2016 Fiscal Year Annual Research Report
化学選択性の触媒制御に基づく含窒素キラル有用分子の精密構築
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16H05072
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
岩渕 好治 東北大学, 薬学研究科, 教授 (20211766)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笹野 裕介 東北大学, 薬学研究科, 助教 (10636400)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 合成化学 / 化学選択性 / 触媒制御 / 不斉合成 / キラル合成素子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ごく最近、研究代表者らによって見出された2つの新規高化学選択的分子変換反応、すなわち、(i)AZADO-Cu協奏触媒による無保護アミノアルコールのアルコール選択的酸化反応と、(ii)Eu(OTf)3触媒によるエポキシアルコールの位置選択的アミノリシス反応、の効率性の向上と基質適用性の拡張を図るとともに、その戦略的な連結を機軸として、光学活性含窒素化合物の精密構築に資する新規方法論の創出を目指すものである。3年間の計画研究の初年度に当たる本年度は、本研究の基盤となる2つの触媒反応の高効率化と高機能化を目指した検討を進めた。 (i)においては、従来、高難度基質と位置付けられていた「含硫黄アルコール」を対象として、そのアルコール選択的酸化を実現する反応条件を探索した。その結果、CuCl/bipyridyl/DMAPの至適混合比率を見出し、これより常温・常圧の大気下で、所望の変換を実現する協奏触媒システムを確立することに成功した。また、その途上でAZADO由来のオキソアンモニウム塩が惹起する新規アルケン酸化反応を発見することができた。さらに不斉アルコール酸化反応に展開すべく、キラルAZADOを種々合成して検討を行った結果、75% eeの不斉収率を与える系を見出すことができた。AZADO-Cu協奏触媒系の反応機構モデルを構築して、さらなる選択性向上を目指す基盤を整備した。 (ii)においては、位置選択性と触媒効率の向上につながるEu3+イオンに対するリガンド、添加剤を探索した結果、sarene型リガンドがエポキシ開環の位置選択性に顕著な影響を与えるという重要な知見を得ることができた。また、本反応の適用を鍵として抗精神病薬nemonaprideのキラル合成を単項的で実現して、本反応の有用性の一端を示すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Eu(OTf)3触媒によるエポキシアルコールのアミノリシス反応において、3,4-エポキシアルコール型基質では位置選択性の触媒制御能が低下するという問題が生じたが、検討の結果、良好な位置選択性を再現性良く与えるリガンドを見出すことができた。これにより研究の遅れをリカバーすることができた。また、AZADO誘導体において、従来知られていなかった環状アルケンから環状ジエンを与える反応を発見するという望外の成果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に得られた成果を踏まえ、(i)AZADO-Cu協奏触媒によるアルコール反応では、実用に適うレベルで光学活性第2級アルコールを与える触媒的空気酸化反応条件の確立を急ぐとともに、キラル合成素子の大量合成に適用して、本反応の有用性の実証を目指す。一方、Eu(OTf)3触媒によるエポキシアルコールの位置選択的アミノリシス反応では、Eu以外のランタノイドの適用性を検証するとともにリガンドの効果を精査して、信頼性の高い反応プロセスの確立を図る。併せて、含窒素キラル有用分子合成への応用展開を行う。
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Research Products
(7 results)