2016 Fiscal Year Annual Research Report
基質配列の非ペプチド化に基づくプロテアーゼ阻害剤設計戦略の開拓
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16H05104
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Research Institution | Kyoto Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
赤路 健一 京都薬科大学, 薬学部, 教授 (60142296)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 薬学 / 医薬品化学 / 創薬 / プロテアーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、疾患関連プロテアーゼの認識ペプチド配列を非ペプチド化・低分子化した阻害剤設計を行う基本戦略を確立する。このため、2つの異なる方法論について検討する。戦略①は「環状化とプロテアーゼ相互作用部位の導入」に基づく方法で、戦略②は「Scaffoldヘテロ環への相互作用部位の導入」手法に基づく方法である。対象疾患とその標的酵素は、アルツハイマー病に関わるBACE1、新興感染症であるSARSおよびMERSに関わる3CL プロテアーゼである。これらの疾患に対する治療薬は現在でも未開発であり、治療薬シーズ化合物の創製は喫緊の課題となっている。 BACE1阻害剤開発研究では、戦略①に基づき高い酵素阻害能と適度な疎水性を持った環状型阻害剤を創製する。あわせて、戦略②に基づく環状アミジン型低分子阻害剤の創製を行う。SARS(MERS)プロテアーゼ阻害剤開発研究では、戦略①に基づきデカヒドロイソキノリ骨格およびオクタヒドロイソクロメン骨格を持った低分子型環状阻害剤を創製する。これらの阻害剤はいずれも従来にない独創的な基本骨格を有するにもかかわらず、各プロテアーゼの特異的基質との相互作用部位を合理的に導入できるという大きな特色を有している。 本年度研究では、これらの新規基本骨格構築法を確立した。特に、基本骨格に導入する置換基の立体化学を自由に制御できる合成反応を組み入れることに留意し、核となる相互作用基の立体選択的導入が可能な合成経路を開発した。これにより、阻害活性発現に及ぼす置換基立体化学の影響を定量的に比較・評価することが可能になった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前述した研究目的を達成するため以下の計画に従って本年度研究を実施し、おおむね順調に研究を進展させることができた。 戦略①に基づく環状BACE1阻害剤開発では、メチレン鎖長の異なるオレフィン構造を持った各種環状誘導体を合成することとした。BACE1活性中心と相互作用する遷移状態mimicとして、これまでの研究で最も高い阻害能を示した無置換型HEA構造を導入した。環状オレフィン構造の構築にはオレフィンメタセシス反応を用いることとし、必要となるオレフィン側鎖アミノ酸誘導体をグルタミン酸側鎖カルボキシル基の酸化と続くWittig反応によって調製した。これまでの研究により、オレフィン側鎖含有環化前駆体の合成経路を確立し、環化反応条件の最適化を進めた。 戦略②に基づくヘテロ環型BACE1阻害剤の開発では、アミジノピロリジン型およびアミジノピペリジン型阻害剤の合成法を構築した。この際、ピロリジン型阻害剤合成には市販のヒドロキシプロリンを足場として利用した。ピペリジン型阻害剤合成では、申請者がピペリジンアルカロイド(+)-spectalineの全合成研究に利用した2, 6-二置換ピペリジン骨格の立体選択的構築法を応用した。 戦略②に基づくSARS(MERS)プロテアーゼ阻害剤の開発では、疎水性相互作用中心構造としてデカヒドロイソキノリン構造を持つ縮環型化合物の構造最適化を重点的に進めた。すでにデカヒドロイソキノリン骨格がプロテアーゼの疎水性ポケットにうまく入り込んでいることを複合体構造解析によって確認しているので、ノンプライム置換基の導入が可能な合成経路の開発を重点的に行った。異なるヘテロ元素を有する2種類の縮環構造にアミノ置換基を導入する複数の経路についての比較・検討を行い、有望な合成経路の絞り込みを行った。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果に基づき、以下の方策に従って今後の研究を推進する。 戦略①に基づく環状BACE1阻害剤開発では、まず疎水性ポケットとの相互作用に最も適した環サイズを特定する。このため、メチレン鎖長の異なるオレフィン構造を持った各種環状化合物を合成する。環状オレフィン構造の構築にはオレフィンメタセシス反応を用いる。前年度までの研究により、環化反応前駆体合成に必要となるオレフィン側鎖を持つアミノ酸誘導体合成法を確立し、環化前駆体合成を行った。次年度以降、これら各種環化前駆体のオレフィンメタセシス反応条件の最適化を行い、環サイズの異なる環状化合物の合成法を確立する。あわせて、ハロゲン化フェニルアラニン誘導体とオレフィン側鎖アミノ酸誘導体を利用して、環状部に芳香環を有する環化体の合成を進める。具体的には、Heck反応を利用した環化により芳香環との結合位置が異なる各種中員環誘導体を合成する。 戦略②に基づくヘテロ環型BACE1阻害剤の開発では、前年度研究で確立したアミジノピロリジン型およびアミジノピペリジン型阻害剤に大きさの異なる疎水性置換基を導入した環状化合物群を合成する。得られた候補化合物のBACE1阻害活性評価により、環構造に導入された置換基の疎水性や嵩高さが阻害活性に及ぼす影響を評価する。 戦略②に基づくSARS/MERS 3CLプロテアーゼ阻害剤の開発では、疎水性相互作用に基づくデカヒドロイソキノリン構造を持つ縮環型化合物の構造最適化を進める。前年度の研究で得られたアミノ官能基の導入経路を利用して、ノンプライムサイト認識置換基の構造最適化を進める。まず、SARS/MERS 3CLプロテアーゼの基質配列を反映したアミノ酸配列に基づいた構造変換を行う。
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[Presentation] Synthesis and Evaluation of Substrate-based BACE1 Inhibitors2016
Author(s)
Kazuya Kobayashi, Yasunao Hattori, Ayaka Deguchi, Yukie Nohara, Tomomi Akiyama, Kenta Teruya, Akira Sanjoh, Athsushi Nakagawa, Eiki Yamashita, Kenichi Akaji
Organizer
20th Korean Peptide Protein Society Symposium
Place of Presentation
Yangyang, Korea
Year and Date
2016-06-24 – 2016-06-25
Int'l Joint Research
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