2017 Fiscal Year Annual Research Report
子牛神経疾患の生前診断と予後判定を目指した神経障害マーカーの網羅的検索
Project/Area Number |
16H05034
|
Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
猪熊 壽 帯広畜産大学, 畜産学部, 教授 (70263803)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 牛 / 脳脊髄液 / バイオマーカー / プロテオーム解析 / 診断 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)牛の神経疾患症例の収集および脳脊髄液(CSF)と血清の採取、およびneuron specific enolase (NSE)の測定と感度・特異性の検討を行った。神経症状を呈した75頭(Neu群)の血清59検体とCSF75検体,神経症状のない45頭(non-Neu群)の血清35検体とCSF44検体,健常子牛9頭(C群)から血清9検体とCSF9検体について、ELISA法によりNSE濃度を測定した。C群のNSE濃度からカットオフ値を1.35ng/mlと3.58ng/mlと定めたところ、高値を示した検体は,Neu群血清で59検体中15検体(25%),non-Neu群血清で35検体中11検体(31%),Neu群CSFで75検体中19検体(25%),non-Neu群CSFで44検体中2検体(5%)であった。血清NSE濃度はNeu群とnon-Neu群で有意差はなく,また炎症性疾患を伴う症例は高値を示す傾向があり,神経損傷への特異性は低いと考えられた。いっぽうCSF-NSE濃度はNeu群でnon-Neu群より有意に高値を示した。NSE濃度が高値の症例は神経に組織学的変化を有する傾向があった。牛のCSF-NSE濃度は神経損傷の指標となり,神経疾患マーカーとなる可能性が示唆された。 2)牛の脳脊髄液性状を解析した。健常対照群のCK及びLDH活性の平均±2SDはそれぞれ10±18 IU/L及び15±12 IU/Lに対し、髄膜脳炎症例ではCKは59 IU/L,LDHは425 IU/Lと高値を示した。また,CSFの二次元電気泳動解析を実施したところ、髄膜脳炎症例では対照にみられない19カ所のスポットが認められた。このうち明瞭なスポットの一つを質量分析したところハプトグロブリンであることが明らかとなり、中枢神経の傷害程度を表すバイオマーカーとなりうると考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は神経疾患症例収集と材料採取、既知神経障害マーカーneuron specific enolase (NSE)の測定と感度・特異性の検討、および新規マーカー検索のための脳脊髄液の生化学性状の解析及びプロテオーム解析を実施した。 1)NSEの臨床的意義について、各種疾患の血清およびCSFのNSEを比較検討したところ、CSFのNSE濃度は血清のNSE濃度より、特異的に神経損傷を示唆する指標となることが明らかとなり,神経疾患マーカーとして応用可能であると考えられた。また、健常子牛のCSF中NSEの基準値が明らかとなった。 2)CSF中の簡易バイオマーカーとして、CSFの生化学的性状を解析したところ、健常子牛のCK及びLDH活性の平均±2SDはそれぞれ10±18 IU/L及び15±12 IU/Lに対し、髄膜脳炎症例ではCKは59 IU/L,LDHは425 IU/Lと高値を示したことから、CSFの生化学的性状はより安価で簡便な神経損傷のマーカーとして利用できる可能性が示された。 3)子牛脳脊髄液の二次元電気泳動解析を実施したところ、髄膜脳炎症例では対照にみられない19カ所のスポットが認められた。このうち明瞭なスポットの一つを質量分析したところハプトグロブリンであることが明らかとなり、中枢神経の傷害程度を表すバイオマーカーとなりうると考えられた。 4)神経疾患症例を収集する過程で新たに遭遇した神経疾患症例のうち、臨床的及び病理学的に意義の大きい症例として小脳皮質変性、重複脊髄症、髄膜脳炎、てんかん様発作、新生子仮死、重複脊髄症及びネオスポラ症について、論文及び学会にて報告を行った。
|
Strategy for Future Research Activity |
1)30年度もこれまでと同様、臨床獣医師と共同して牛の各種神経疾患の自然発症例を収集し、血清および脳脊髄液サンプル採取を継続する。病理解剖により診断が確定された症例については、血清および脳脊髄液の生化学性状解析を行うとともに、症例報告としてその知見を積極的に公表する。 2)プロテオーム解析による新規蛋白マーカーの検索及び定量:各種神経疾患を伴う牛症例の脳脊髄液を材料に、二次元電気泳動を行い,疾患特異的蛋白質を検索する。疾患特異的スポットが得られた場合には,質量分析法により蛋白質の同定を行い、診断に有用な蛋白質性状を同定する。29年度の研究成果から髄膜脳炎特異性が予想された脳脊髄液中のハプトグロビン及びGlial Fibrillary Acidic Protein (GFAP)については、ELISA法を用いて各種神経疾患の脳脊髄液中含有量を定量し、感度及び疾患特異性を検討する。 3)疾患特異的遺伝子マーカーの検索:神経疾患症例からRNA解析用サンプルとしてのCSFおよび血液を採取し、mRNA抽出後ランダムプライマーと逆転写酵素を用いて cDNA を合成する。IL-1, IL-2, IL-4, IL-6, IL-12, TNF, IFN など主要なインターロイキン遺伝子、およびS100B, NSE, Tau,GFAP, Nestin, NeuN, Fox3, Neurofilament, Periplerin 等の神経細胞に関連する蛋白質をコードする遺伝子に注目して各種疾患発症時のCSF および末梢血液中の発現状況を定量的 RT-PCR 法により遺伝子発現状況を明らかにする。 4)牛のmicro RNAに着目し、脳脊髄液中の疾患特異的micro RNA発現パターンの解析を試みる。
|
-
[Journal Article] A clinical case of Neosporosis in a 4-week-old Holstein calf with acquired hind limbs paresis.2018
Author(s)
Uesaka, K., Koyama, K., Horiuchi, N., Kobayashi, Y., Nishikawa, Y., Inokuma, H.
-
Journal Title
J. Vet. Med. Sci.
Volume: 80
Pages: 280-183
DOI
Peer Reviewed / Open Access
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-