2016 Fiscal Year Annual Research Report
Mechanisms for development of diseases by H. pylori virulence factor complex
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16H05191
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
山岡 吉生 大分大学, 医学部, 教授 (00544248)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ピロリ菌 / 外膜タンパク / タンパク質複合体 / 病原因子 / 炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、1) rOipA発現・精製の改良と、2)High resolution clear negative electro-phoresis (HrCNE)でのピロリ菌膜タンパク質複合体の解析を行った。 1)これまでにrOipAの精製法は確立していたが、rOipAが大腸菌発現系において低発現であり、界面活性剤に対して難可溶性であることから、精製収量が少ないという問題があった。そこでrOipA発現系と可溶化条件の検討を行った。複数の誘導発現系と大腸菌株で検討を行った結果、E.coli C41(DE3)株でテトラサイクリンpromotor発現系を用いることで、rOipAが外膜画分に高発現することが判った。また多種類の界面活性剤と塩を用いた検討で、n-ドデシル-β-D-マルトシドとMgCl2の組み合わせがrOipA可溶化に効果的であることが判った。本年度に、高発現系の確立と可溶化効率が改善したことにより、mgオーダーでのrOipA精製が可能となり、今後の生化学的実験に用いることができるだけでなく、結晶化を行うことができ、多角的に研究を進めることが可能となった。 2) ピロリ菌膜画分から膜タンパク質複合体を可溶化し、HrCNEで膜タンパク質複合体を分離し、質量分析器で膜タンパク質複合体の構成分子の解析を行った。HrCNEゲルには複数のタンパク質複合体のバンドがみられ、質量分析の結果から呼吸鎖酵素複合体のバンドが判り、呼吸鎖酵素の活性染色により質量分析の結果との整合性が確認できた。OipAは分子量102-222 kDaの領域に泳動されていた。OipAの単量体が34 kDaであることから、OipAは多量体を形成するか、または他分子と複合体を形成することが考えられた。CagAもOipAと同じ領域に泳動されていたことから、病原因子であるCagAとOipAが相互作用していることも示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
OipAの相互作用分子の同定(ヒト側)に関する当初の研究計画は、免疫沈降とYeast two hybrid systemによりOipAの相互作用分子を同定することであったが、発現・精製の課題克服に時間を費やした。しかしピロリ菌の膜タンパク質複合体の研究は、質量分析によるピロリ菌のタンパク質同定法を確立し、複数の病原因子を同定することに成功しているように、当初の計画通りに進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は1)OipAの相互作用分子(ヒト側)の同定・シグナル解析、2)ピロリ菌膜タンパク質複合体の機能解析についての研究を進める。 1)精製したrOipAと胃上皮細胞の膜画分の破砕液を混和し、ポリクローナル抗OipA抗体で共免疫沈降を行うことにより、rOipAの相互作用分子の探索を行う。さらに、OipAとの相互作用を異なる手法 (Yeast two-hybrid system) を用いて検証を行う。ベイトにOipAを、プレイに上述の実験から得られた相互作用分子の候補 (ヒト分子・ピロリ菌分子) を用いることで、免疫沈降の結果から偽陽性分子を減らす。表面プラズモン共鳴法を利用したBiacoreにより、解離定数を測定することでrOipAと相互作用分子の結合を物理化学的に評価する。以上の研究計画でOipAとの相互作用分子が同定されることで、OipAの上流シグナルを解析することが可能となる。また、siRNAで相互作用分子のノックダウン細胞株を作製し、これまでに関連が報告されているFAK自己リン酸化や、アクチン細胞骨格の再構成への影響を評価する。 2)ピロリ菌の膜タンパク質複合体に関しては、二次元展開ゲルからの構成成分の同定を行うことで、網羅的に膜タンパク質複合体の構成成分の探索を試みる。CagA、OipA、VacAなどの病原因子に焦点を絞り、病原因子を含む膜タンパク質複合体の精製を試みる。複数のクロマトグラフィーを用いることによりタンパク質複合体を精製した後に、これを胃上皮細胞株に添加することで変動する遺伝子をマイクロアレイにより解析する。これにより、病原因子複合体としての機能の推測が可能となる。このようにOipA単体だけではなく、OipAを含むタンパク質複合体の機能解析を行うことにより、OipA複合体としての新たな機能を見出すことができると考えている。
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