2016 Fiscal Year Annual Research Report
植物の恒温性を支配する負の活性化エネルギーに関する研究
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16H05064
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
伊藤 菊一 岩手大学, 農学部, 教授 (50232434)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 発熱植物 / 呼吸調節 / 活性化エネルギー / 修正アレニウスモデル / 恒温植物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ザゼンソウ等の恒温性を有する発熱植物を対象に、その体温調節を支配するメカニズムを明らかにすることを目的にしている。当該年度においては、フィールドにおけるザゼンソウ肉穂花序の温度データを用いた詳細な解析を行った。具体的には、肉穂花序温度を複数の温度に固定した条件でその呼吸活性を測定した一連の結果を修正アレニウスモデルにより解析し、全活性化エネルギー(Eo)の算出に成功した。さらに、ザゼンソウ肉穂花序由来のミトコンドリアを用いた呼吸解析においてもEo値の算出が可能であることが判明した。特に、ミトコンドリア呼吸解析から、ミトコンドリアにおけるイソクエン酸脱水素酵素が触媒する吸熱反応がザゼンソウの恒温性に関与していることが示された。従来の発熱制御は熱産生レベルの調節に研究の主眼が置かれていたが、本知見は、恒温植物の熱制御が発熱反応のみならず、吸熱反応も機能を有することを示しており、重要な発見である。得られた結果を基に、ザゼンソウの呼吸制御メカニズムを考察し、負の活性化エネルギーが産生されるシステムをモデル化することができた。また、ハス花托における呼吸データについても同様の解析を行い、Eo値と温度との関連性を明確にすることができた。興味深いことに、非発熱植物から得られた温度と呼吸速度に関するデータを用いた同様の解析においては負の活性化エネルギーが生じることはなく、負の活性化エネルギーが産生されるメカニズムは恒温植物において特徴的なものであることが推察された。ザゼンソウに関する解析結果については、原著論文として投稿し、審査の上、アクセプトされ、公表することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画どおりに解析が進み、ザゼンソウから得られた結果については原著論文として発表することができた。従って、これまでの研究進捗状況はおおむね順調であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降の研究においては、負の活性化エネルギーが生じるより詳細な分子メカニズムを明らかにして行きたいと考えている。特に、メタボローム解析やトランスクリプトーム解析のデータなども取り入れることが有用であると考えている。
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