2016 Fiscal Year Annual Research Report
キラルアミノ酸メタボロミクスを基盤とする腎不全の低侵襲早期診断法開発
Project/Area Number |
16H05080
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
濱瀬 健司 九州大学, 薬学研究院, 教授 (10284522)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
猪阪 善隆 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (00379166)
井手 友美 九州大学, 医学研究院, 講師 (90380625)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 分析化学 / メタボロミクス / 光学分割 / アミノ酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
腎不全の早期診断、低侵襲での原因疾患特定を行うため、予備検討で顕著な含量変化を示したキラルアミノ酸に焦点を絞り、平成28年度には「三次元LC/LC/MS分析システム」の技術基盤を構築した。また、平成28年度から30年度にかけて大阪大学医学部腎臓内科、九州大学医学部循環器内科との共同研究により、腎不全、心・腎不全併発臨床検体の収集を進めている。
平成28年度は腎不全特化型のキラルアミノ酸迅速分析法としてアスパラギン、アラニン、セリン、プロリンを対象とした迅速分析システムを構築した。一次元目には低圧力で高流速分析を可能とするオリジナルデザインのモノリス型ODSカラム(内径0.53 mm、全長750 mm)を利用し、二次元目にもオリジナルデザインのKSAACSP-001Sカラム(内径1.5 mm、全長250 mm)を使用した。その結果、全ての対象アミノ酸鏡像異性体が分離係数1.17以上で20分以内にベースライン分離された。また、二次元LC分離後に四重極質量分析器を接続してLC/LC/MS分析を行った結果、実試料マトリクスにおいても殆ど妨害成分が存在しない三次元分析が達成された。質量分析においては直接定量の再現性に課題が認められたが、%Dの再現性はRSD2%程度であり実試料にも良好に適用可能であった。
また、動物モデル尿中のD-アミノ酸由来解析として、SPFマウス及び無菌マウスの尿分析を行った。その結果、コントロールマウスの尿中ではいずれのアミノ酸も高濃度でD体が確認され、アラニン では%D (D/(D+L)×100)=14%、アスパラギンでは77%、プロリンでは26%、セリンでは56%であった。一方無菌マウス尿中ではそれぞれ0.6% 、24%、17%、26%であり、D-アラニンは腸内細菌に由来し、D-アスパラギン、プロリン、セリンは他の生成経路が存在することが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年には腎不全特化型の迅速かつ高選択的分析装置として、LC/LC/MS三次元分析装置の分離系構築および再現的な三次元システムの構築に成功している。また、動物モデルでの尿中D-アミノ酸の由来解析を進めると共に大阪大学・九州大学医学部等との協力のもとで臨床検体の収集を進めており、研究はおおむね順調に進展していると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成28年度には、腎不全関連キラルアミノ酸として、セリン、アラニン、プロリン、アスパラギンを対象としたLC/LC/MS三次元システムを構築した。しかし絶対定量には課題も認められたため、更に優れた絶対定量三次元システムとして、臨床検体での正確な高感度分析を可能とするLC/LC/LC三次元分析システムを開発する。分析法としてはLC での分離モードの異なる3種のカラムを組み合わせた三次元LC/LC/LCシステムとし、検出には蛍光検出器を用いることで極めて高い選択性と定量性の両立を図る。一次元目には水系移動相での逆相分離を行うため、微粒子充填型の逆相カラムを作製・利用し、二次元目には陰イオン交換型高分離能カラムを作製・利用する。三次元目ではオリジナルデザインの高性能セミミクロ光学分割カラムを用い、実試料中での選択的迅速分析を実現する。
また、平成28年度に引き続き、腎不全モデルマウスにおけるキラルアミノ酸プロファイリングを行う。平成29年度は様々な腎不全モデルマウスを用いると共に、重症度の異なるモデルマウスを用いてキラルアミノ酸プロファイリングを行うことで新規診断指標の探索を行うと共に、薬剤等の投与による治療効果とキラルアミノ酸プロファイルの変化との相関を解析する。
なお、平成28年度に引き続き、ヒト臨床検体の収集を進めると共に、従来の腎バイオマーカーおよび腎生検により、原因疾患が特定された検体を中心としてキラルアミノ酸のプロファイリングを行う。実際の臨床検体では健常人には認められない夾雑成分が存在する可能性も高い。そこで分析装置のプロトタイプが完成次第、様々な臨床検体分析を行って実試料における分析法の選択性を確認しつつ分析の感度向上と迅速化を図る。
|
Research Products
(13 results)