2017 Fiscal Year Annual Research Report
Study of the mechanism of cancer-risk increase due to diabetes and suggestion of the molecular-targeting cancer prevention for the cancer
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16H05260
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Research Institution | Kyoto Prefectural University of Medicine |
Principal Investigator |
友杉 真野 (堀中真野) 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (80512037)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 癌予防 / 糖尿病 / TRAIL |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までの実験において、糖尿病モデルマウスの膵臓、肝臓、肺、腎臓、脾臓、大腸、小腸、腸間膜リンパ節のTRAIL mRNA発現量を測定し、対照マウスの値と比較した。その結果、肺、腎臓、脾臓、腸間膜リンパ節におけるTRAIL発現量は、対照マウスに比して糖尿病モデルマウスでは有意差をもって低値を示すことを見出した。膵臓、肝臓については、傾向は認められたものの、有意な差ではなかった。糖尿病と、肺癌罹患率との相関についての報告はないものの、術後の予後に対し、一定の負の相関を示唆している文献も認められる。また、本研究で用いた糖尿病モデルマウスは、飽食シグナルの伝達に寄与しているレプチンの受容体の遺伝子配列に変異が導入されており、その機能が十分に働いていない。そのため、飽食の結果として生じる肥満や体内レプチン発現量の増加によって、TRAIL発現量の減少に至っている可能性を考えた。そこで、平成29年度は、複数の肺癌細胞株や正常肺上皮細胞株に対し、リコンビナントレプチンを培地に添加することによって、TRAIL発現の変化が認められるか否か検証を行った。TRAILの発現量については、mRNAレベル、タンパク質レベル、細胞膜表面の発現レベル、培養上清における放出レベルについて検討したが、レプチンによる直接的なTRAILの発現制御作用は認められなかった。さらに、試験対象をヒト正常末梢血単核球(PBMC)とし、同様にレプチン添加によるTRAILの発現量変化が認められるか否かの検証を続けている。現在までの結果、定常レベルのTRAIL発現、およびIFN誘導性のTRAIL発現も、レプチン添加によって減少する傾向が示されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画を変更した理由については、昨年度の実績報告書に記載したように、糖尿病モデルマウスにおける大腸化学発癌実験の系が確立されていることもあり、本研究課題では糖尿病と発癌との関連を証明する癌種として『大腸癌』に着目することとし、実験を計画していた。しかしながら、昨年度までの実験の結果、対照群と糖尿病モデルマウス群との間で、大腸におけるTRAILの発現量について差は認められなかった。すなわち、このモデル動物での検討結果からは、「糖尿病発症に伴う大腸でのTRAIL発現量の低下は認められない。」と判断し、研究計画を変更することとなった。 対照群に比して糖尿病モデルマウス群において、TRAIL発現量の低下が認められた臓器は肺、腎臓、脾臓であった。そこで、本研究では対象がん種を肺がんと定め、実験計画を立て直した。複数の肺癌細胞株や正常肺上皮細胞株に対し、リコンビナントレプチンを培地に添加することによって、TRAIL発現の変化が認められるか否か検証を行った。複数回の実験結果からは、レプチンが直接的に肺癌細胞や正常肺上皮細胞に対し、TRAILの発現抑制に寄与しているという可能性はないと判断された。さらに、評価対象を正常ヒト末梢血単核球に変更し、さらにレプチンによるTRAIL発現抑制機序の有無について検討を進めている。 また、一方で肺癌細胞を対象に、PED発現抑制成分のスクリーニングの系を立ち上げている。PEDは、2型糖尿病患者の各種臓器で高発現しており、さらには肺癌を含む複数のがん種において腫瘍部での高発現も確認されている。その機能の一つとして、TRAIL誘導性アポトーシスを抑制することが知られていることから、PEDの発現を抑制しうる天然成分の探索を新たな研究計画として加えた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、複数の肺癌細胞株や正常肺上皮細胞株に対し、リコンビナントレプチンを培地に添加することによって、TRAIL発現の変化が認められるか否か検証を行った。TRAILの発現量については、mRNAレベル、タンパク質レベル、細胞膜表面の発現レベル、培養上清における放出レベルについて検討したが、レプチンによる直接的なTRAILの発現制御作用は認められなかった。さらに、試験対象をヒト正常末梢血単核球(PBMC)とし、同様にレプチン添加によるTRAILの発現量変化が認められるか否かの検証を続けている。現在までの結果、定常レベルのTRAIL発現、およびIFN誘導性のTRAIL発現も、レプチン添加によって減少する傾向が示されている。平成30年度は、さらに条件検討を進め、再現性をもってレプチンがPBMCのTRAIL発現に対し抑制効果を有するか否かの検証を行う。 また、一方で、糖尿病患者検体や腫瘍部において発現上昇が報告されているタンパク質であるPED(phosphoprotein enriched in diabetes)に着目した。PEDは2型糖尿病患者の各臓器において、様々な細胞で発現が高いことが報告されている。PEDはTRAIL誘導性アポトーシスに対し、抑制的に働くことも知られている。実際に、肺の腫瘍部および肺癌細胞では、PEDが高発現しており、TRAIL誘導性アポトーシス耐性に寄与していることが報告されている。TRAIL発現誘導成分とPED発現抑制成分の併用が、実践的ながん予防法としてより効果的であると考えられる。平成30年度は、天然成分ライブラリーを用い、PED発現抑制成分のスクリーニングを行う。まずはmRNAレベルで一次スクリーニングを行い、ヒット化合物については、タンパク質レベルでの検証を予定している。
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