2016 Fiscal Year Annual Research Report
牛の分娩時胎盤節における炎症誘導機構の解明と胎盤成熟誘導型分娩誘起技術開発
Project/Area Number |
16H05040
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
平山 博樹 東京農業大学, 生物産業学部, 教授 (60390861)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古山 敬祐 地方独立行政法人北海道立総合研究機構, 農業研究本部根釧農業試験場, 研究職員 (50611026)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ウシ / 分娩 / 胎盤停滞 / 炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、新たに乳牛および肉牛から分娩時の胎盤節採取を実施した。乳牛に関しては、自然分娩時に加えて、プロスタグランジンF2α、デキサメサゾン、トリアムシノロンアセトニド、ベタメタゾンを用いる種々の方法による誘起分娩時に胎盤節採取を行っており、次年度以降も試料採取と分娩状況調査を継続するとともに、グルココルチコイド投与が胎盤節に及ぼす影響を解析する。肉牛の胎盤節に関しては、これまでに採取した試料も含めてプロスタグランジン合成に関わる酵素群の発現を詳細に解析するとともに、次世代シーケンサーによるRNA-seqを行い、分娩時の胎盤節で変化するパスウェイを探索した。その結果、従来の臨床的な分娩誘起方法に対して持続型および高用量のグルココルチコイドを投与する方法では、胎子胎盤におけるCOX2およびPGESのmRNA発現が増強され、プロスタグランジンE2を介して胎盤剥離が促進される可能性が見いだされた。また、アラキドン酸を遊離させるPLA2のmRNA発現に個体差があり、PLA2はPGFSとmRNA発現量が相関することから、プロスタグランジンF2αを介して胎盤剥離と関係する可能性が示された。RNA-seqの結果から、誘起分娩に対して自然分娩時に亢進あるいは抑制される興味深いパスウェイが複数検出され、一部の炎症に関わる遺伝子の発現については詳細な解析を開始している。今後、炎症制御に関わるものを中心に、細胞増殖に関わるパスウェイ等も含めて解析を進めていく。胎盤節におけるBoLA発現は、mRNA発現解析を一部実施済みであり、今後免疫組織化学による局在解析を含めて実験を進める計画としている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、次世代シーケンサーによるRNA-seq解析および基本的なデータ解析を終えている。胎盤サンプルの採取と解析も順調に進めている。主要組織適合抗原に関する解析は、解析方法の変更も含めて一定程度研究を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
自然分娩と誘起分娩時の胎盤節採取を継続するとともに、それらの比較からグルココルチコイドが胎盤成熟に及ぼす影響を調査する。RNA-seqの結果から明らかとなった分娩時胎盤節で変化するシグナル伝達系について、特に炎症関連のシグナルについて詳細な発現解析を行う。さらに、分娩時の胎盤節における炎症誘導因子候補の作用を証明すべく、組織培養による候補物質の添加実験を実施する。
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