2016 Fiscal Year Annual Research Report
HAMの病態形成におけるエピゲノム異常の統合的解析と新規制御機構の解明
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16H05323
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
山野 嘉久 聖マリアンナ医科大学, 医学研究科, 教授 (80445882)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山岸 誠 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 特任助教 (90625261)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 神経病態免疫学 / HTLV-1 / HAM / エピジェネティクス / エピゲノム操作 |
Outline of Annual Research Achievements |
HAMの病態解明におけるHAM的T細胞(CADM1+CD7+)解析の妥当性を検討するために、HAM患者220例の末梢血単核球細胞(PBMC)を用いて、CD4+ T細胞におけるHAM的T細胞の割合を、HAS-Flow法(Clin Cancer Res, 2014)により解析し、HAM患者の感染細胞ではHAM的T細胞が主な構成細胞であることを証明した。またHAM患者PBMCにおけるクローナリティ解析にて、HAM的T細胞(CADM1+CD7+)はオリゴクローナリティ、ATL的細胞(CADM1+CD7-)はモノクローナリティが強いことを明らかとし、HAM患者の感染細胞においてもクローナリティの高い集団が存在し、それらの細胞はATL細胞と類似した特徴を有していることを明らかとした。次に、これら特徴を踏まえてHAM患者由来の感染細胞についてマクロアレイを用いて網羅的遺伝子発現解析を実施し、HAMの病態形成に重要な炎症性遺伝子(IFNg, T-bet, CXCR3)の発現は明らかにATL細胞と比較して高く、我々のこれまでの報告(PLoS One 2009, J Clin Invest 2014)を裏付ける結果が得られた。さらに、エピゲノム修飾酵素の発現レベルについて検討したところ、EZH2遺伝子の発現亢進を認めた。そこでEZH2阻害剤のHAM患者における有効性についてin vitroで検討したところ、HAM患者由来T細胞に対する強い抗炎症活性と感染細胞の増殖抑制・殺傷活性を有することを証明し特許を出願した(特願2017-007887)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、HAMにおいてHAM的T細胞群(CD4+CADM1+CD7+)が普遍的にみられるものなのか、さらにHAM的T細胞が、これまでに申請者らが示してきたHAM由来のCD4+ T細胞と同じ性質もしくはそれを超えたより本質的と考えられる性質を有するのか、すなわちHAMを特徴づける細胞群と定義できるかを検討し、HAMの病態解明におけるHAM的T細胞(CADM1+CD7+)解析の妥当性を検証することが出来た。またHAM的T細胞(CD4+CADM1+CD7+分画)において、エピゲノム異常の下流にあると考えられる遺伝子発現にどのような特徴的変化があるかをマイクロアレイにて網羅的に解析し、pathway解析、GO解析、GSEA解析等を行った。その結果、HAM的T細胞における特徴的な遺伝子発現プロファイルが判明し、その包括的記載が可能となった。さらにその基盤となるエピジェネティクス制御の異常について解析を進め、エピゲノム修飾酵素の発現レベルに異常が存在することを突き止め、特にH3K27メチル化酵素であるEZH2の発現亢進を認めた。そこでEZH2阻害剤のHAM患者における有効性についてin vitroで検討したところ、HAM患者由来T細胞に対する強い抗炎症活性と感染細胞の増殖抑制・殺傷活性を有することを証明した。このように、本研究によってHAMではその病態形成過程にエピゲノムの異常が深く関与することを証明しつつあり、HAMの新たな病態形成機構の解明につながる成果が得られると期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
HAMの病態解明におけるHAM的T細胞(CADM1+CD7+)解析の妥当性をさらに検証するために、HAMの病態をより強く反映すると考えられる髄液細胞中で、これらの割合がどのようになっているかを検討する。次に、HAM的T細胞のエピゲノムについて、MeDIP-on-chip法によりDNAメチル化の、ChIP-on-chip法によりヒストン修飾のゲノム上の分布を明らかとする。比較対象は、HAM患者T細胞中の非感染T細胞群(CD4+CADM1-分画)、健常者CD4+ T細胞、ATL細胞とし、HAM的T細胞特異的なエピゲノム異常の特徴を明らかにする。各目標症例は5症例とする。そして、平成28年度に得られた網羅的遺伝子発現解析の結果と統合解析を行い、HAM的T細胞に認められる特徴的な遺伝子発現プロファイルを規定するエピゲノム異常を明らかにする。また平成28年度にHAMに対する有効性がin vitro実験系において示唆されたEZH2阻害薬の、HAMにおけるin vivoレベルでの有効性検討に着手する。具体的には、重度免疫不全マウスへのHAM患者細胞移植モデルを用いて、対照溶媒あるいは異なる3用量のEZH1/2阻害剤を1日1回4週間経口投与し(n=5)、HTLV-1感染細胞量の減少効果、炎症反応の抑制効果の有無について評価する。この解析によって、HAM的T細胞を標的としたHAMに対するエピゲノム治療の検討が可能となる。
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