2017 Fiscal Year Annual Research Report
ドパミン神経系を標的とした精神疾患治療薬の創薬基盤研究
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16H05135
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
西 昭徳 久留米大学, 医学部, 教授 (50228144)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河原 幸江 久留米大学, 医学部, 准教授 (10279135)
大西 克典 久留米大学, 医学部, 助教 (10626865)
黒岩 真帆美 久留米大学, 医学部, 助教 (20585690)
外角 直樹 久留米大学, 医学部, 講師 (60368884)
首藤 隆秀 久留米大学, 医学部, 講師 (70412541)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 統合失調症 / うつ病 / マウスモデル / ドパミン / 海馬歯状回 / 報酬系 / p11 |
Outline of Annual Research Achievements |
統合失調症やうつ病などの精神疾患の病態にはドパミン神経系が関与するが、ドパミン神経系機能異常の原因と病態については不明な点が多い。統合失調症やうつ病の病態には、海馬を含むドパミン神経回路の機能異常が指摘されている。本研究では、統合失調症やうつ病の動物モデルにおいて、海馬―腹側被蓋野ドパミン神経回路を解析することにより、ドパミン神経系を標的とした精神疾患治療薬の創薬基盤を形成することを目的とする。 統合失調症モデルであるMK-801投与マウスにおいて、in vivoマイクロダイアリシス解析により ①中脳辺縁系(腹側被蓋野―側坐核)と②中脳皮質系(腹側被蓋野―前頭前皮質)のドパミン神経機能を個別に検討した。MK-801投与マウスでは、中脳辺縁系ドパミン神経活性は亢進し、中脳皮質系ドパミン神経活性は低下しており、この機能異常には海馬のドパミン神経制御が関与していることを明らかした。その詳細なメカニズムを解明するための解析を実施している。 うつ病モデルであるp11欠損マウスにおいて、ドパミン神経系の報酬応答性の解析を実施した。コカイン報酬応答に加え、摂食、異性等の報酬やストレスに対するドパミン応答性は中脳辺縁系で低下していたが、中脳皮質系では変化していなかった。中脳辺縁系で選択的にドパミン応答が低下した機序として、コリン作動性介在神経におけるp11欠損がアセチルコリン神経伝達を抑制したことが原因であることを明らかにした。この解析により、側坐核のコリン作動性介在神経に発現するp11がドパミン神経の報酬応答性を制御する重要な分子であることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
統合失調症モデルであるMK-801投与マウスを用いた検討では、ウイルスベクターを用いて中脳辺縁系と中脳皮質系ドパミン神経系を選択的に制御する研究を実施している。また、行動学的解析の結果の基づき、ドパミン神経系の機能的役割について解析を推進している。 遺伝的統合失調症モデルであるPrP-dnDISC1マウスを用いて、海馬を含むドパミン神経回路の機能解析を実施している。ストレス無しと軽度のストレス有り(個別飼育3週間)の2群に分けて遺伝要因と環境要因の影響を評価している。さらに、ストレス強度を上げた条件での検討も実施している。 うつ病モデルマウスであるp11欠損マウスの解析では、側坐核のコリン作動性介在神経に発現するp11がドパミン神経の報酬応答性を制御する重要な分子であることを明らかにし、コリン作動性介在神経の活性、アセチルコリン放出を介するドパミン神経系の機能調節について解析を追加した。
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Strategy for Future Research Activity |
統合失調症やうつ病などの精神疾患の病態における海馬―腹側被蓋野ドパミン神経回路の機能的役割を引き続き検討する。機能解析の指標として、in vivoマイクロダイアリシス解析により①中脳辺縁系(腹側被蓋野―側坐核)と②中脳皮質系(腹側被蓋野―前頭前皮質)のドパミン神経機能を個別に解析する。また、各脳部位でドパミン神経回路の機能調節に関わるドパミン関連シグナルを解析する。統合失調症モデルとしてMK-801投与マウスとPrP-dnDISC1マウス、うつ病モデルとしてp11欠損マウスを用いて、精神疾患の病態における2つのドパミン神経系の役割を明らかにして創薬標的を探索する。 統合失調症モデルであるMK-801投与マウスにおいて、ドパミン神経回路の解析を行う。MK-801投与マウスでは、dual probeマイクロダイアリシス法を用いた解析において、中脳辺縁系ドパミン神経活性は亢進し、中脳皮質系ドパミン神経活性は低下していることより、統合失調症の陽性症状と陰性症状のドパミン病態を反映していると考えられる。ドパミン病態のメカニズム解析のために、光遺伝学的手法を用いてドパミン神経回路選択的に活性調節を行い、行動解析を実施する。海馬歯状回を介する調節機構についても解析を進める。また、遺伝的統合失調症モデルであるPrP-dnDISC1マウスを用いて、中脳辺縁系と中脳皮質系でのドパミン応答を解析する。 うつ病モデルであるp11欠損マウス(ChAT-Cre p11 cKOマウス)の解析では、コリン作動性神経がドパミン神経の報酬応答において重要であることが明らかになった。コリン作動性神経の活性調節とアセチルコリン放出に関する解析を推進する。また、TH-Cre p11 cKOマウスはうつ病のモデルとは異なる行動異常を示すため、腹側被蓋野や青斑核においてp11が果たす役割を検討する。
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