2017 Fiscal Year Annual Research Report
Epidemiologic Study on Post-marketing Pharmaceuticals among the Elderly by Administrative Data
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16H05266
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
馬場園 明 九州大学, 医学研究院, 教授 (90228685)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西 巧 福岡県保健環境研究所, その他部局等, 主任技師 (20760739)
松尾 龍 九州大学, 医学研究院, 助教 (60744589)
鴨打 正浩 九州大学, 医学研究院, 教授 (80346783)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 病院・医療管理学 / 医療管理学 / 電子レセプト / 市販後薬剤疫学研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、高齢者に対する市販後薬剤投与による有害事象を定量的に明らかにするものである。今年度は2010年度から2014年度までの4年間に福岡県後期高齢者医療連合に提出されたレセプトを用いた後ろ向きコホート研究を行った。高齢者では薬物の代謝およびクリアランスの低下や薬剤感受性のため薬剤の副作用が出やすいとされ、そのため投与に慎重を期す必要がある薬剤のリストが作成されている。そのリストなかで臨床でよく使用される薬剤として抗ヒスタミン薬がある。そこで、認知症患者に対する抗ヒスタミン薬の使用実態、さらに第1世代抗ヒスタミン薬の投与に関連する要因を明らかにすることを目的とした。総患者数は12,658人でそのうち1度でも第1世代抗H1が処方された人数は8272名(65.3%)であった。第1世代抗ヒスタミン薬を投与された回数の最低・最高は1・140であった。また一度でも第1世代抗H1が含有された風邪薬が処方されたのは7227名(57.1%)であった。認知症患者に対する抗ヒスタミン薬のうち、第1世代抗ヒスタミン薬はおおよそ約30%であり、その多くを風邪薬が占めていた。また、適応疾患においても上気道炎が第1世代の処方に関して大多数を占めており、風邪薬を除去してもなお上気道炎は第1世代抗ヒスタミン薬の使用を増加させる因子であった。また喘息も第1世代ヒスタミン薬を増加させる因子であった。逆にその他のアレルギー疾患は第1世代の処方は増加させなかった。また処方の傾向においては地域でばらつきがあることが示された。アレルギー性鼻炎や湿疹では有意に第1世代の投与が低い結果であった。これはこれらの疾患の病態生理としてヒスタミンの明確な関与が想定されており、そのため同様の有効性を有するのであれば、副作用の少ない第2世代を選択する傾向にあると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
この研究は、福岡県の後期高齢者医療制度の被保険者を対象として電子レセプトを追跡し、市販後の長期的な薬剤関連のアウトカムの検討を行うものである。薬剤の対象としては、高齢者への投与の危険性が報告されているものの広く使用されている薬剤のアウトカムを評価する。アウトカムとしては、死亡、転倒、骨折、外傷、呼吸器感染症、虚血性心疾患、脳血管疾患、末梢血管疾患、腎疾患などによる入院とする。この研究は、わが国における「エビデンス」に基づいた基準を開発するための「市販後の薬剤疫学調査研究」の仕組みを構築することを目的とするものである。平成28年度は、福岡県後期高齢者医療広域連合に請求された2012年4月から2015年3月のレセプトデータデータベースを用いて、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬の大腿部骨折への影響をクロスオーバーデザインで明かにした。その結果、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬曝露の大腿部骨折への影響は調整済み OR 1.45[95%CI 1.22-1.71]で統計学的有意に増加リスクとの関連が認められた。さらに、75歳以上は加齢とともに副作用によるリスク増加への影響が大きくなることが認められた。平成29年度は、認知症患者に対する抗ヒスタミン薬の使用実態及び、第1世代抗ヒスタミン薬の投与に関連する要因を明らかにすることを目的とした。その結果、抗ヒスタミン薬のうち、第1世代抗ヒスタミン薬はおおよそ約30%であり、その多くを風邪薬が占めていた。また、適応疾患においても上気道炎が第1世代の処方に関して大多数を占めており、風邪薬を除去してもなお上気道炎は第1世代抗ヒスタミン薬の使用を増加させる因子であった。また喘息も第1世代ヒスタミン薬を増加させる因子であることを明らかにした
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は平成28年度までの、平成30年度は平成29年度までの危険薬剤曝露群と当該疾患で危険性が比較的に低いとされる薬物を投与されている高齢者を第1対照群とする。さらに、当該の疾病に関する薬物を処方されていない高齢者を第2対照群について、死亡及び骨折、外傷、呼吸器感染症、心疾患、脳血管疾患、末梢血管疾患、腎疾患の入院発生、当該傷病の入院医療費・日数に関するデータベースを構築する。統計解析においては、まず、曝露群、第1対照群、第2対照群の患者の属性の違いを明らかにする。性、年齢、居住2次医療圏、併存疾患である虚血性心疾患、脳血管疾患、うっ血性心不全、膠原病、認知症、肝疾患、糖尿病、消化性潰瘍、末梢血管疾患、慢性肺疾患、悪性腫瘍の分布の違いを明らかにする。連続変数の比較は一元配置分散分析、カテゴリ変数の比較はχ二乗検定を用いる。 次に、アウトカムの入院の発生率を曝露群、第1対照群、第2対照群で比較する。リスクの指標は相対危険度とする。さらに、これらの傷病の入院医療費・日数を曝露群、第1対照群、第2対照群で比較する。統計解析は一元配置分散分析を用いる。そして、アウトカムの入院の発生率比較についてはポアソン回帰モデルを用いる。さらに、骨折、外傷、呼吸器感染症、心疾患、脳血管疾患、末梢血管疾患、腎疾患に関する入院医療費・日数を従属変数とする一般化線形モデルで解析を行う。従属変数にはガンマ分布を仮定する。交絡要因としては、性、年齢、居住2次医療圏、チャールソン併存疾患指数とする。なお、ポアソン回帰モデルと一般線形モデルの解析については、居住2次医療圏の変量効果が結果に影響を与える可能性がある。そこで、居住2次医療圏で階層化したマルチレベルでの解析も行う。
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