2016 Fiscal Year Annual Research Report
The hidden source of N2O production-the denitrifying bacteria functioning in plants
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16H05059
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
多胡 香奈子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター 物質循環研究領域, 主任研究員 (20432198)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 脱窒菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに、収穫前後に土壌ではなく作物体自体(主に外葉)から一酸化二窒素(N2O)が大量に発生し、その原因は作物体中で起こる脱窒反応であることを突き止めた。そこで作物体内という特殊な環境に適応した脱窒菌群集の多様性を特定し、それらの脱窒機能を解析してN2Oの発生メカニズムを明らかにする。そのために経時的に植物成分のメタボローム解析と、脱窒菌群集の構造・菌数変動および発現する機能遺伝子のトランスクリプトーム解析、さらに環境因子(酸素濃度など)のモニタリングを同時に行い、植物体内脱窒という新規現象のメカニズムの全容に迫る。 前年度までに脱窒菌を作物体から多数分離した。これらの分離株を脱窒条件下で培養するとN2Oが発生した。そこで脱窒菌が利用する基質を特定するため、経時的に培養液を回収して、メタボローム解析に供した。GC-MSとNMRを用いて分析を行った結果、作物体に含まれる多数の化合物が脱窒の基質として利用されていることが示唆された。また、マイクロセンサーを用いて培養中の培養液中の酸素濃度を測定したところ、培養液中には細胞が増殖している間も微量の酸素が一定量含まれていることが分かった。一方で分離株のゲノムを解読し脱窒菌が保持している窒素代謝経路やその制御にかかわる遺伝子群を調べた。正確なゲノムの情報を得るためには複数の解析プログラムを行う必要があるために時間を要する。そのためこれは来年度も継続して行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は体調不良のため前半は研究計画が大幅に遅れたが、最終的には遅れを取り戻すことができたため、おおむね順調に進展していると判断した。本年度に行ったメタボローム解析で得られるデータは量が多く、取りまとめは今後も継続して行うが、29年度に行うゲノム解析の結果と合わせて脱窒代謝経路の解明を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでは分離株1株について研究を行ってきた。しかし実際には1つの作物体サンプルから複数の菌株を分離したので、分離したほかの菌株をゲノム解析に供し、菌株間で脱窒の代謝遺伝子群の違いを比較する。ゲノム解析は自分1人で行うと労力を費やすため、分析を民間会社に委託しかつゲノム解析に必要な知識と経験を有する博士研究員を1名雇用することで効率的に研究を進めていく予定である。
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