2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16H05103
|
Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
中川 秀彦 名古屋市立大学, 大学院薬学研究科, 教授 (80281674)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | ケミカルバイオロジー / 光化学 / ケージド化合物 / 超音波 / 放射線 |
Outline of Annual Research Achievements |
一酸化窒素(NO)などガス状メディエーターは重要な生理活性分子として注目されているが、化学的に不安定であり取扱いが難しい。我々はこれら短寿命生理活性分子のケージド化合物の開発を進め、これまでに複数のケージド化合物開発とex vivo系への応用に成功した。本研究では、この成果に基づき、生体深部での利用を想定した化合物を総合的に開発することとした。 これまでに開発したケージドNO化合物群であるRol-DNB、NOBL-1、NO-Rosaで得られた化学特性や光応答性などの情報を基に、近赤外光に応答してNOを放出する新たなケージドNO化合物の開発を進めた。NOBL-1の色素部分の構造は置換可能であることをNO-Rosaの開発により示した。そこで、色素部を近赤外光を吸収する色素の1つであるSi-Rhodamineに置換した化合物を設計・合成した。その結果、630 nm付近の光照射によりNO放出を起こすNORD-1の開発に成功した。さらに、NO放出部の置換位置を検討することにより、高効率でNO放出する近赤外応答性化合物の取得に成功した。 また、NOBL-1を内包したIr錯体含有ポリマードット作成を踏まえて、よりナノ粒子に包含されやすいNO放出剤として脂溶性を増加させたNOBL-2を開発し、これを用いてポリマードットを作成した。NOBL-2及びポリマーの比率を検討することにより高効率でNOBL-2を内包させることに成功した。これを用いて光照射及びX線照射によるNO放出効率の検証を行ったところ、光照射及びX線照射に応じたNO放出が見られた。しかし放出効率には改善の余地があり、封入比率などを精査する必要があることが判明した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、既開発のケージドNOであるNOBL-1及びNO-Rosaを基に、より長波長の光で制御可能なケージドNO化合物の開発を目指して研究を行った。その結果、NOBL-1のBODIPY構造部を、より近赤外吸収色素であるSi-Rhodamine骨格に置換することで近赤外光(630 nm付近)の光を照射することでNO放出を起こす新たなケージドNO化合物NORD-1の開発に成功したため、順調な進展であるといえる。 また、Ir錯体含有ポリマーナノ粒子形成の検討においてより内包効率を高めるためNOBL-2を開発し内包率向上に成功しX線照射に応じたNO放出が見られたことも、順調な進展がみられたといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
すでに開発したケージド化合物である赤色光制御型ケージドNOであるNORDを基に、化合物構造を展開して、さらに効率の良い近赤外光にNOを放出する化合物を開発する。光吸収部であるSi-RhodamineとNO放出部の位置関係を精査する多様な誘導体を合成し、効率の良い赤色~近赤外制御ケージドNOを開発する。 また、内包率を向上させたケージドNO誘導体をナノ粒子に封入して、Ir錯体との比率の最適化を行ったのち、光応答性及びX線応答性を検討する さらに、既存のNOBL-1などのN-NO型ケージドNOの超音波応答性を検証する。N-NO型ケージドNOは、これまで検討したニトロベンゼン型に比べ、代謝不安定性が懸念されるものの、化学反応性に優れているため、多様なN-NO型ケージドNO化合物を合成し、もっとも超音波応答性に優れた化合物を同定する。
|
Research Products
(9 results)