2017 Fiscal Year Annual Research Report
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16H05317
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
堂浦 克美 東北大学, 医学系研究科, 教授 (00263012)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 遺伝子 / ゲノム / 脳神経疾患 / マイクロアレイ / プリオン |
Outline of Annual Research Achievements |
私たちの体内にはプリオンの増殖を抑制する機構が備わっており、その機構は何らかの外的要因等の影響を受け、プリオンの増殖をコントロールしている可能性が予想されるが、発病に関わるこれらの生体防御機構については不明である。申請者は、食品添加物等として日常摂取しているセルロースエーテル(CE)が、プリオン病に対して長期間にわたる優れた発病抑制効果を発揮することを発見した。CE効果にはマウス系統差(Tg7[遺伝的背景不明]は高感受性、Tga20[B6背景]は低感受性)があるが、Tg7とTga20ではCEの体内動態に違いは無い。高感受性系統Tg7を低感受性系統B6と交配した2世代目(F2)マウス(HaPrP+/-,MoPrP-/-)のCE感受性試験は、きれいに高感受性群と低感受性群の2群に分離できるため、これらの2世代目以降のマウスを用いてSNPsアレイによる全ゲノム関連解析を実施し、CE感受性に関わる候補遺伝子群を同定しようとした。本年度は、全ゲノム関連解析用の検体としてF2~F4マウスの作出・選抜を継続し、プリオン感染にてCE効果の判定を行い、高感受性群と低感受性群を新たに計260検体準備できた。これらのマウスでは、あらためてCE感受性に関与する遺伝子がメンデル遺伝様式をしめす単一の因子(又は複数としても主因子は単一)であることが確認できた。しかし、予算の都合上これらの検体の全ゲノム関連解析を本年度は実施できなかった。一方、CEの作用をTg7とTga20の種々の試料を用いてビトロで検討したところ、マクロファージに対するLPS刺激応答と、その応答へのCEの反応性が両者で異なることを発見した。このことは、CE感受性にかかわる候補遺伝子としてマクロファージの機能や極性にかかわる因子群が考えられ、効率的に候補遺伝子を絞り込むのに役立つと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
F2、F3高感受性マウスの精子を用いてB6と交配を行い、産仔から(HaPrP+/-,MoPrP-/-)のオスを選抜して、精子を保管後にCE感受性試験(プリオン感染ならびにCE投与実験)を行い3世代目、4世代目の選抜を行った。さらに、解析検体を増やすためにTg7とB6を交配したF2マウスを多数作出し、CE感受性試験を実施した。これらの実験から、昨年度に全ゲノム関連解析した60検体に加え、本年度新たに260検体を得ることができた。昨年度の解析からTg7がB10と129/Olaの混血であることを解明できたものの、CE高感受性に結びつく候補領域が多数存在し絞り込めなかった。一方、本年度は上記の多数検体を準備するところまでが精一杯であり全ゲノム関連解析は来年度の宿題となったが、CE感受性試験で候補遺伝子がメンデル遺伝様式をとる単一の因子(又は複数としても主因子は単一)であることをあらためて確認した。また、昨年度の解析でCE高感受性にTg7ゲノム上のトランスジーンが寄与していないことを明らかにしていたが、あらためて多方面からCE作用を探った結果、Tg7とTga20のマクロファージではLPSに対するSmadの応答が異なり、CEがLPS刺激応答を抑制することが判明した。病理学的解析からマクロファージがプリオン病の病態に深く関与していることは以前から指摘されており、ビボにおいてCEがマクロファージに作用していることはわかっていたが、そのことを具体的に裏付けるビトロの実験結果であった。このことは、CE感受性にかかわる候補遺伝子としてマクロファージの機能や極性にかかわる因子群が考えられ、効率的に候補遺伝子を絞り込むのに役立つものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
4世代目のマウスによるCE感受性の判定を行い、その後の世代を作出・選抜する実験を繰り返して7世代目をめざしてコンジェニック化を継続するが、戻し交配に予想以上に時間・労力・費用がかかっているため、並行してF2マウスでの解析匹数を増やしてSNPsアレイによる全ゲノム関連解析を行うことに注力し研究を効率的に進める。すでに計320匹分の検体を採取し、この中で未解析である260匹分について全ゲノム関連解析を実施する。特に、マクロファージの機能や極性にかかわる因子群に注目して効率的に解析を進める。全ゲノム関連解析で連鎖SNPsが見つかれば、その結果はアレイを用いない手段で確認を行う。万一、320匹分の検体でもゲノム標的領域の絞り込みが不十分であれば、予定通りにF2マウスで計100匹程度の追加の全ゲノム関連解析を行う。それでもゲノム上の標的領域が上手く絞り込めない場合は、他のSNPsアレイ製品を用いた解析を検討する。それでも上手く行かない場合は、SNPsによる全ゲノム関連解析を中止し、効率は悪いもののさらにコンジェニック化をめざす。可能な限りバッククロスした高感受性マウスと低感受性マウスについて次世代シークエンサーを用いた全ゲノムシークエンス解析を実施し、両群で異なる遺伝子配列・構造を抽出してCE感受性に関わる候補遺伝子群の同定に努める。それでも候補遺伝子群が同定できない場合には、全ゲノム関連解析結果を見直し、それぞれのデータセットについて並べ替え検定を行って閾値を設定し直し、閾値を超えるLOD値をもつ候補標的領域でターゲットシークエンス解析を行い、CE感受性に関わる候補遺伝子群を探す。また、これらの手法にこだわらずにTg7とTga20を用いた多面的なビボやビトロの解析を進め、それらの結果も加味して候補遺伝子群を絞り込む。
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Research Products
(8 results)