2016 Fiscal Year Annual Research Report
細胞マシナリーの改変によるバキュロウイルス宿主制御ストラテジー
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16H05051
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
勝間 進 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (20378863)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | バキュロウイルス / トランスクリプトーム / メタボローム / クロマチン / 宿主制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
バキュロウイルスは自身が持つ100以上の遺伝子を巧みに利用することで、高度な宿主制御を実現し、子孫ウイルスの産生を最大限にすることが明らかになっている。これまでの研究は,個々のウイルス遺伝子の機能解析に重きが置かれてきたが、それらの機能が最終的にどのように統合され、ウイルス産生が最大化されているかはほとんど理解されていない。本研究課題では、これまでとは逆に、バキュロウイルス感染をシグナルカスケード、タンパク質合成・輸送システム、宿主ゲノムの修飾・高次構造、および物質代謝システムといった宿主細胞マシナリーの状態変化からとらえることによって、バキュロウイルスがいかにして宿主細胞をチューニングし、驚くべきレベルの子孫ウイルス産生を可能としているのかを解明する。平成28年度は、カイコ核多角体病ウイルス(BmNPV)とカイコ培養細胞(BmN4)を用いて、以下の実験を実施した。 1. BmNPV感染・非感染細胞を用いてメタボローム、およびトランスクリプトームデータを取得した。また、数種ヒストンマークによるChIP-seqを実施した。 2. BmNPVの増殖に影響を与える化合物のスクリーニングを行った。 3. vp39変異体を用いて、キャプシド形成と最後期遺伝子発現の関係を明らかにした。この成果は、Journal of Virology誌に発表し、掲載号の注目論文(Spotlight)に採択された。一方、Bm8変異体を用いた解析から、Bm8がウイルス増殖に対して負に働く因子であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
オームデータの収集を順調に進めることができたこと、さらに変異体の解析からキャプシド形成と最後期遺伝子発現の関係を明らかにし、論文発表できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の研究において、BmNPV感染細胞におけるトランスクリプトーム、およびメタボロームデータを取得した。また、先進ゲノム支援により、数種ヒストンマークによるChIP-seqを行っていただいている。平成29年度はまず、これらのデータを利用して、バキュロウイルスの宿主制御を代謝とクロマチンレベルで調査する。一方、バキュロウイルス増殖に関与する細胞内シグナルの探索についても継続する。
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