2018 Fiscal Year Annual Research Report
伝統医薬品をターゲットとした安全性および有効性に優れた抗認知症薬開発の新規戦略
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16H05275
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Research Institution | Takasaki University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
福地 守 高崎健康福祉大学, 薬学部, 准教授 (40432108)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | BDNF / 生薬 / 漢方方剤 / スクリーニング / 抗認知症薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. BDNF遺伝子発現活性化剤のスクリーニング系の再構築;平成29年度の研究代表者の異動に伴い、BDNF-Lucマウスを現所属に移動し、系統の繁殖および維持が順調に進み、本マウス由来培養神経細胞を利用した多検体スクリーニング系のセットアップが完了した。 2. BDNF遺伝子発現を活性化させる生薬が記憶学習に与える影響を評価する行動解析系の再構築;生薬や植物などの抽出物を投与後のマウスの記憶学習能の変化を解析するための文脈性恐怖条件付試験や新規物体位置認識試験の実験系のセットアップが完了した。 3. BDNF遺伝子発現を活性化させる漢方方剤に関する研究;BDNF-Luc由来培養神経細胞を利用した多検体スクリーニングを用いた解析の結果、培養神経細胞においてBDNF遺伝子発現を誘導する漢方方剤エキスを2種類同定した。そのうちの1つについては、活性の本体となる構成生薬を同定した。そこで、活性本体である構成生薬のみでエキスを調整し、解析を行った結果、元の漢方方剤と同様に培養神経細胞においてBDNF遺伝子発現を誘導することが明らかとなった。また、この漢方方剤にエキスは、培養神経細胞の突起伸展を亢進する効果があることを見出した。 4. BDNF遺伝子発現を活性化させる食材エキスに関する研究;培養神経細胞においてBDNF遺伝子発現を活性化する食材エキスを同定した。また、このエキスをマウスに1週間経口投与すると、海馬におけるBDNF発現がわずかに増加する結果が得られた。そこで、文脈性恐怖条件付試験を用いて海馬依存的な記憶を評価した結果、エキスの投与量依存的に記憶学習能が亢進する傾向があることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者の異動に伴い、平成29年度から平成30年度にかけて前所属で行っていた実験系のセットアップを行ったが、多検体スクリーニングに必要なBDNF-Lucマウスの繁殖・維持に予想以上に時間がかかり、また、記憶学習能を評価するための文脈性恐怖条件付試験や新規物体位置認識試験の実験機器のセットアップにも時間がかかったため、セットアップ期間が平成30年度にも及んだ。しかし、これらのセットアップは平成30年度に終了し、また、BDNF遺伝子発現誘導活性を有する漢方方剤や新たな食材エキスの同定に成功した。さらに、食材エキスについては海馬依存的な記憶が亢進する傾向が得られている。そのため、平成30年度全体の研究課題の進捗状況としては、「やや遅れている」とした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでの本研究課題の遂行によりBDNF遺伝子発現誘導活性を有することが明らかとなった生薬エキス、漢方方剤エキスが脳の高次機能(記憶学習能)に与える影響を中心に解析を行う。また、BDNF遺伝子発現誘導活性および記憶学習能の亢進効果が認められた食材エキスについては、その再現性を取りながら、記憶学習障害モデルを用いて、抗認知症活性の有無についても評価する。また、BDNF-Lucマウス由来培養神経細胞を用いた多検体スクリーニングを用いて、BDNF遺伝子発現誘導活性を有する新たな植物エキスや植物由来成分の探索を行い、活性の認められたものについては、マウスを用いて記憶学習や記憶学習障害に与える影響についても解析を行う。さらに、記憶学習能の亢進効果が認められたエキスについては、エキス投与後の脳内の神経細胞やシナプスの形態・構造変化についても解析を進める。
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