2017 Fiscal Year Annual Research Report
カイコ感染症モデルを基盤とした微生物資源からの新しい抗生物質の開拓
Project/Area Number |
16H05095
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Research Institution | Tohoku Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
内田 龍児 東北医科薬科大学, 薬学部, 教授 (60280632)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 抗生物質 / カイコ感染モデル / 天然資源 / 抗真菌薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、①in vivo様感染モデルのカイコ評価系を利用し、天然資源より治療効果を示す新規抗生物質を探索、②新規化合物の作用機序の解析、③これまでに発見した化合物の治療効果をカイコ評価系で確認し、抗生物質シードとして提供することを目的としている。 ①については、陸棲および海洋微生物の培養液1035サンプルをスクリーニンングし、抗酸菌選択的な活性を示すサンプルや更新活性サンプル、また抗真菌活性を示さずにアムホテリシンB(AMPB)の抗真菌活性を増強するサンプルが幾つか得られ、現在カイコ評価系での治療効果を調べている。次に、新規抗菌活性物質として、植物内生糸状菌Cladosporiun属の培養液から、分子内にクロル基を含むクラドスポロール類縁化合物を6成分発見した。さらに培養の検討により、抗MRSA活性を示す新規ブロム置換体の取得にも成功した。また、西表島産海綿Haliclona属の抽出液から、新規ハリクロナジアミン類縁化合物を2成分発見し、抗抗酸菌活性を示すことを明らかにした。これらについては、カイコ評価系での治療効果を検討している。さらに新規AMPB活性増強物質として、昨年度報告したショードアミド類生産真菌Pseudophialophora属の培養液から、新たにフィアロタイドA~Hと命名した新規配糖化合物を8成分発見した。 ②については、申請者らの研究グループが発見した化合物の中で、最も強いAMPB増強活性を示すフィアロタイド類について検討を開始し、酵母および接合菌に対してはAMPB活性増強活性を示すが、糸状菌には活性を示さないことを明らかにした。 ③については、AMPB活性増強物質FKI-4981B物質の全合成が連携研究者によって達成され、その過程で得られた8種類の立体異性合成化合物の増強活性を調べた結果、ほぼ天然物と同等の活性を示すことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①については、新規化合物の発見にも繋がっており、また、スクリーニングにおいても次の精製候補サンプルが得られていることから、概ね順調に進んでいる。しかし、カイコ評価系の利用の面で所属機関の移動の影響もあり、環境を整えるために時間を要してしまったことは反省点である。 ②については、当初の実施予定とは異なる化合物を用いることになってしまったが、幸いにも新規AMPB活性増強物質フィアロタイド類について着手することができている。これまでに、フィアロタイド類の有効菌種を明らかにし、作用機序の解析のための有用な情報を得ている。 ③については、FKI-4981B物質の全合成が終了し、立体違いによる活性への影響を明らかにすることができたことから、誘導体合成への展開が可能となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
①については、一時滞っていたカイコ評価系の実施環境も再度整備し、優れた治療効果を示す新規抗生物質の取得を目指しスクリーニングを継続する。また、すでに選択した候補菌サンプルの活性成分の単離精製を進め、その新規性を明らかにすると共にカイコ評価系での治療効果を明らかにすることで、一つでも多くの新規候補化合物の発見に重点を置く。 ②については、新規AMPB活性増強物質フィアロタイド類の作用機序の解析を継続するとともに、AMPB以外の抗真菌剤に対する増強活性評価も検討する。また、FKI-4981物質についても同様に作用機序の解析に着手する。 ③については、連携研究者と情報交換をしながらFKI-4981B物質の誘導体合成を進め、構造活性相関研究を行う。その過程で有効な化合物が得られた場合には、マウス感染モデルでの治療効果の検討を視野に入れる。
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