2016 Fiscal Year Annual Research Report
統合失調症の認知機能障害とパルブアルブミン陽性細胞のオキシトシンシグナル
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16H05372
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
橋本 隆紀 金沢大学, 医学系, 准教授 (40249959)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菊知 充 金沢大学, 子どものこころの発達研究センター, 教授 (00377384)
東田 陽博 金沢大学, 子どものこころの発達研究センター, 特任教授 (30093066)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | オキシトシン受容体 / mRNA / 背外側前頭前野 / 前帯状回 / 頭頂葉 / 視覚野 |
Outline of Annual Research Achievements |
統合失調症では大脳皮質パルブアルブミン陽性ニューロン(PVニューロン)の機能変化が、神経ネットワークの律動的な活動(オシレーション)の形成異常をもたらし、難治性の認知機能障害をもたらしていると想定される。 一方、脳内で産生分泌されるペプチドホルモンであるオキシトシン(OXT)が、PVニューロンに発現する受容体を介して、PVニューロンによるオシレーション形成を促進している可能性がげっ歯類の大脳皮質で示されている。 本研究では、統合失調症のPVニューロン変化におけるOXTシグナルの重要性を確立することを目的とする。そのために本年度は、ヒト健常対照例の大脳皮質においてOXT受容体遺伝子の発現がPVニューロンの分布に一致して認められるかどうかを調べた。死後脳組織は精神神経疾患歴のない24才から43才までの男性2名と女性2名より得た。それぞれの脳より、背外側前頭前野、前帯状回、後部頭頂葉、視覚野から凍結切片を作成し、OXT受容体に特異的な放射活性を有するRNAプローブを作成し、in situ hybridizationを行った。そしてOXT受容体遺伝子の発現を、切片を超高感度フィルムに感光し組織レベルで、さらに乳剤を表面に塗り細胞レベルで、検出を試みた。しかし、いずれの症例のどの領域においてもOXT受容体の発現は検出されなかった。 また、OXT受容体刺激によりPVニューロンの機能障害が改善することを示すために、PVニューロン特異的に発現しオシレーション形成に重要と考えられるKCNS3カリウムチャネル遺伝子のノックアウトマウスを作成し、KCNS3の発現が低下していることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ヒト大脳皮質のいずれの領域でもOXT受容体の存在を確認できなかった。一方、げっ歯類では皮質PVニューロンにおける発現が報告されている。種間の違いの可能性もあるが、OXT受容体の発現レベルが、今回用いたRNAプローブの検出感度以下である可能性もある。これらの可能性の見極めがまだ終了してない。KCNS3ノックアウトマウスでは、KCNS3の発現低下は確認したが、オシレーションや認知機能の低下の確認はできていない。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒト大脳皮質におけるOXT受容体の発現の有無に決着をつけるために、1)ヒトで用いたと同じ部位を認識するRNAプローブでマウスの大脳皮質におけるOXT受容体の遺伝子発現の検出を試み、2)マウスでOXT受容体の発現検出に用いられた特異抗体の入手を試みてヒト皮質切片を用いて免疫組織化学を行う。 KCNS3ノックアウトマウスで、オシレーションおよび認知機能の評価を行い、OXT投与による改善効果を調べるための基礎データを取る。
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