランダムプライマーと逆転写酵素を用いて cDNA を合成する。IL-1, IL-2, IL-4, IL-6, IL-12, TNF, IFN など主要なインターロイキン遺伝子、およびS100B, NSE, Tau,GFAP, Nestin, NeuN, Fox3, Neurofilament, Periplerin 等の神経細胞に関連する蛋白質をコードする遺伝子に注目して各種疾患発症時のCSF および末梢血液中の発現状況を定量的 RT-PCR 法により遺伝子発現状況を明らかにする。 4)牛の血清および脳脊髄液中ネオスポラ抗体の診断的意義を明らかにするために、各種神経疾患及び健常牛のネオスポラ抗体保有状況および抗体値を測定する。
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Research Products
(5 results)