2016 Fiscal Year Annual Research Report
Study for functional mechanism of membrane protein complexes from the perspective of self-organization using single molecule direct observations.
Project/Area Number |
16H05122
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
相馬 義郎 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 客員教授 (60268183)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 膜蛋白複合体 / 抗原ー抗体反応 / 分子間相互作用 / 1分子直接観察 / 高速原子間力顕微鏡 / 脂質2重膜 / ラフト / アクアポリン |
Outline of Annual Research Achievements |
医学・生理学的に重要な生命プロセスの多くは、必要に応じて生体膜上で機能性膜蛋白が集合して形成された膜蛋白/脂質ラフト高次機能複合体によって遂行されている。この動的な膜蛋白複合体の動作機構の解明は、医学生理学の大きな進歩に繋がると期待されるが、直接的な測定データが乏しく、その分子レベルでの動的なメカニズムについてはほとんど解っていない。本研究では、機能中の膜蛋白複合体の分子動態の直接的動画観察を可能にする高速原子間力顕微鏡(高速AFM)システムを開発し、膜蛋白/脂質間の相互作用に基づいた動的秩序形成および自己組織化の視点から膜蛋白複合体形成・解離と機能発現の動的連関メカニズムを解明することを目的とする。 そのためにまず、各膜蛋白の機能を保持したままでの発現・精製系の確立、膜蛋白複合体が生体膜中と同様な動態を示すための細胞膜環境観察プラットフォームの開発および、膜蛋白分子間相互作用についての1分子動画データの解析技術の確立に挑戦した。 研究試料としては、嚢胞線維症Cystic Fibrosis 原因遺伝子産物であるCystic Fibrosis Transmembrane conductance Regulator (CFTR)および水チャネルAquaporin (AQP)の一種であるAQP4を軸として、これらと機能的に深い関係があると考えられる上皮型 Na+ チャネル(ENaC)や ATP 感受性 K+チャネル(KATP)等を選定した。 AQP4およびCFTRを人工脂質2重膜に組み込んだ状態での高速AFM観察に成功した。さらにAQP4およびCFTRの抗体を投与して、それらの抗体結合・解離動態の直接観察にも成功している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1) AQP4の2つのアイソフォームM1-AQP4とM23-AQP4およびCFTRを人工脂質2重膜に組み込んだ状態で高速AFM観察することに成功している。特にM23-AQP4については、電子顕微鏡で細胞膜上に観察される規則正しいアレイ構造を高速AFMで直接観察することができた。さらにAQP4およびCFTRの抗体を投与することにより、それらの抗体結合の動態観察にも成功した。 2) 膜蛋白分子間相互作用についての1分子動画データの解析技術を確立するために、ELISAを用いたAQP4に対する抗AQP4抗体の巨視的レベルでの結合・解離動態と高速AFMを用いた1分子レベルでの結合・解離動態を比較検討した。その結果、定性的には一致したが、定量的な整合は困難であった。このことから、1分子レベルと巨視レベルとの間のメゾスコピックな領域において、分子間相互作用に関する未知の重要な分子動態プロセスが起こっている可能性が示唆された。 3) 高速AFM用の細胞膜環境観察プラットフォームを開発するために、AFM観察ステージのマイカ表面と脂質2重膜の間に潅流液の層を作る目的で、直鎖構造PEG 脂質誘導体を添加したリポソームを作製して、AFMステージ上へ展開したが、PEGリン脂質誘導体の分布に偏りがあり、改良の余地があった。 4) 将来的に本研究の重要な研究対象となる病因性CFTR変異体の研究も並行して行なった。
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Strategy for Future Research Activity |
1) 機能を保持した状態での各膜蛋白の精製試料を、現行より高効率で得るために、発現・精製システムを改良する。そのためにナノディスクの適用を検討している。 2) 細胞膜環境観察プラットフォームを改良するために、様々な他種類のPEG 脂質誘導体の添加やリン脂質の種類の変更等を検討する。さらにナノディスクを用いて精製された膜蛋白の組み込み方法の開発も視野に入れる。 3) 1分子-巨視レベル間のメゾスコピックな領域において、分子間相互作用に関する未知の重要な分子動態プロセスが起こっている可能性が示唆されたため、次のステップとしてメゾスコピック領域での分子動態研究にも挑戦する。
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