2016 Fiscal Year Annual Research Report
幹細胞ニッチのmTORシグナルによる造血機能制御:白血病治療展開への基礎研究
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16H05131
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
檜井 栄一 金沢大学, 薬学系, 准教授 (70360865)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 白血病 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨形成を担う骨芽細胞は骨恒常性維持に必須である。また骨芽細胞は、ニッチ細胞として造血幹細胞や血液細胞の機能調節にも関与することが知られているが、その分子機構についは明確になっていない。そこで本研究では、造血幹細胞や血液細胞機能における「ニッチ細胞のmTORC1活性」の重要性をin vivoで明らかとすることを目的として、骨芽細胞のMechanistic target of rapamycin complex1(mTORC1)シグナルが活性化あるいは不活性化された遺伝子改変マウスを作製し、フローサイトメトリーを用いた表面抗原解析による造血幹細胞および各血液細胞の機能解析を行った。 Col1a1-Creマウスを用いて、骨芽細胞特異的mTORC1活性化マウス(Col1a1-Cre;Tsc1fl/flマウス)および不活性化マウス(Col1a1-Cre;Raptorfl/flマウス)を作製し、造血機能解析を行った。その結果、骨芽細胞特異的mTORC1不活性化マウスでは、解析したいずれの細胞種にも変動は認められなかった。一方、骨芽細胞特異的mTORC1活性化マウスでは、脾臓の肥大化、B細胞の減少、ミエロイド細胞の増加、および造血幹細胞の増加が認められた。 以上の結果は、ニッチ細胞(骨芽細胞)のmTORシグナルが、「造血幹細胞の自己複製能、同幹細胞からの細胞分化」、あるいは「分化した血液細胞の機能」の調節に関与していることを示しており、ニッチ細胞側のmTORシグナル異常が、造血幹細胞および血液細胞の機能異常を引き起こす可能性を示す結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで造血幹細胞および血液細胞におけるmTORC1シグナルの重要性は明らかになっていた。しかしながら、本研究により、造血幹細胞および血液細胞の機能調節に関わるニッチ細胞のmTORC1シグナルの重要性を明らかにできた点は「進展」と認められる。一方で、骨芽細胞以外のニッチ細胞のmTORC1シグナルの重要性を解明できておらず、今後の詳細な解析が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
骨芽細胞以外のニッチ細胞におけるmTORC1シグナルの重要性を、細胞特異的遺伝子欠損マウスを作製し、解析を進めていく。さらに、生理学的条件下での解析だけではなく、病態生理学的条件下における役割を検討するため、ニッチ細胞特異的mTORC1活性化・不活性化マウスを用いて、急性骨髄性白血病モデルを作製し、白血病病態の評価を行う。 さらに、「ニッチ細胞側のmTORC1活性」の重要性をin vitroで明らかとするため、造血幹細胞や血液細胞とニッチ細胞との共培養実験を行い、FACSによる造血幹細胞の機能解析を行う。
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