2016 Fiscal Year Annual Research Report
病理組織学、網羅的代謝解析、レオロジーを融合したアテローム血栓症の発症機序の解明
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16H05163
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
浅田 祐士郎 宮崎大学, 医学部, 教授 (70202588)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 勇一郎 宮崎大学, 医学部, 准教授 (90347055)
山下 篤 宮崎大学, 医学部, 助教 (90372797)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アテローム血栓症 |
Outline of Annual Research Achievements |
アテローム血栓症の発症機序の解明を目的として、プラーク破綻と血栓の形成・増大機序について、病理形態学・代謝系変動・レオロジーの観点から融合的な検討を進めている。 血栓の形成・増大にはプラークの組織性状・成分が大きく寄与するため、本年度は家兎動物モデルを用いて高脂血症によるプラークと、これにアロキサン投与により糖尿病を加えてモデルを作成し、プラークの組織変化ならびに代謝系変動を検討した。その結果、糖尿病モデルは非糖尿病モデルに比べて有意なプラークサイズの拡大と脂質コアの増大がみられた。網羅的な代謝解析では、動脈硬化モデルでは、正常動脈に比して数多くの代謝産物の変動がみられた。また糖尿病モデルでは、この代謝変動は大きく変化し、12種の代謝産物の有意な差がみられ、その半数は解糖系代謝産物の低下であった。18F-FDG(フルオロデオキシグルコース)を指標としたプラークへの糖の取込は著しく減少しており、これには高血糖によるプラーク内での低酸素転写因子(HIF-1)の発現低下が関連していることを明らかにした。 次に閉塞性血栓の性状を明らかにする目的で、虚血性冠疾患患者から血管内治療時に採取された吸引血栓標本を用いて、閉塞性血栓(心筋梗塞患者)と非閉塞性血栓(不安定狭心症患者)の組織性状の差異を比較検討した。両者はともに白色および混合血栓であるが、閉塞性血栓ではよりフィブリン析出が強く、好中球浸潤やその崩壊像を伴うものも多数認められている。一部に血栓の器質化像を伴う症例群がみられ、これらでは治療後数か月での予後が不良である傾向が見られた。また血栓の形成後の時間経過を評価する指標としてのCD163の有用性を評価する目的で、静脈の血栓吸引標本を用いて、その経過時間とCD163発現が正相関することを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は血栓の形成・増大に関与するプラーク性状について検討した。高脂血症および糖尿病の動物モデルの作成はおおむね順調に進み、プラークの病理組織像の解析は研究当初に予想していた結果である。一方、網羅的代謝解析では、多くの代謝系に変動がみられたが、特に糖代謝系に変化が強く、特異的に増減する代謝産物が多数確認できた。さらに糖尿病モデルでは、高脂血症だけのモデルとは大きく異なる代謝変動が認められ、特に変動が大きい12種の代謝産物を同定しえた。これらの結果より、プラークの性状解析については、予定よりも進んだ成果が得られたと考えている。 一方、吸引血栓標本を用いて検討では、閉塞性血栓(心筋梗塞患者)と非閉塞性血栓(不安定狭心症患者)の組織性状の病理組織学的な差異を比較検討し、閉塞性血栓でよりフィブリン析出が強く、好中球浸潤が多い結果が得られた。また血栓内に器質化像を伴う症例群では治療後の予後が不良である傾向が見られた。これらの結果は、動物モデルでの検討とも矛盾しないもので、臨床面でも有意義な内容と受け止めている。また血栓の形成後の時間経過を評価する指標としてのCD163の有用性を評価する目的で、静脈の血栓吸引標本を用いて、その経過時間とCD163発現が正相関することを確認した。冠動脈からの吸引血栓標本数はまだ少なく、現時点では網羅的代謝解析の結果は得られておらず、それをベースにしたフローチャンバー系の検討は今後行う予定である。 これらの進捗状況を踏まえて、おおむね順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
プラークの組織性状・成分による血栓の形成・増大への関与については、動物モデルの解析より見出された代謝産物について、全血凝集能およびフローチャンバー系を用いてその血栓形成能への影響を検討する。 また動脈硬化性大動脈疾患で外科切除された標本の取集を進めており、これらの病理検体を用いた病理組織学的検討と網羅的代謝解析を行う予定である。現在収集中の検体について、高脂血症、糖尿病、および他の危険因子(高血圧、喫煙、肥満度)が重複している症例が多く、危険因子ごとに特定の代謝系や代謝産物の同定は難しいことが予想される。この場合には、動脈硬化の進行病変と軽度な病変を比較検討し、プラーク増進に関わる因子を同定し、血栓形成への関与を検討する。 血栓の評価については、吸引血栓標本の組織成分の解析を進めるともに、動物モデルを用いて形成後の血栓の経時的変化と、血液中と血栓内での代謝変動の差異を比較検討し、血栓形成・増大時に作用する代謝系ならびに代謝産物の解析を進める。 また病理組織標本から3次元血管内構造構築と血流シミュレーションを作製し、どのようなプラーク形状や血管内構造が、血栓の形成・増大を促進する血流変化を引き起こすのかを解析する。 これらの検討を進めることによって、アテローム血栓症の発症病態の解明を目指すとともに、同定した代謝産物種よりアテローム血栓症発症の予測バイオマーカーの可能性探る。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] Altered glucose metabolism and hypoxic response in alloxan-induced diabetic atherosclerosis in rabbits.2017
Author(s)
Matsuura Y, Yamashita A, Zhao Y, Iwakiri T, Yamasaki K, Sugita C, Koshimoto C, Kitamura K, Kawai K, Tamaki N, Zhao S, Kuge Y, Asada Y.
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Journal Title
PLoS One
Volume: 12
Pages: e0175976
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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