2016 Fiscal Year Annual Research Report
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16H05335
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
中尾 眞二 金沢大学, 医学系, 教授 (70217660)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 再生不良性貧血 / クローン性造血 / HLAクラスI欠失 / 6pLOH / ゲノム変異 / 細胞傷害性T細胞 / iPS細胞 / T細胞レセプター |
Outline of Annual Research Achievements |
HLAクラスIアレル欠失造血幹前駆細胞(HSPC)のクローン拡大に寄与する遺伝子変異や、それによる長期の造血維持機構を明らかにするため、長期寛解状態(発症後経過年数中央値13年[2-30])にあるHLA欠失白血球陽性患者15例を対象として、骨髄不全との関連が報告されている61遺伝子のターゲットシーケンシングを行った。12例(80%)において遺伝子変異は全く認められなかったが、65歳以降に発症した高齢患者3例ではDNMT3A、ZRSR2、TET2、CBLの変異を認めた。このうち1例ではDNMT3A変異を背景に6pLOHを生じたことが、継時的な6pLOHクローンの拡大やTET2、ZRSR2変異の獲得につながったことが示唆された。変異が陰性であった12例のうち末梢血中HLA欠失顆粒球の割合が高い5例のHLA欠失顆粒球を対象に全エクソンシーケンシング (WES)を行ったところ、複数のnonsynonymous変異が認められたものの、造血器悪性腫瘍関連の遺伝子変異は全く認められなかった。これらの結果から、6pLOHやHLA遺伝子変異を生じたHSPCsは、その拡大に、ドライバー遺伝子変異は必要ではなく、それらの変異HSPCクローンが持つ固有の増殖能力によって、長期間安定した造血を支持していると考えられた。ただし、高齢に伴って生じていた変異クローンに6pLOHが生じた場合には、そのクローンにさらに別の変異が続発し、それが異常クローンを拡大させる可能性が示唆された。 また、再生不良性貧血患者由来のiPS細胞から誘導したHSPCを特異的に傷害するT細胞から、T細胞レセプターα鎖β鎖をクローニングし、そのcDNAをJurkat細胞に導入することにより、自己のHSPCに特異的に反応するトランスフェクタントを作製した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.6pLOH血球陽性症例を対象とした解析により、6pLOH(+)HSPCのクローン性増殖は、ほとんどの例においてドライバー変異なしに起こっているが、年齢に関連したゲノム変異を持つHSPCに6pLOHが生じた例では、骨髄に対する免疫学的攻撃をきっかけに変異クローンが増殖し、さらなるクローン拡大の原因になることを明らかにした。 2.独自に作製した抗HLA-B4002抗体を用いることにより、このクラスI抗原を欠失した顆粒球では、6pLOHとは別に、B*40:02の構造遺伝子に様々な異常が検出されることを見出し、論文発表した(Zaimoku, et al. Blood, 2017, in press) 3.6pLOHによるHLA欠失血球陽性再生不良性貧血患者から、野生型、6pLOH(+)、B4002単独欠失のそれぞれのiPS細胞を樹立し、野生型iPS細胞から誘導したHSPCのみを選択的に傷害する細胞傷害性T細胞(CTL)株を樹立した。このCTL株からCTLクローンを樹立することが困難であったため、CTL株のT細胞レセプター(TCR)レパトアを解析し、頻度の高いTCRβ鎖陽性T細胞からcDNAを作製した。このcDNAによるJurkat細胞のトランスフェクタントを作製し、現在、自己の野生型HSPCに対して選択的に反応するトランスフェクタントの同定を試みている。
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Strategy for Future Research Activity |
①6pLOH以外によるHLAクラスIアレル欠失機序の解明 これまでの検討により、6pLOHやHLA-Aアレル欠失血球が陰性であった患者、またはHLA-Aがホモ接合体のためこれらが検討できなかった再生不良性貧血患者のうち、免疫抑制療法によって改善した例を対象として以下を検討する。1)HLA-Bw4、Bw6ヘテロ接合体の患者を対象として、それぞれに対する抗体を用いることにより、Bアレル欠失血球の有無を決定する。2)Bw4またはBw6欠失陽性例について、それぞれの欠失血球をソートし、Bアレル欠失の原因となる遺伝子変異を次世代シーケンサーにより同定する。3)Bw4、Bw6ホモ接合体を対象として、HLA-Bアレルの変異を次世代シーケンサーにより決定する。4)HLA-Bアレルを巻き込んだ6pLOH(+)例を対象として、野生型細胞に、CTLからの攻撃を免れさせるHLA-Bα鎖領域の変異がないかどうかを、次世代シーケンサーを用いてスクリーニングする。 ②造血幹前駆細胞を傷害するTCRトランスフェクタントのエピトープの同定 iPS細胞由来の野生型CD34陽性細胞は傷害し、6pLOH陽性(HLAクラスI欠失)CD34陽性細胞は傷害しない患者T細胞のエピトープを、以下の方法で同定する。1)iPS細胞由来の野生型CD34陽性細胞からcDNAライブラリーを作製し、特定のHLAアレルを導入したCOS細胞にトランスフェクトする。2)野生型iPS細胞由来CD34陽性細胞を特異的に傷害する細胞傷害性T細胞クローン由来のTCRαβ鎖cDNAをJurkat細胞に導入し、このJurkatのCOSライブラリーに対する反応性を、インターフェロンγ産生を指標としてスクリーニングする。
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[Journal Article] Identification of an HLA class I allele closely involved in the auto-antigen presentation in acquired aplastic anemia2017
Author(s)
Zaimoku Y, Takamatsu H, Hosomichi K, Ozawa T, Nakagawa N, Imi T, Maruyama H, Katagiri T, Kishi H, Tajima A, Muraguchi A, Kashiwase K, Nakao S
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Journal Title
Blood
Volume: 印刷中
Pages: 印刷中
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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