2016 Fiscal Year Annual Research Report
新規2型糖尿病マウスの膵臓β-細胞喪失に関わる責任遺伝子の同定と病態解析
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16H05048
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
須藤 淳一 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 生物機能利用研究部門 動物機能利用研究領域, 主席研究員 (60355740)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 疾患モデル動物 / 遺伝解析 / 2型糖尿病 / β-細胞 / 性差 |
Outline of Annual Research Achievements |
遺伝背景であるB6.Cg-Ayをコントロールとし、第4染色体QTLの95%信頼領域、112~152MbpをカバーするQTLコンジェニック系統について、表現型解析を行った。Cg-12, Cg-345の両系統に有意な体重低下、また高血糖基調が認められた。しかしながら、インスリン値に関しては、Cg-345はむしろ高インスリン値を示した。Cg-12はCg-345よりも有意にインスリン値が低下したことから、責任遺伝子を含む可能性はあると考えられた(が、表現型効果は期待ほど明確ではなかった)。今後、β細胞の異常の有無を検索することにより(病理標本はすでに作製を完了している)、Cg-12が責任遺伝子を含むか否かを最終判断する。これに伴い、コンジェニック系統でなく、すでに作出していた雌C57BL/6J × 雄DDD.Cg-Ay F2-Ayマウス229匹によるQTLマッピングを優先して実施した。体重・血糖値・インスリン値などにすべて有意なQTLが同定された。特にインスリン値に関して高いLODスコアが得られた(LOD score 6.5)。95%信頼領域は73~132Mbpとなり、以前の解析結果と比べて、かなり近位部に変更された(ピークは124Mbp、D4Mit279近傍)(この位置に相当するマーカーを保有するのがCg-12)。すでに、73~112cMに相当するDDD系統由来ゲノムを含むコンジェニックマウスを作出中であり、次年度以降解析する。単独飼育した場合、雄DDD.Cg-Ayマウスの体重減少は14.2週齢頃に生じるため、4~16週齢にわたる期間、2週間隔で単独飼育雄DDD.Cg-Ayマウスの体重・血糖値・インスリン値および膵臓病理の検索(未完了)を行った。生後の8~10週齢の期間にインスリン値が激減することが明らかであった。したがって、この10週齢以前にβ細胞の減少が観察されるはずである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①膵臓β細胞の減少の有無を判断する必要があるが、当初十分に責任遺伝子を含むと考えられたコンジェニック系統に十分な表現型効果が認められなかった。第4染色体のより近位部を保有するコンジェニック系統を育成することで解決可能である。すでにそのような追加のコンジェニック系統の育成を始めており(現在N4世代の戻し交配を実施中)、今年度から来年度にかけて検証する。(これに関連して)②QTLの存在領域が、以前の結果に比べてかなり近位部に変更されたため、候補遺伝子検索の対象領域にも再考が必要となった。これについては比較的容易に対応可能である。③低インスリン値を示すF2-Ayマウスのうち、本来発症しないはずのB6/B6よびDDD/B6の個体がかなり含まれていたことから、第4以外の染色体にも責任遺伝子が存在する可能性が示唆された。これについては、以前の解析が戻し交配による解析で、B6/B6のホモ型は含まれておらず、この点が関係するのかもしれない。これについては十分解析可能である。④一方で、病態の発症時期に関する解析は予想以上に明確な結果が得られた。単独飼育した場合、明らかに、8~10週齢の間にインスリン値が激減するからである。4週齢の時点ではまだ高インスリン値は認められないが6週齢ではほぼ高インスリンとなること、10週齢以降は24週齢あたりまで漸進的にインスリン値が低下することが明らかとなっているが、もう少し詳細に病態変化を明らかにする必要がある。すでに膵臓β細胞のインスリン免疫染色標本を作製しているので、インスリンの動態と合わせて病態の変化を明らかにする必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
F2解析によって判明した、QTLの95%信頼領域のうち、より近位部73~112cMに相当するDDD系統由来ゲノムを含むコンジェニック系統を作出中であり、次年度以降解析する。コンジェニック系統に明確な表現型効果が認められた場合、当該系統ゲノムDNAを用い、全ゲノムリシークエンスあるいはエキソーム解析などを実施し遺伝子変異を同定する。 F2-Ayマウスにおいて、インスリン値が10ng/ml未満の、Ayマウスとしては低インスリンを示した55匹のうち、B6アリルをホモに持つ個体が5匹、DDD/B6ヘテロのマウスが20匹存在した。これらの結果から、第4染色体以外にも責任遺伝子座が存在する可能性が示唆されたため、第4以外の全染色体について、これら低インスリンマウスをジェノタイプし、可能性を検証する。また、これら低インスリンマウスを含む79匹のF2-Ayマウスについて、膵臓β細胞のインスリン免疫染色標本を作製しており(現在解析中)、β細胞減少の有無による責任遺伝子の質的マッピングを行う。 単独飼育した場合、明らかに、8~10週齢の間にインスリン値が激減するため、これにやや先行して膵島病変が生じるはずである。病変発症の前後の膵臓組織を用い、マイクロアレイやRNA-Seqなどにより、発現が変動する遺伝子を見つける。 今年度実施した単独飼育と同様に、単独飼育雄DDD.Cg-Ayマウスに雌を同居させた場合の病態およびその発症時期などの変化を経時的に明らかにする。同居させる雌を去勢した雄やホルモン投与した雌などで置換し、雌同居に伴う病態発症の変化の原因について、生理学的な端緒を探る。
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