2017 Fiscal Year Annual Research Report
Development of therapeutic and preventive strategies for bovine subclinical endometritis through understanding the pathophysiological mechanisms
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16H05038
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
大澤 健司 宮崎大学, 農学部, 教授 (90302059)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
保田 昌宏 宮崎大学, 農学部, 教授 (10336290)
北原 豪 宮崎大学, 農学部, 准教授 (90523415)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 牛 / 子宮内膜炎 / 治療 / ポビドンヨード |
Outline of Annual Research Achievements |
ウシ子宮内膜炎の治療法の一つにポビドンヨード(PVP)液の子宮内注入がある。本研究では、分娩後早期の乳牛におけるPVP液の子宮内投与が子宮内膜環境およびその後の受胎性に及ぼす影響を明らかにすることを目的として実験を行なった。 分娩後5週目の乳牛120頭を、子宮内2%PVP50mL注入群(PVP群;n=40)、生理食塩液50mL注入群(生食群;n=40)、無注入群(Cont群;n=40)の3群に無作為に分けた。卵巣の所見は超音波診断装置を用いてD0とD7に観察した。排卵同期化処置はD7にGnRHを投与しCIDRを7日間挿入、D14にCIDR抜去と同時にPGF2αを投与、48時間後にGnRHを投与し、その16時間後に定時授精した。注入直前(D0)から注入後7日目(D7)まで8日間、サイトブラシを用いて子宮内膜スメアを連日採取した。スメアはDiff-Quick染色し、赤血球以外の細胞数を計測し、PMNの割合を算出した。D17の定時授精直前にも子宮内膜スメアを採取し、PMN%を算出した。 その結果、PVP群は他群と比較してD0からD1にかけてPMN%の一過性の上昇が認められたが、定時授精時までに平均PMN%は8%未満に減少した。また、生食群においても同様に減少した。一方、無注入群では定時授精時における平均PMN%が8%以上であった。定時授精による受胎率はPVP群が25%、生食群が5%、Cont群が7.5%でPVP群は他群と比較して有意に受胎率が高かった。 以上より、子宮内へのPVP注入は、翌日までに子宮内膜に一過性の炎症を惹起したものの、定時授精時までに炎症はほぼ消失した。分娩後49-55日での定時授精による受胎成績より、分娩後5週目の子宮内へのPVP注入は分娩後早期の子宮修復に一定の役割を果たしていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上記研究成果については当初の計画以上の頭数を供試することができた。牛子宮内膜炎の病態と診断治療に関する研究成果として異なるサブテーマで3演題の口頭発表を行なった。現在、国際誌への原著論文を作成中である。 また、これらとは別に分娩後3週あるいは5週の時点でのポビドンヨード投与による子宮内膜PMN%およびその後の繁殖成績への影響に関する試験が進行中である。 さらに、ウシ子宮内における炎症性サイトカインのmRNAならびにタンパク発現を明らかにするため、同一個体の分娩後3週から9週まで継続的にサイトブラシで採取した子宮内膜上皮サンプルからRNAを抽出し、炎症性サイトカイン (TNF-α、IL-1α、IL-1β、IL-8、およびIL-10) のmRNA発現量を解析中である。 加えて、細菌学的検索ではLactobacillusに着目し、本菌が一定割合の牛の子宮内膜から分離されること、および本菌の存在がその後の子宮環境に及ぼす影響についても実験が進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
子宮内膜炎の病態解明に関しては、牛子宮内膜および全身循環における炎症性サイトカインの動態について解析をすすめ、mRNA発現動態とその後の繁殖成績に及ぼす影響を示すことで予後判定の指標を得る。また、サイトブラシで得られた子宮内膜細胞のサブポピュレーションを解析し、子宮内局所での免疫応答の動態を調べる必要がある。さらに、サイトブラシで得られた子宮内膜表層における炎症反応がどの程度子宮内膜炎の病理学的状態を反映しているのかを知るために子宮内膜バイオプシーを実施し、粘膜下組織や固有層における組織を観察する。 診断法に関しては、子宮内膜におけるPMN由来のミエロペルオキシダーゼおよびエステラーゼ活性を観察した結果、エステラーゼ活性と炎症度との関連を確認した。この結果を基にして、ポイント・オブ・ケアとしての診断技術の可能性を検討する。 治療法に関しては、分娩後早期に子宮内膜炎と診断された個体に対するポビドンヨード液の子宮内投与の子宮内環境に及ぼす影響を客観的に明らかにし、その後の繁殖成績を追跡することで治療法としての有効性を評価する。 予防法に関しては、私達が確立したサイトブラシによる潜在性子宮内膜炎の診断基準に従って、臨床現場における罹患率を算出するとともに、繁殖疫学的手法を用いて発症のリスクファクターを同定することで生産現場における予防法を提示する必要がある。 以上について得られた結果を取りまとめて学会口演および原著論文として公表する。
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Research Products
(4 results)