2016 Fiscal Year Annual Research Report
オキシトシン神経活動操作技術を用いたストレス神経回路機構の解析
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16H05128
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中村 和弘 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (00548521)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ストレス / オキシトシン / 光遺伝学 / 神経回路 / 心因性発熱 / 情動 / 血圧 / 交感神経 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主な目的は、中枢オキシトシン神経系がストレス神経回路に作用する仕組みを個体レベルで解明することである。オキシトシンが抗不安・ストレス緩和作用を持つことは知られているが、その脳内での作用メカニズムは不明である。研究代表者はこれまでに、オキシトシンニューロン選択的に任意の遺伝子を発現させる技術を開発した。今年度は、この技術を用いて緑色蛍光蛋白質(GFP)を発現させ、視床下部のオキシトシンニューロンの軸索投射先を解析した。その結果、ストレス反応に関わることが知られるいくつかの脳領域に投射することが分かった。そこで、ラット脳内のこれらの投射先領域にカニューレを挿入し、オキシトシンあるいはオキシトシン受容体拮抗薬を微量注入した後に社会的敗北ストレスを与え、生じるストレス性自律生理反応(体温上昇反応、昇圧・頻脈反応)を計測した。このストレス性自律生理反応は、褐色脂肪組織温度、深部体温、血圧、脈拍などの生理学的パラメーターを同時計測するためのテレメトリー発信器を予め埋め込んでおくことによって計測した。オキシトシンニューロンの軸索分布が広範にわたるため、現在も解析を続けている。 また、次年度以降に実施するオキシトシン神経の光刺激実験の予備検討実験として、オキシトシンニューロン選択的に任意の遺伝子を発現させる技術を用いて、光感受性カチオンチャネルを視床下部のオキシトシンニューロン選択的に発現させる実験を行い、成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の主要な研究計画は、視床下部のオキシトシンニューロンが軸索を投射する先の脳領域にオキシトシンあるいはオキシトシン受容体拮抗薬を微量注入した後に社会的敗北ストレスを与え、生じるストレス性自律生理反応を解析することであった。この実験から興味深い結果が得られつつあるものの、オキシトシンニューロンの軸索分布が広範にわたるため、すべての投射先領域へ注入を終えるのに時間がかかる見込みであり、現在も引き続き解析を続けている。また、次年度以降に実施するオキシトシン神経の光刺激実験の予備検討実験を前倒しして実施し、オキシトシンニューロン選択的に任意の遺伝子を発現させる技術を用いて、光感受性カチオンチャネルを視床下部のオキシトシンニューロン選択的に発現させる実験を行い、成功した。以上の研究進捗状況に鑑み、本研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
視床下部のオキシトシンニューロンが軸索を投射する先の脳領域にオキシトシンあるいはオキシトシン受容体拮抗薬を微量注入した後に社会的敗北ストレスを与え、生じるストレス性自律生理反応を解析する実験は、引き続き実施しており、データをまとめる予定である。また、今年度の予備検討実験の成功を踏まえて、次年度以降は視床下部のオキシトシンニューロンの神経活動の操作実験を本格的に始める予定である。
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Research Products
(19 results)