2017 Fiscal Year Annual Research Report
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16H05201
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高井 俊行 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (20187917)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 全身性エリテマトーデス / 自己免疫疾患 / 病原性プラズマセル / 免疫抑制受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
病原性自己抗体を産生する形質細胞(PC)の分子的特徴を同定するためには病原性PCとそうでないPCとを分離する方法が必要である。研究代表者らはすでにSLE患者の病原性PC上に,免疫フィードバック抑制受容体LILRB4(B4)が高発現することを見出していたが,29年度はB4の生理的リガンドの同定を試みた。またSLE自然発症モデルマウスの抗DNA抗体産生細胞がB4により特徴付けられるか否かを検証し,B4発現PCがその生理的リガンドとの相互作用によりどのように調節されるのかを明確化することを試みた。さらにin vitro免疫実験系によりB細胞をはじめマクロファージ,樹状細胞,マスト細胞,ミエロイド系サプレッサー細胞などにおいてB4が発現するか否か,細胞活性化に伴って発現の変動はあるのか,についてフローサイトメトリー(FCM)を中心とした解析を進めた。これらはPCの分化機構,活性維持機構にとって重要な知見を提供するものと思われた。その結果,生理的リガンドは候補分子の絞り込みに成功し,さらなる解析としてB4を介する免疫制御への関与の有無に解析をシフトさせた。SLE自然発症モデルマウスにおいてはB4抗体,リガンド候補分子,リガンド候補分子の抗体などを投与することを試みており,興味深い結果が得られつつある。PC以外の細胞の解析においては意外に多様な細胞でB4が発現し,病的活性化状態で発現の変動が見られることがわかりつつあり,PCをはじめとする研究に関して今後の展開の基盤が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に沿って研究を進めた結果,B4生理的リガンドは候補分子の絞り込みに成功し,さらなる解析としてB4を介する免疫制御への関与の有無に解析をシフトさせることができた。SLE自然発症モデルマウスにおいてはB4抗体,リガンド候補分子,リガンド候補分子の抗体などを投与することを試みており,興味深い結果が得られつつある段階である。PC以外の細胞の解析においては予想外に多様な細胞でB4が発現し,病的活性化状態で発現の変動が見られることが分かりつつあり,また川崎病患児においてPCにB4が高発現することを見出した(論文投稿中)。このようにPCをはじめとする細胞の制御研究,さらにはSLEの新規治療法の開発に関して今後の展開の基盤が得られたことが理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はB4に基づくフローサイトメトリー分画により病原性PCの分子的な特徴をマウスPCにおいてシングルセルRNA-seqなどの手法を利用して抽出することで同定する。またB4の生理的リガンドの同定が期待できるレベルになったため,その病原性PC分化過程における動態の調査に解析をシフトしてPCの分化調節が可能かどうかを検討する。またSLEモデルマウスを利用し,リガンドや抗体投与によるB4陽性の病原性PCの動態変化の調査を行う。これらが順調に進むと,当初に立てた仮説である『病原性自己抗体産生PCの出現がB細胞の過剰活性化に付随する確率論的なものではなく,本来のフィードバック抑制機構が何らかの病因によって外れ,これに伴って補完的作用でB4が高発現し,生理的リガンドの作用に不感受性になったために起こる現象である』の妥当性を評価することが可能となる。
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