2016 Fiscal Year Annual Research Report
RNA顆粒生成・分解に注目した多系統蛋白質症における神経-筋共通病態の解明
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16H05318
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
青木 正志 東北大学, 医学系研究科, 教授 (70302148)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
割田 仁 東北大学, 医学系研究科, 助教 (30400245)
鈴木 直輝 東北大学, 大学病院, 助教 (70451599)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 神経変性 / 多系統蛋白質症 / RNA結合蛋白 / iPS細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
多系統蛋白質症(multisystem proteinopathy, MSP)は、筋、骨、大脳皮質および運動ニューロンを含む多系統の組織にユビキチン陽性封入体を特徴とする病的蛋白蓄積と進行性組織変性が生じ、封入体ミオパチー(inclusion body myopathy, IBM)、骨パジェット病(Paget disease of bone, PDB) 、前頭側頭型認知症(frontotemporal dementia, FTD)、筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis, ALS)を単独、もしくは2つ以上の組み合わせで合併する遺伝性疾患であり、一般に常染色体優性遺伝性を示し、同一家系内でも異なる表現型をとり得ることが知られている。 本研究は、申請者らが報告したhnRNPA1変異による遺伝性封入体ミオパチー患者由来iPS細胞から確立するヒトMSP細胞モデルと、変異hnRNPA1遺伝子導入動物モデルを用いてMSPにおける神経細胞、および骨格筋に共通する変性メカニズムを解明することを目的とした。このhnRNPA1はMSP3のみならず家族性筋萎縮性側索硬化症(ALS20)の原因遺伝子としても報告されており、なぜこのような臓器/組織選択的は変性を惹起するか明らかとはなっていない。そこで本研究ではまず運動ニューロンと骨格筋細胞における変性メカニズムを解明すべく、患者由来iPS細胞をソースとして細胞モデルの確立を試みた。 このヒトMSP神経/骨格筋細胞モデル確立のために初年度、1)hnRNPA1変異MSP3患者1名よりヒトiPS細胞の樹立を達成した。2)ゲノム編集により患者由来の変異箇所のみを正常配列に戻す、あるいは健常者由来の正常配列に患者と同一の変異配列を生じるisogenic対照株を作製中である。3)患者由来iPS細胞を神経・骨格筋細胞に分化誘導した細胞に酸化的ストレス・プロテアソーム阻害等の負荷を与えた条件下での表現型解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下を達成したため、本研究は概ね順調に進展している。 1. 患者由来iPS細胞の樹立:hnRNPA1変異MSP3患者1名より末梢血単核球を分離採取し、エピソーマルベクターを用いてYamanaka四因子(OCT3/4、SOX2、KLF4、c-MYC)を導入し、ヒトiPS細胞を樹立した。樹立したiPS細胞株において、外来遺伝子ゲノム挿入部位の確認、未分化マーカーの発現、多分化能を確認した。患者由来ヒトiPS細胞から良質なクローンを数クローン選択し、維持・保管した。品質管理として3クローンを選択して染色体解析を行った。 2. ゲノム編集によるisogenic対照株の作製:CRISPR-Cas9によるゲノム編集のため、ピューロマイシン薬剤選択カセットを含むターゲティングベクターを作製した。患者由来の変異箇所のみを正常配列に戻す、あるいは健常者由来の正常配列に患者と同一の変異配列を生じるisogenic対照株を作製中である。これまでに、遺伝子導入した細胞群から薬剤選択したコロニーについてPCR法とシークエンス解析によるターゲティングベクターの挿入を確認した。 3. 患者由来iPS細胞を神経・骨格筋細胞に分化誘導したMSP細胞モデルの作製:樹立したiPS細胞株から神経細胞へ、あるいは骨格筋細胞へとそれぞれ分化誘導した。対照として、京都大学でYamanakaらが樹立した健常者由来iPS細胞と共に以下の研究に用いた。 4. 単純培養、ストレス負荷によるヒトMSP細胞モデル表現型解析:3.の細胞を対象にMSPモデル妥当性を検証した。多重免疫細胞化学を用いた解析では、酸化的ストレス負荷による細胞質内RNA顆粒形成を確認している。
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Strategy for Future Research Activity |
上記モデル細胞を対象に単純培養下もしくは酸化的ストレス負荷を与え、細胞内分画の免疫ブロッティングや定量的RT-PCR法を用いてRNA結合蛋白質、ストレス顆粒、Pボディ関連分子、そしてオートファジー関連分子の発現分布・量を解析し、共通の分子病態を明らかにする。 また、同モデル細胞からmRNAを抽出し、次世代シークエンサーを用いたRNA sequencingによるトランスクリプトーム解析をおこなう。さらに、HITS-CLIP法を用いて変異hnRNPA1と密接に関連する標的RNAとその結合領域を同定する。
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[Journal Article] Prominent sensory involvement in a case of familial amyotrophic lateral sclerosis carrying the L8V SOD1 mutation.2016
Author(s)
Nisiyama A, Warita H, Takahashi T, Suzuki N, Nishiyama S, Tano O, Akiyama T, Watanabe Y, Takahashi K, Kuroda H, Kato M, Tateyama M, Niihori T, Aoki Y, Aoki M.
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Journal Title
Clin Neurol Neurosurg
Volume: 150
Pages: 194-196
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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[Presentation] Isolated inclusion body myopathy caused by a multisystem proteinopathy-linked hnRNPA1 mutation.2016
Author(s)
Izumi R, Warita H, Niihori T, Takahashi T, Tateyama M, Suzuki N, Nishiyama A, Shirota M, Funayama R, Nakayama K, Mitsuhashi S, Nishino I, Aoki Y, Aoki M.
Organizer
The 13th International Congress of Human Genetics
Place of Presentation
京都(国立京都国際会館)
Year and Date
2016-04-03 – 2016-04-07
Int'l Joint Research
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