2017 Fiscal Year Annual Research Report
A群レンサ球菌特異的糖鎖を認識するオートファジー誘導機構の解析
Project/Area Number |
16H05188
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中川 一路 京都大学, 医学研究科, 教授 (70294113)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野澤 孝志 京都大学, 医学研究科, 助教 (10598858)
相川 知宏 京都大学, 医学研究科, 助教 (70725499)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | A群レンサ球菌 / オートファジー / ゼノファジー / Rabタンパク質 / A群特異的糖鎖 |
Outline of Annual Research Achievements |
オートファジーは生理的な細胞内小器官の分解や、栄養飢餓時のアミノ酸供給源として機能しているが、宿主細胞内に侵入した菌は、 細胞質に逃れる菌は選択性オートファジーによって認識される.この過程では、細菌がp62/NDP52などのアダプター分子を介してユビ キチンと結合することで、オートファジーによって分解されているとされている.ところが、この菌体の排除に関わるオートファジー では、菌の種類によって誘導されるオートファジーの様相が著しく異なることから、細胞内に、各菌を特異的に認識する機構が存在す ることが予測される。本研究では、菌体表層のユビキチン化に関わる部位の同定と宿主の新規ユビキチン化システムの同定を試みるこ とで、細菌感染特異的なオートファジーの誘導・制御に関わる制御系を明らかとする。A群レンサ球菌の種特異的糖鎖合成系の酵素に ついては、これまでのゲノム解析の結果から、糖鎖の合成そのものに関わる遺伝子群は、gacA, B, C, F, G, H, I, Kの8種類である ことが分かっている。これらの8種の合成系の欠失変異体、および菌体表層の莢膜多糖の合成系であるhasA, B, Cの欠失変異体を作成 し、各変異体を培養細胞に感染させ、経時的なユビキチンによる認識・オートファジーによる認識を共焦点レーザー顕微鏡により検討 を行った。さらに、オートファジー誘導に関わるアダプター分子に着目し、A群レンサ球菌の認識に関わるNDP52分子に着目し、その制御分子の同定を試みた。その結果、A群レンサ球菌感染細胞において、新たに細胞内トラフィッキングに関わるRab35が関わっていることが明らかとした。この結果から,これまで考えられているアダプターモデルにおいても、菌種特異的な制御機構が存在することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、A群レンサ球菌感染細胞におけるゼノファジーの誘導機構を明らかとするためにアダプター分子の挙動について詳細に検討を加えたところ、Rab35のGTP結合型はA群レンサ球菌を含むエンドソーム上に蓄積し、NDP52を補充することを明らかとした。さらに、Rab35は、NDP52とユビキチンとの相互作用を促進することも明らかとした。この過程は、Rab35を不活性化するGAPタンパク質の1つであるTBC1D10Aにより阻害されるが、Rab35はTBK1キナーゼによって、NDP52を菌体表層へのリクルートを制御していた。すなわちRab35、TBC1D10AおよびTBK1は、オートファゴソームに対するNDP52の供給を制御することで、オートファゴソームの成熟を促進することを明らかとした。以上のことから、本研究では単に感染によるGcAV形成の分子メカニズムを明らかにするだけでなく、飢餓誘導で誘導される誘導型オートファジーの理解、通常のオートファジーの誘導メカニズムと感染によるオートファジーの違いを明らかとすることができただけでなく、オートファジーの制御による細菌感染が可能であることが示唆された。この内容については、EMBO Journalに掲載された。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度に向けて、A群レンサ球菌の特異的な糖鎖を認識する菌体内分子の探索を行っている。平成28年度の報告で報告しているが、A群特異的糖鎖を産生するGAC生合成を担うgac遺伝子群 (gacDからgacL) の遺伝子それぞれの欠損株をHeLa細胞に感染させ、GASを包み込むオートファゴソームを共焦点顕微鏡で観察した。その結果、GAS感染細胞数あたりのオートファゴソーム陽性細胞の数は、野生株感染細胞と比較すると、ラムノース転移酵素と予測されるgacGでは約30%、GACの側鎖であるN-アセチルグルコサミンの付加反応に関わるgacI, J, Kの欠損株においては約40%減少した。また、gacI欠損株においてはユビキチンでコートされたGASを持つ感染細胞の数も野生株感染細胞に比べ約30%減少した。つまり、GAS表層のGACが選択的オートファジーにより認識されていることが示唆された。一方、糖鎖を認識するユビキチンリガーゼ複合体において糖鎖認識を担うFBXO2がGAS周囲にリクルートし、gacI欠損株へのリクルートは親株に比べて約40%減少した。さらに、FBXO2をノックアウトしたHeLa細胞では、GASへのユビキチンの集積が減少し、オートファゴソーム形成も抑制された。以上の結果から、GASの表層糖鎖がオートファジーによる認識ターゲットの一つであること、さらにFBXO2を含むE3リガーゼ複合体がGASのユビキチン化を介した選択的オートファジーを制御していることが示唆された。
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Research Products
(18 results)