2017 Fiscal Year Annual Research Report
Comprehensive analysis of the regulation of stress responses by the modulation of NADH metabolism in plants
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16H05070
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
重岡 成 近畿大学, 農学部, 教授 (80140341)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉村 和也 中部大学, 応用生物学部, 准教授 (90379561)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ストレス応答 / レドックス制御 / Nudix hydrolase |
Outline of Annual Research Achievements |
植物におけるNADH代謝調節によるストレス応答制御の包括的解明を目指して、NADH加水分解酵素であるシロイヌナズナNudix hydrolase, AtNUDX6および7による生物的および非生物的ストレス応答の制御機構を明らかにすることを試みた。 1. レポーター遺伝子を用いたAtNUDX6および7のプロモーター解析 AtNUDX6および7のプロモーターとルシフェラーゼ(LUC)遺伝子を連結したコンストラクトを導入したシロイヌナズナ株を作出した。また、発現抑制および発現誘導の結果を容易に観察するために、それぞれから低、中、高と段階的に異なるLUC発光量を示す複数の系統を確立した。 2. 発現レベルが細胞内NADHレベル変化と正および負の相関関係を示す遺伝子群の機能解析 昨年度までに同定したNADHに対して発現応答性を示す296遺伝子(NRG)の中で、9個の遺伝子の発現量が変化したシロイヌナズナ株を確立した。そこで、それらの株のパラコート処理による酸化ストレス応答性およびサリチル酸処理による病原菌感染応答性を解析した結果、野生株よりも酸化ストレス耐性能が増加および低下していた2株を見出した。また、9株においてパラコート処理下でのDNA修復関連遺伝子の発現量に変化が認められた。 3. AtNUDX6および7の相互作用因子の同定 昨年度、AtNUDX6の相互作用候補因子として低分子量GTPaseタンパク質ファミリーの一つ(RGP1)を同定した。そこで、リコンビナントタンパク質を用いてin vitroプルダウンアッセイを行った結果、RGP1は活性型/不活性型AtNUDX6のいずれとも相互作用することを確認した。さらに、黄色蛍光タンパク質を用いたBiFC解析の結果、AtNUDX6とRGP1はシロイヌナズナ葉細胞の細胞質で相互作用することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、植物におけるNADH代謝調節によるストレス応答制御の包括的解明を目指して、1)AtNUDX6および7の一過的誘導発現のストレス応答への影響、2)AtNUDX6および7の発現解析、3)細胞内NADHレベル変化により発現制御される遺伝子群の機能解析、4)AtNUDX6および7の相互作用因子の同定、の4つの項目について並行して解析を進めている。現在までに、1)についての解析が終了し、ストレス応答におけるAtNUDX6および7による細胞内NADH量の制御の直接的な影響、およびそれぞれのタンパク質自身の存在の役割を明らかにすることが出来た。また、AtNUDX6および7の発現解析のためのプロモーター:レポーター遺伝子導入株や、細胞内NADH量の変化に対して発現応答性を示す複数の遺伝子に対するT-DNA挿入株を確立しており、1)で得られた結果を基に解析の方向性を絞り、順次結果が得られてきている。さらに、相互作用因子の解析により、AtNUDX6と膜輸送との関係性も示唆され、膜輸送を2)や3)の新たな解析対象とすることを検討している。このように、それぞれから得られた成果や確立した実験手法を互いに活かすことで、それぞれの研究項目を相乗的に進展させることが出来ている。これらの進捗はほぼ当初の計画通りであり、本研究により得られた成果により学会発表や論文投稿を多数行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
概ね研究実施計画に従い、以下に示すように推進する。 1. レポーター遺伝子を用いたAtNUDX6および7のプロモーター解析 前年度までに、AtNUDX6および7のプロモーターとルシフェラーゼ(LUC)遺伝子を連結したコンストラクトを導入したシロイヌナズナ植物体を作出した。そこで、それらを用いてAtNUDX6および7の発現応答性、特に両者の機能分担を明確にするために、種々のストレス下での各組織における発現変化を長期にわたって経時的に解析する。さらに、シグナルの組織間での伝達の可能性およびを考慮して、局所的なストレス付与が他所での発現に及ぼす影響を検討する。 2. 発現レベルが細胞内NADHレベル変化と相関関係を示す遺伝子群の機能解析 前年度に作出した、NADHステータス変化により直接的に発現制御されているNRGの遺伝子破壊株の種々のストレス条件に対する耐性能(抗酸化物質量、抗酸化酵素活性、酸化タンパク質量、過酸化脂質量、光合成活性など)や応答性(遺伝子発現変化、ホルモン蓄積量)の変化を解析する。 3. AtNUDX6および7の相互作用因子の同定 前年度までに、AtNUDX6の一過的発現株から調製したcDNAライブラリーから酵母ツーハイブリッドシステムを用いてAtNUDX6の相互作用因子として低分子量GTPaseタンパク質ファミリーの一つ(RGP1)を同定した。そこで、RGP1の遺伝子破壊株およびAtNUDX6遺伝子との二重遺伝子破壊株を作出し、種々のストレス耐性能やAtNUDX6に制御されることがわかっている遺伝子の発現応答性の変化や膜輸送に及ぼす影響を解析する。
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Research Products
(18 results)