2017 Fiscal Year Annual Research Report
変性型認知症の各種蓄積タンパクイメージングによる病態研究
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16H05324
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Research Institution | National Institutes for Quantum and Radiological Science and Technology |
Principal Investigator |
樋口 真人 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学総合研究所 脳機能イメージング研究部, チームリーダー(定常) (10373359)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 神経科学 / 認知症 / 薬理学 / アルツハイマー病 / 前頭側頭葉変性症 / 生体イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
1) αシヌクレイン・TDP-43のPET薬剤探索 候補化合物3種の放射性標識体を作製し、αシヌクレイン線維接種マーモセットのポジトロン断層撮影(PET)や、患者脳サンプルのオートラジオグラフィーで評価した。その結果、1種の化合物によって脳内病変を検出できた。さらに、この化合物が蛍光物質であることを利用し、αシヌクレイン線維接種マウスのインビボ二光子レーザー顕微鏡で評価した結果、αシヌクレイン凝集体病態の脳内伝播を経時的に捉えられることが判明した。TDP-43病変に結合する薬剤としては、化合物2種の放射性標識体を作製し、正常マウスのPETにより、十分な脳移行性を有することを証明しえた。また、患者脳切片のオートラジオグラフィーにより、病変への特異結合を確認した。 2) アミロイド・タウ病変に結合する化合物の評価 (a) PETによるアミロイド病理の意義の検討:アルツハイマー病の前段階の患者を対象として、アミロイドおよびタウPETを、それぞれ特異的プローブである[11C]PiBと[11C]PBB3を用いて経時的に実施した。これにより、アミロイド蓄積がタウ蓄積を加速することが示唆された。また、ベースラインの時点でタウ蓄積が多いほど、その後の認知障害が加速されることが示された。 (b) タウ病変PET薬剤の評価:新規化合物PM-PBB3は、既存プローブPBB3に比して重合度が低いタウ病変にも結合する。PBB3とPM-PBB3を蛍光プローブとしてタウ病変モデル(rTg4510)マウスに投与し、蛍光タンパクで可視化した神経細胞・ミクログリアと合わせてインビボ二光子レーザー顕微鏡で経時的に観察した。その結果、重合度が高いタウ病変を有する神経細胞が、高頻度でミクログリアにより貪食されて死滅することが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1) αシヌクレイン・TDP-43のPET薬剤探索 年度当初の計画通り、αシヌクレイン病変プローブの放射性標識体作製と、モデル動物のPETや患者脳サンプルによる評価を実施しえた。蛍光プローブとしてモデルマウスのインビボ二光子レーザー顕微鏡で評価を行い、αシヌクレイン病変が検出できたのみならず、病態の空間的伝播を経時的に捉えることができたのは、予想以上の成果といえる。TDP-43病変プローブ開発も、計画に即して候補化合物の標識体を作製し、PETプローブとして望ましい特性を有することを確認した。 2) アミロイド・タウ病変に結合する化合物の評価 (a) PETによるアミロイド病理の意義の検討:当初予定されていた通り、アミロイドとタウのPETイメージングを、同一被験者で経時的に実施し、アミロイド蓄積がタウ蓄積の経時変化に及ぼす影響を解析しえた。ベースラインのタウ蓄積がその後の認知障害を加速しうるという所見は、タウ病態と脳機能のつながりを考える上で新規性の高い所見であり、想定した以上の知見が得られたといえる。 (b) タウ病変PET薬剤の評価:前年度の結果から予想された通り、インビボでも新規プローブPM-PBB3は、既存プローブPBB3より重合度の低いタウ病変を検出できるイメージング薬剤であることが明らかになった。一方、重合度の高いタウ病変を有する神経細胞の方が、重合度の低いタウ病変を有する神経細胞よりも死滅しやすいことや、これらの神経細胞の死滅がミクログリアの貪食により生じることは、新規性が極めて高い所見であり、当初の計画を上回る研究成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
1) αシヌクレイン・TDP-43のPET薬剤探索 新規開発のαシヌクレイン病変プローブを用いて、αシヌクレイン線維接種マーモセット脳における病変の伝播を、経時的なPETにより捉えることを、マクロイメージングの次の目標とする。また、インビボ二光子レーザー顕微鏡によるミクロイメージングでは、線維接種マウスの伝播が神経回路に沿って生じるかどうかを経時的に追跡すると共に、病的なαシヌクレインが排泄される経路やメカニズムについても検討する。 2) アミロイド・タウ病変に結合する化合物の評価 (a) PETによるアミロイド病理の意義の検討:これまでの研究により、アルツハイマー病の前段階におけるタウ病態進展へのアミロイドの関与や、タウ蓄積がその後の症状進行へ及ぼす影響が示された。そこで今後は、アルツハイマー病の前段階や早期において、各脳領域に蓄積したアミロイドやタウが、いかなるタイプの認知障害や行動・心理症状と密接に関連するのかを明らかにする。 (b) タウ病変PET薬剤の評価:タウ病変モデルマウスであるrTg4510マウスのタウ病変をPETやインビボ二光子レーザー顕微鏡で経時的に捉えることにより、タウ蓄積・ミクログリア活性化・神経細胞死の相互関係が明らかになってきた。今後は、rTg4510マウスのマクロとミクロのイメージングが、タウ病態を標的とする治療薬候補物質の評価にどれだけ役立ちうるかを明らかにする。具体的には、rTg4510マウスの病的タウの発現をドキシサイクリン投与により抑制できることを利用して、ドキシサイクリン投与による病態変化をイメージングで捉えられるかどうかを検証する。また、炎症性ミクログリアの活性を抑える薬剤の投与も行い、同様に病態への治療効果をイメージングで評価する。
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Research Products
(28 results)