2017 Fiscal Year Annual Research Report
腸内細菌バランスの正常化に基づく炎症性腸疾患の新規治療法の開発
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16H05086
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
川島 博人 千葉大学, 大学院薬学研究院, 教授 (50260336)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平川 城太朗 千葉大学, 大学院薬学研究院, 助教 (30609160)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | オートファジー / 大腸炎 / 腸内細菌 / 抗菌ペプチド |
Outline of Annual Research Achievements |
炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease; IBD)の発症とオートファジー関連遺伝子の一塩基多型の相関が報告されているが、その発症機構には不明な点が多い。そこで本研究では、大腸上皮細胞特異的オートファジー欠損マウス(cKOマウス)を作製して、大腸炎発症におけるオートファジー欠損の影響を解明するとともに、腸内細菌バランスの正常化に基づくIBD新規治療法開発の分子基盤を確立することを目的とする。 (1)DSS大腸炎惹起による腸内細菌の大腸組織内への侵入の検出と野生型マウスとcKOマウスの腸内細菌叢の比較 DSS大腸炎惹起後に大腸凍結切片を作製し、細菌の16S rRNAをコードするゲノム領域にハイブリダイズするEUB338プローブを用いた蛍光in situ ハイブリダイゼーションを行い、大腸炎の発症に伴う大腸組織内への腸内細菌の侵入を検出した。次に野生型マウスおよびcKOマウスの糞便からDNAを抽出し、16S rRNAをコードする細菌ゲノム領域に対する菌種特異的プライマーを用いたPCRにより、腸内細菌叢の変化を解析した。cKOマウスで増加の認められた菌種を含む複数の菌種に作用する抗生物質をWTおよびcKOマウスに経口投与した後に、DSSを投与して大腸炎を惹起したところ、DSS大腸炎の症状の緩和が認められた。 (2) 腸内細菌特異的モノクローナル抗体の樹立 大腸炎の発症に関与する悪玉腸内細菌は大腸組織内に侵入し、炎症を誘導する。マウスの腸間膜リンパ節からB細胞を調製し、ミエローマとの細胞融合によりハイブリドーマの作製を試みたところ、特定の腸内細菌に反応性を示すモノクローナル抗体を分泌する複数のクローンを得ることができた。これらのモノクローナル抗体は大腸炎を引き起こす腸内細菌の検出に有用と考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
腸内細菌に反応性を示すモノクローナル抗体を得ることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 抗菌ペプチドの悪玉腸内細菌に対する抗菌活性のin vitro解析 大腸上皮細胞特異的オートファジー欠損マウス(cKOマウス)では大腸上皮細胞で産生される数種の抗菌ペプチドの産生が顕著に低下する。そこで、それらの抗菌ペプチドの組換え体を大腸菌発現系を用いて作製し、腸内細菌に対する抗菌活性のin vitroにおける検討を行う。 (2) 抗菌ペプチドのDSS誘発性大腸炎抑制効果の検討 次に、組み換え型抗菌ペプチドをDSS誘発性大腸炎発症マウスの大腸内に投与し、大腸炎に対する抗炎症効果を検討する。同時に菌種特異的プライマーを用いたPCRにより糞便中の腸内細菌叢の変化を解析し、悪玉腸内細菌に対する抗菌ペプチドの作用を検討する。
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