2017 Fiscal Year Annual Research Report
心筋梗塞やがんなどへのDNase familyの病態遺伝・生理学的関与の解明
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16H05272
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
安田 年博 福井大学, 学術研究院医学系部門, 教授 (80175645)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | DNase I / DNase 1L2 / 自己免疫疾患 / 心筋梗塞 / 非同義置換型 SNP / cell-free DNA / 遺伝的リスクファクター / 診断マーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
1.DNase I familyに属するDNase I-like 2 (DNase 1L2)は尋常性乾癬に見られる不全角化病変に関与することが報告されている。DNase family遺伝子における活性の減弱・消失をきたすfunctional SNPsの予測に有効なツールとなることを検証したPolyPhen-2によって“probably damaging”と予測された非同義置換型SNPs28座位、およびframeshift/nonsense変異19座位に着目し、相当する変異型の酵素活性を定量した。その結果、非同義置換型SNPs28座位中の23座位はloss-of-function変異であること、さらにframeshift/nonsense変異はすべて酵素活性を消失するものであることが明らかとなった。他方、これら変異型は3大人種を含む異なる14集団では見出せず、すべて“まれ”なものであった。従って、遺伝的多様性は極めて乏しいものの、これら変異型は不全角化病変の遺伝的リスクファクターになりうるものと考えられた。 2.平成28年度に引き続き、臨床症例の検体数を増やし、血清DNase I活性を調べたところ、急性心筋梗塞罹患者等における高DNase I活性レベルが確認された。 3.心筋梗塞罹患者では、循環血中に含まれるcell-free DNA(cfDNA)が増加することが報告されている。そこで、心疾患など様々な疾患罹患者のcfDNAについて、その断片化等に着目した。心筋梗塞以外の心疾患罹患者にもcfDNAが検出されたが、心筋梗塞罹患者ではnucleosomal DNAに相当する166 bp DNA断片の増加が認められた。これはアポトーシスの亢進に伴い放出されたものと考えられ、従前の研究で明らかにした「急性心筋梗塞発症に伴う血清DNase I活性の一過的な上昇」に関連することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下の理由から、「おおむね順調に進展している」と判断した。 ①本研究の遂行によって、関連研究を含めその成果を4報の査読ある欧文学術雑誌に公表した。②本研究の遂行によって、関連研究を含めその成果8件を学術集会等で公表した。③皮膚上皮細胞の角化過程におけるDNase 1L2活性の減弱が尋常性乾癬に見られる不全角化病変を惹起することから、遺伝的リスクファクターとしてDNase 1L2遺伝子のloss-of-function変異を網羅的に同定できた。④心筋梗塞の診断マーカーとしての血中DNase I活性の有効性が追認できた。⑤「心筋梗塞患者におけるcell-free DNAの断片化亢進」に関する成果に対し平成29年度第19回日本DNA多型学会優秀研究賞が授与された。
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Strategy for Future Research Activity |
①不全角化病変を惹起するDNase 1L2活性変動の機構を明らかにするため、皮膚上皮細胞の角化過程におけるDNase 1L2の発現変動を精査する ②症例数を増やし、血中DNase Iの診断マーカ―としての有効性を確認する。 ③DNase I遺伝子について、indel/nonsense変異の酵素活性に対する影響を網羅的に解析し、loss-of-functionを惹起する変異をすべて同定する。従前の非同義置換型SNPsとあわせ、自己免疫疾患等の遺伝的リスクファクターとしてのDNase Iの遺伝的な関与を明らかにする ④DNase I遺伝子に見られるcopy number variationを検証し、in vivo活性との関連を明らかにする。 ⑤得られた研究成果は査読ある欧文学術雑誌等で積極的に公表する。
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Research Products
(12 results)