2017 Fiscal Year Annual Research Report
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16H05202
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
新田 剛 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 准教授 (30373343)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 免疫学 / 細胞・組織 / 胸腺 / T細胞 / 自己免疫 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、胸腺上皮細胞の分化機構とT細胞分化制御の分子基盤を理解することを目的とする。通常のαβT細胞に加え、未だ理解が進んでいないγδT細胞のレパトア形成と機能分化の制御原理の解明に挑戦する。 ① cTECに高発現する転写因子Klf15のconditional KO(Klf15-CKO)マウスの表現型解析を行い、CD4SPおよびCD8SP胸腺細胞の数が減少することを明らかにした。cTECの数や機能への影響について、引き続き精査を続けている。また、mTECの分化を制御するサイトカインRANKLの作用機序を明らかにするため、膜型または可溶型RANKL欠損マウス、RANKL-CKOマウスを作製した。mTECの分化にはCD4SP胸腺細胞に発現する膜型RANKLが必須であることが明らかになった。さらに、mTECとともに胸腺髄質を形成する線維芽細胞の解析を行い、髄質線維芽細胞サブセットの新たな分子マーカーを同定した。現在、髄質線維芽細胞の性状と機能の解析を進めている。 ② ヒトに高頻度にみられるβ5t遺伝子多様性(genetic variation)がT細胞レパトアに与える影響について、変異マウスと次世代シークエンシング技術を用いて解析した。β5t G49S変異によってCD8 T細胞のTCRレパトアの一部が失われることを定量的に示すとともに、代表的なTCRについてレトロジェニックマウスを作製して解析結果を確認した。胸腺上皮細胞に発現するプロテアーゼのgenetic variationがTCRレパトア選択を変化させることを示した、画期的な成果といえる。 ③ IL17産生型γδT細胞の分化機構を明らかにするため、γδT17前駆細胞に発現するTCRシグナル因子のKOマウスを作製し表現型解析を行った。γδT17の分化にはTCR直下のチロシンキナーゼSykと、その下流で活性化するPI3K経路が必須であることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
cTEC特異的な転写因子Klf15と、mTEC分化を制御するRANKL-RANKシグナルについて、新たな成果を得た。また、mTECとともに胸腺髄質を形成する線維芽細胞について、細胞サブセットを特定する分子マーカーを発見し遺伝子発現プロファイルを得るなど、想定外の成果を得た。 αβT細胞レパトア形成については、前年度に確立したTCRレパトア解析法とTCRレトロジェニックマウスを用いて、β5t G49S変異によってCD8 T細胞のTCRレパトアの一部が失われることを定量的に示すことができた。MHC結合ペプチドの産生に関わるプロテアーゼのgenetic variationがTCRレパトア選択を変化させることを示した、画期的な成果といえる。 γδT細胞の分化制御機構については、前年度に引き続きSKLDマウスの解析を進め、論文投稿中である。また、γδT17細胞の分化を制御するTCRシグナルの解明にも取り組んだ。γδT細胞ではTCR直下のキナーゼとしてSykが機能し、PI3K経路を活性化することでγδT17の分化に必要な転写制御プログラムを起動させることを明らかにした。TCR-Syk-PI3K経路はγδT17依存的炎症を特異的に制御するシグナルであり、本成果はγδT17が介在する自己免疫疾患や癌といった慢性炎症性疾患の病態理解と治療の向上に貢献すると期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
髄質線維芽細胞の性状と機能の解析を進める。mRNA-seq解析によって髄質線維芽細胞に特有の遺伝子発現プロファイルを明らかにし、固有の機能があるかどうかを検証する。予備実験結果として、髄質線維芽細胞の機能発現にはLTbRシグナルが重要であり、線維芽細胞特異的LTβR欠損マウスではmTECの数が減少し、末梢組織での自己免疫病態がみられることがわかっている。今後、髄質線維芽細胞とmTECの相互作用の分子実体の解明を中心に研究を進める。 胸腺髄質におけるmTECや線維芽細胞がT細胞レパトア選択に与える影響を定量的に調べるため、これまでに確立したTCRレトロジェニックマウス作製法と次世代シークエンス法を用いて、mTEC欠損マウス(RANK-CKO/CD40-KO)、Aire欠損マウス、Fezf2欠損マウス、LTβR欠損マウスにおけるαβTCRレパトアの変化を解析する。 γδT細胞の分化制御機構については、Syk-CKOマウスを作製し、成体におけるSykとγδT17細胞の役割を明らかにする。また、Syk結合タンパク質の同定と、KOマウス作製による機能検証によって、γδT17細胞においてSykの活性化を担うSrcキナーゼ、補助受容体、およびリガンドを同定し、胸腺におけるγδT17分化制御の全容を明らかにする。
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Research Products
(13 results)
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[Journal Article] Human thymoproteasome variations influence CD8 T cell selection.2017
Author(s)
Nitta T, Kochi Y, Muro R, Tomofuji, Y, Okamura T, Murata S, Suzuki H, Sumida T, Yamamoto K, Takayanagi H.
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Journal Title
Science Immunology
Volume: 2
Pages: eaan5165
DOI
Peer Reviewed
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