2016 Fiscal Year Annual Research Report
Mechanism of differentiation of fetal Leydig cells by active and suppressive types of nuclear receptors
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16H05142
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
諸橋 憲一郎 九州大学, 医学研究院, 主幹教授 (30183114)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 核内受容体 / 代謝 / 精巣 / ライディッヒ細胞 / 細胞分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
精巣ライディッヒ細胞は男性ホルモンの産生を通じ、個体のオス化ならびにオス個体の生殖能の誘導と維持に必須の役割を果たす。核内受容体型転写因子Ad4BP(NR5A1)は精巣ライディッヒ細胞の分化に不可欠な因子である。この因子はステロイドホルモン産生に必要なすべての酵素をコードする遺伝子の転写制御を行う因子として単離、同定されたのであったが、我々は近年、本因子が解糖系遺伝子を一斉に制御することを明らかにした。この結果をもとに我々は、Ad4BPによる細胞内の代謝の活性化が、前駆細胞からのライディッヒ細胞の分化に必要であると推測するに至った。そこで、胎仔型ライディッヒ細胞とその前駆細胞を単離する系を確立し、これらの細胞における遺伝子発現を調べたところ、エネルギー代謝を抑制する可能性を有する転写因子COUP-TFIIが前駆細胞に発現し、ライディッヒ細胞には発現しないことを明らかにした。 以上の知見をもとに、Ad4BPとCOUP-TFIIが種々の代謝系遺伝子の制御を通じ、前駆細胞から胎仔型ライディッヒ細胞への分化を制御することを明らかにすることを通じ、細胞の分化には細胞内代謝の活性化が必要であるとの新規かつ重要な視点を提供するものである。また、Ad4BPの機能解析の結果からは、Ad4BPがステロイドホルモン合成系や解糖系に限らず、NADPH産生やコレステロール合成などのより広い代謝系を制御するとの予備的結果を得ており、これらの代謝系を含む種々の代謝系との関連を、特に胎仔精巣のライディッヒ細胞の分化過程において明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
① 胎仔型ライディッヒ細胞と前駆細胞より得られたトランスクリプトームを詳細に解析した。その結果、解糖系やステロイドホルモン合成系に加え、TCAサイクル、酸化的リン酸化、脂肪酸合成系などエネルギー産生に関わる代謝系を構築する遺伝子の多くがAd4BPによって制御されているらしいことが明らかになった。この結果を定量的RT-PCRによって確認した。 ② 前駆細胞が胎仔型ライディッヒ細胞へ分化する時にAd4BPの発現は顕著に上昇する。したがって、上記の遺伝子発現の活性化はAd4BPによるものと推測された。そこで、前駆細胞でのAd4BPの強制発現を試みた。2種のウイルスベクターでトライしたところ、前駆細胞ではアデノウイルスによる誘導系が働くことが確認され、Ad4BPの強制発現はステロイド合成、解糖系、TCAサイクル、酸化的リン酸化の遺伝子発現を誘導した。また、前駆細胞と胎仔型ライディッヒ細胞の酸素消費を計測したところ、胎仔型ライディッヒ細胞においてより多くの酸素を消費していることが明らかになった。 ③ 胎仔型ライディッヒ細胞特異的に遺伝子発現を誘導するエンハンサーを取得しており、既にこのエンハンサーによって胎仔型ライディッヒ細胞をEGFPラベルしたトランスジェニックマウスを作成してきた。そこで、このエンハンサーを用い、胎仔型ライディッヒ細胞にCOUP-TFIIを強制発現するマウスを作成する。DNAコンストラクトを作成し、現在トランスジェニックマウスの作成を行っているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
① 上記③の実験を継続し、胎仔型ライディッヒ細胞特異的にCOUP-TFIIを強制発現するマウスを作成する。このマウスは胎仔型ライディッヒ細胞が正常に分化することができないと期待される。したがって、継代することができないため、複数個体の胎仔精巣につい胎仔型ライディッヒ細胞の有無について、HSD-3b抗体、Ad4BP抗体による免疫染色により検討する。 ② Ad4BPは胎仔型ライディッヒ細胞に、COUPTFIIは前駆細胞に発現し、これらの細胞において代謝系遺伝子の発現制御をおこなっているとの仮説のもと、両転写因子の標的遺伝子をChIP-sequence法にて明らかにする。胎仔精巣より得られる細胞数には限りがあるため、少数細胞によるChIP解析の予備検討をおこなっている。良好な結果が得られる条件のもとに、ChIP-sequenceを行う。 ③ 我々が現在取得している胎仔型ライディッヒ細胞の前駆細胞は胎仔精巣間質に存在する間質細胞である。これらの細胞はほぼ全てがCOUP-TFII陽性、間質細胞のマーカーであるARX陽性であり、in vitroの精巣再構築系にて胎仔型ライディッヒ細胞へと分化することができる。しかしながら、これらの細胞が全て胎仔型ライディッヒ細胞の前駆細胞であるのか、成獣型ライディッヒ細胞の前駆細胞は存在しないのか、またライディッヒ細胞以外の細胞へ分化する細胞は存在しないのかなど不明の点が多い。そこで、数百個の前駆細胞を1細胞シークエンス法にてトランスクリプトームを取得する。
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[Journal Article] Lysosomal activity maintains Ad4BP/SF-1 protein stability for proper steroidogenic cell growth2017
Author(s)
Jhih-Siang Syu, Takashi Baba, Jyun-Yan Huang, Hidesato Ogawa, Chi-Han Hsieh, Jin-Xian Hu, Ting-Yu Chen, Tzu-Chien Lin, Ken-Ichirou Morohashi, Bu-Miin Huang, Fu-I Lu, and Chia-Yih Wang
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Journal Title
Scientific Report
Volume: 7
Pages: 240
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Differential lactate and cholesterol synthetic activities in XY and XX Sertoli cells2017
Author(s)
Yurina Shishido, Takashi Baba, Tetsuya Sato, Yuichi Shima, Kanako Miyabayashi, Miki Inoue, Haruhiko Akiyama, Hiroshi Kimura, Yoshiakira Kanai, Yasuhiro Ishihara, Shogo Haraguchi, Akira Miyazaki, Damjana Rozman, Takeshi Yamazaki, Man-Ho Choi, Yasuyuki Ohkawa, Mikita Suyama, Ken-ichirou Morohashi
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Journal Title
Scientific Rep
Volume: 7
Pages: 41012
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Presentation] 核内受容体Ad4BP/SF-1によるステロイドホルモン産生の統括的制御2017
Author(s)
馬場崇, 大竹博之, 井上実紀, 佐藤哲也, 石原康宏, 宮林香奈子, 嶋雄一, 山崎岳, 須山幹太, Choi Man-Ho, 大川恭行, 諸橋憲一郎
Organizer
第21回日本生殖内分泌学会学術集会
Place of Presentation
大阪
Year and Date
2017-01-14 – 2017-01-14
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[Presentation] 栄養・代謝と性2016
Author(s)
馬場崇、井上実紀、諸橋憲一郎
Organizer
第89回日本内分泌学会学術総会
Place of Presentation
大阪
Year and Date
2016-04-21 – 2016-04-21
Invited