2016 Fiscal Year Annual Research Report
昆虫脳高次中枢における性フェロモン情報統合処理機構の解明
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16H05053
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
木矢 剛智 金沢大学, 自然システム学系, 准教授 (90532309)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ショウジョウバエ / カイコガ / 神経活動 / 初期応答遺伝子 / Hr38 / fruitless / doublesex / フェロモン |
Outline of Annual Research Achievements |
外界からの感覚情報に対して適切な行動によって反応することは、動物の生存や種の維持に重要である。昆虫の性フェロモンは、入力(感覚情報)と出力(性行動)が明確に対応している。申請者はこれまでに 神経活動のマーカー遺伝子Hr38を昆虫で初めて単離し、カイコガ・ショウジョウバエの脳で性フェロモンに反応した細胞の分布を明らかにしてきた。本研究は、申請者の発見を基盤として新規に開発した活動依存的な神経回路ラベル法を駆使し、昆虫の脳高次領域において性フェロモン情報を処理する神経回路の可視化・機能解析を行うものである。これにより、外界の様々な感覚情報を最終的な行動発現にどのように結びつけているのかといった、脳高次領域における情報処理の神経機構を解明することを目的としている。 今年度は1.カイコガの脳において性フェロモンに応答した神経回路のGFPによる詳細な可視化、2.ショウジョウバエの脳において性フェロモン情報を処理する神経回路のGFPによる詳細な機能解析、の2点について詳細な解析を行った。1.においては、神経活動依存的にGFPを発現するカイコガ系統を用い、脳・胸部神経節において性フェロモン刺激依存的に活動の起こった神経細胞を詳細に明らかにすることが出来た。2.では、脳・胸部神経節において、fruitlessやdsxといった性特異的な神経回路に限局した活動依存的な神経回路の可視化を遂行し、性行動時に活動する神経回路を詳細に明らかにした。 研究計画書に記載の通り、ショウジョウバエにおいては、新規に同定したaSP2神経回路の性行動における機能的意義の解析を行った。その結果、aSP2神経回路は求愛行動の制御には関わらないが、交尾の遂行には必要な神経回路であることを明らかにした。 来年度以降は、これらの結果を論文として出版することを第一に研究計画を遂行する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に記載の通り、カイコガ・ショウジョウバエの双方において、性フェロモンや性行動に伴って活動の起こった神経回路を詳細に可視化することに成功した。また、本手法によって同定したaSP2神経回路の機能的意義についても、明確な結論を出すことが出来た。以上の理由により本研究は順調に進捗しているものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
1.カイコガでは、まず昨年度の研究成果を論文として出版することを第一に研究を進める。次に神経活動の操作に有用と考えられるCsChrimsonを用いたアプローチにトライする。これまでにCsChrimsonのカイコガでの使用許可及び遺伝子を入手したので、トランスジェニックカイコガの作出に着手する予定である。また、神経活動の可視化においては、これまでに使用してきなNBREシステムではなく、Hr38転写開始点にGAL4をノックインした系統を作出することで、検出感度の改善を図る。これまでにショートオリゴDNAを用いることで効率的に狙ったゲノムの位置に遺伝子をノックインできる手法を確立した。これを用いた系統樹立に取り組む予定である。 2.ショウジョウバエでは、aSP2神経回路の機能解析をさらに進める。具体的にはaSP2神経回路においてどのように情報の統合が行われているのかといったことを、Caイメージングによって明らかにする。特にメスの性フェロモン刺激を触角(嗅覚神経)および前足先端部(味覚神経)に与えた際のaSP2神経回路の活動動態を解析する。本解析により、複数種類の感覚情報が脳内で統合される機構について明らかにする。 また、aSP2神経細胞が性行動指令の神経回路の活動を制御する機構についての解析を行う。aSP2神経回路は性行動を指令するP1神経の上流に位置することが、先行する解剖学的な研究より明らかとなっている。aSP2神経はグルタミン酸作動性神経であることが知られているので、P1神経選択的にグルタミン酸受容体をノックダウンや過剰発現することで、性行動の発現に阻害や活性化が認められるかといったことを明らかにする
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Research Products
(13 results)