2016 Fiscal Year Annual Research Report
ドラッグリポジショニングによる網膜関門輸送を利用した網膜疾患治療薬開発の基盤構築
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16H05110
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
細谷 健一 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 教授 (70301033)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
赤沼 伸乙 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 助教 (30467089)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 血液網膜関門 / カチオン性薬物輸送 / 薬物輸送担体 / 網膜毛細血管内皮細胞 / 内側血液網膜関門 / ドラッグリポジショニング |
Outline of Annual Research Achievements |
循環血液と網膜とを隔てる血液網膜関門 (BRB) におけるカチオン性薬物輸送機構をベースとした創薬基盤構築に向け、申請者が有するin vitroツールを駆使したドラッグリポジショニングスクリーニングなどを通じ、既存医薬品の適応拡大・新たな網膜疾患治療薬創出を試みる。平成28年度は、まず効率的なドラッグリポジショニングをするための実験条件を決定付けるため、inner BRBモデル細胞株 (TR-iBRB細胞) における促進的輸送機構の基質であることが見出された[3H]ベラパミルの取り込みに対する、各種中枢神経系疾患治療薬の相互作用を解析した。実験条件として、取り込み時間とある濃度条件下における阻害スペクトルとして、抗うつ薬やパーキンソン病及びアルツハイマー病治療薬が阻害として観察され、一部の偏頭痛治療薬が阻害効果無しとして明確に選別され、本条件が適切であると判断された。 また、リポジショニング有望化合物と判断される化合物の蛍光標識化とそれを用いた輸送解析に向け、モデル化合物としてシアノコバラミンを、蛍光団としての導入を検討しているCy5と有機的に結合させ、輸送解析を行った。Cy5-シアノコバラミンは、内在化時においてco-factorとなるtranscobalamin共存下、TR-iBRB細胞に取り込まれ、各種阻害解析から受容体介在エンドサイトーシスの様式を示した。また、取り込み実験後の細胞を共焦点レーザー顕微鏡にて観察したところ、細胞内にてdot状の様式で観察された。本取り込みパターンは、カチオン性薬物ベラパミルのEverFluor FLラベルされたものを取り込ませた場合と異なった。本結果から、導入に用いる蛍光団やTR-iBRB細胞の自家蛍光ではなく、ホストとなる化合物に観察結果は依存することが示され、最適な蛍光団導入および観察条件の設定が完了したことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画では大規模ドラッグリポジショニングスクリーニングを初年度に実施する予定であるが、約20-30化合物のみの実施にて条件を確定するのみで留まっている。一方で、平成29年度以降にまたがって実施予定であった、化合物の蛍光標識と可視化について、標識化合物の合成法確立・検討、本化合物を用いたin vitro系輸送機構の検証と細胞内挙動の可視化はすでに実施している。さらに、元々は放射性同位元素を用い、化合物を標識後、in vivo解析を行う予定であったが、今回の蛍光標識化合物 (Cy5標識シアノコバラミン及びEverFluor FL標識ベラパミル) をラットに投与した結果、inner BRBの実体である網膜毛細血管内皮細胞を含めた網膜内における化合物分布を定性的に、そして定量的に測定可能であることが見出された。また、inner BRBモデル細胞TR-iBRB細胞へのEverFluor FL-verapamil取り込み様式はLysoTracker Redとは一致するものではなく、形質膜取り込み過程の重要性が示唆された。以上のように、年次計画の前後はあるものの、全体としては進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の計画として、優先度が高い項目として、大規模ドラッグリポジショニングスクリーニングを平成28年度に決定した実験条件を基に行う。100-1000化合物スケールでのベラパミル輸送に対する相互作用スクリーニングを実施し、非共存下と比して2倍以上の変動が示されるか否かを第一クライテリアとして選定を開始する。最も有望性が高いとスクリーニングから判断された化合物を、蛍光団として前述のCy5で標識し、in vivo及びin vitro輸送解析を実施する。前述のように、申請者らはすでにCy5について化合物への導入反応についての条件について検討を完了しているため、スムーズに進行するものと期待される。 また、EverFluor-ベラパミルの取り込み解析にて形質膜取り込み過程の重要性が示唆されたことから、カチオン性薬物輸送機構とそれに対し影響を及ぼす因子を申請計画にあるdrug affinity responsive target stability (DARTS) をベースとしたプロテオミクスにて明らかにする。ベラパミル、もしくはその輸送に影響を与える薬物とinner BRBなどの関門組織タンパク質サンプルを至適条件下にて反応させ、ポリアクリルアミド電気泳動にて変化が示されたシグナルについてプロテオミクスを行うことで、その薬物と相互作用する関門由来分子を明らかにする。本計画にて、申請者が目的として挙げている次なる新規網膜疾患治療薬開発の一助となることが期待される。
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Research Products
(14 results)