2016 Fiscal Year Annual Research Report
Study of the mechanism of cancer-risk increase due to diabetes and suggestion of the molecular-targeting cancer prevention for the cancer
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16H05260
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
友杉 真野 (堀中真野) 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (80512037)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 癌予防 / 糖尿病 / TRAIL |
Outline of Annual Research Achievements |
世界の糖尿病人口は2014 年の報告で約4 億人弱とされ、日本を含め、年々増加の傾向が続いている。一方、本邦では複数の疫学研究の結果から「日本人糖尿病患者の癌罹患リスク増大」が報告され、重大な社会的問題として取り上げられているが、その分子機序については現在も十分に明らかとされていない。申請者らは癌予防研究を続ける中で、『糖尿病による癌リスク増大』と『糖尿病患者における血清中TRAIL 量の低下』という既報に着目した。TRAIL は、発癌予防に寄与しうるサイトカインとして抗腫瘍免疫を担っていることから、「糖尿病によって体内TRAIL の減少が生じ、発癌の一因となっている」という可能性が考えられる。本研究課題では、『「糖尿病」、「癌の発症・増悪」、「TRAIL 経路」の関連性の解明』と『発癌ハイリスク集団である糖尿病患者のための分子標的癌予防法の開発』を目指す。
前年度までに糖尿病モデルラット(ZDFラット)の膵臓、および糖尿病モデルマウス(db/db マウス)の大腸におけるTRAIL mRNA発現量は、ヒトでの報告と同様、正常個体に比して低いという結果が得られていた。平成28年度の研究では、さらにマウスの個体数を増やし、また、解析対象の臓器を、膵臓、肝臓、肺、腎臓、脾臓、大腸、小腸、腸間膜リンパ節とした。各種臓器中のTRAIL mRNA発現量を測定し、対照マウスの値と比較した。その結果、肺、腎臓、脾臓、腸間膜リンパ節におけるTRAIL発現量は、対照マウスに比して糖尿病モデルマウスでは有意差をもって低値を示した。膵臓、肝臓については、傾向は認められたものの、有意な差ではなかった。同様に各種臓器のレプチン発現量も測定した結果、TRAILの発現量と負の相関性を示す傾向が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
近年、糖尿病モデルマウスにおける大腸化学発癌実験の系が確立されていることから、糖尿病と発癌との関連を証明する癌種として、本研究課題では『大腸癌』に着目することとし、下記の実験①②を計画していた。 ①糖尿病モデルマウスにおける体内TRAIL 量減少の検証 ②糖尿病モデルマウスを用いた大腸化学発癌におけるTRAIL 経路の関与の検討
現在までに、申請者らの実験より、糖尿病モデルラットの膵臓、および糖尿病モデルマウスの大腸におけるTRAIL量は、ヒトでの報告と同様、正常個体に比して低いという結果が得られている。平成28 年度は、糖尿病モデルマウスおよびコントロールマウスの個体数を増やし、糖尿病と、体内TRAIL 量の減少との間の相関性について確認・検証を行った。測定サンプルとして、当初予定していた大腸、膵臓、脾臓に加え、肝臓、肺、腎臓、小腸、腸間膜リンパ節の8種類とした。TRAIL発現量とレプチン発現量を測定し、内在性コントロールとしてβ-アクチンの発現量も測定した。対照群と糖尿病モデルマウス群とで、各種臓器ごとにTRAIL/β-アクチン発現量、レプチン/β-アクチン発現量の結果を比較した。その結果、肺、腎臓、脾臓、腸間膜リンパ節におけるTRAIL発現量は、対照マウスに比して糖尿病モデルマウスでは有意差をもって低値を示し、膵臓、肝臓については、傾向は認められたものの、有意な差ではなかった。一方、大腸におけるTRAILの発現量については、群間での差は認められなかった。 そのため、当初予定していた「②糖尿病モデルマウスを用いた大腸化学発癌におけるTRAIL 経路の関与の検討」については、糖尿病発症に伴う大腸でのTRAIL発現量の低下が認められなかったため施行せず、研究計画を変更することとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
糖尿病と、肺癌罹患率との相関についての報告はないものの、術後の予後に対し、一定の負の相関を示唆している文献も認められる。また、今回用いた糖尿病モデルマウスは、飽食シグナルの伝達に寄与しているレプチンの受容体の遺伝子配列に変異が導入されており、その機能が十分に働いていないモデルマウスである。そのため、平成28年度の結果からは、糖尿病だけでなく、飽食の結果として生じる肥満や体内レプチン発現量の減少に、TRAIL発現量の減少が起因しているという可能性も考えられる。 今後は、上記の複数の仮説について、培養細胞も用いながら、体内TRAIL 量の減少との間の相関性について確認・検証実験を行う。
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