2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16H05380
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
新井 誠 公益財団法人東京都医学総合研究所, 精神行動医学研究分野, プロジェクトリーダー (80356253)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 統合失調症 / 糖化ストレス / カルボニルストレス / メタボローム / 終末糖化産物 / 酸化ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、in vitro における糖化ストレスマーカーの臨床的有用性、in vivo における抗糖化ストレス作用をもつ化合物の探索とその臨床応用をめざした取り組みを主軸にして、以下の点に関する解析を継続した。 (1)末梢血、尿、唾液、剖検脳を利用した糖化ストレスプロファイルとその生物学的意義の解明:疾患と関連する末梢血AGEsのプロファイルを実施し、疾患と関連する新たな分子を抽出した。また、非侵襲的に入手可能な検体を活用し、簡易診断への適応が期待できる因子の妥当性を検証した。統合失調症を含む症例と健常対照者で測定を実施した予備的な検討の結果、疾患群では皮膚糖化ストレスが健常群と比較して高値を示すこと、特に一部の症例では高値を示す所見を得た。 (2)細胞・マウスモデルを利用した抗糖化ストレス化合物の探索とその分子基盤の解明:糖化ストレスを呈する症例由来のリンパ芽球様細胞、iPS 細胞モデルを確立し、糖化ストレスに伴う細胞内代謝環境の変化を時系列で計測した。また、天然物由来抽出成分から、抗糖化ストレス作用をもつ化合物を活用して、遺伝子改変マウスでの行動薬理試験、疾患モデルとしての妥当性について検証を行った。 (3)糖化ストレスプロファイルを測定する機器の臨床適応:前向きコホート研究や臨床研究に有用性の高い簡便な糖化ストレス測定機器を一般集団に対して導入検証を行い、集積した因子との関連について分析を継続した。 (4)in vitro からin vivo へ基礎研究で得られた治療的コンセプトの確立:糖化ストレスプロファイルによって症例を階層化し、臨床症状の経過と相関について、多層的なデータ相互の関連について分析した。特に、症状が著しく改善した症例を対象に、時系列での検体収集を行い、症状変化と代謝産物の変動との関連について検証を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カルボニルストレス亢進の指標について検体収集施設間での妥当性を検証し、また、予後調査を実施した。ペントシジン蓄積が再燃・再発リスクや予後と関連する所見を得た。また、細胞内炎症反応カスケード活性化に伴う動脈硬化や心血管障害の進展などに、AGEs-AGEs受容体axisの関与が想定されることから、esRAGE濃度を測定し、RAGE受容体蛋白をコードするAGERの特異的ハプロタイプ(rs17846798-rs2071288-63bp deletion)とミスセンス変異(Gly82Ser) によって顕著に低下することを明らかにした(論文発表)。マウス・細胞モデルを利用した分子基盤の解明においては、ビタミンB6欠乏マウスモデル、GLO1 KOマウスモデルを掛け合わせたマウスモデルを作成し、前頭前皮質、海馬、線条体の領域での次世代シークエンサーによる脳内遺伝子発現解析、病態生理との関連遺伝子ネットワークの検証を実施した。また、現在、リンパ芽球様細胞あるいはiPS細胞モデルにおける細胞内代謝等の分析を継続中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)ヒト臨床検体について、血漿、尿、唾液、皮膚、剖検脳組織相互の糖化ストレスプロファイルを継続する。特に、時系列データを軸にしてデータ集積を行い、臨床経過との因果関係を検証する。これまでに、統合失調症、双極性障害、うつ病の3群において共通したマーカー、統合失調症と双極性障害の2群に共通したマーカー、双極性障害とうつ病の2群に共通したマーカー、統合失調症に特異的なマーカーを同定しており、今後、未服薬症例あるいは初発症例について症例を集積し、付随情報を統合することでマーカーとの病態との因果関係、予防因子を明らかにする。(2)細胞モデル、動物モデルを利用した基盤解明のための研究推進を継続すると共に、(3)特に、ヒト剖検脳組織、マウス脳組織を用いて、脳内糖化ストレスの蓄積脳領域、細胞種を明確にする。剖検脳糖化ストレスプロファイルを血漿、皮膚を含む生理検体と比較してその相関を解析する。ヒト剖検脳を用いた分析は国内外において希少であり、体液-剖検脳相互のデータを精査し、臨床応用へ還元可能な知見を得る。 また、前頭葉皮質、海馬、上側頭回など症例においては蓄積する脳部位に違いがある所見も得ており、蓄積部位の相違が、臨床症状の違いを反映している可能性がある。脳内糖化ストレスの局在を明らかにするため、抗糖化ストレス抗体を用いた免疫組織染色へ応用する。糖化産物の脳内脆弱部位、細胞局在、臨床症状との関連を明確にすることで、統合失調症の病因、病態に関与する神経回路ネットワークの一端を明らかにする。さらに、上述の研究成果を臨床応用するための研究推進、臨床現場における実用化の実践をめざす。
|
-
[Journal Article] High-resolution copy number variation analysis of schizophrenia in Japan.2017
Author(s)
Kushima I, Aleksic B, Nakatochi M, Shimamura T, Shiino T, Yoshimi A, Kimura H, Takasaki Y, Wang C, Xing J, Ishizuka K, Oya-Ito T, Nakamura Y, Arioka Y, Maeda T, Yamamoto M, Yoshida M, Noma H, Hamada S, Morikawa M,et al.
-
Journal Title
Mol Psychiatry.
Volume: 22(3)
Pages: 430-440.
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
-
-
[Journal Article] The regulation of soluble receptor for AGEs contributes to carbonyl stress in schizophrenia.2016
Author(s)
Miyashita M, Watanabe T, Ichikawa T, Toriumi K, Horiuchi Y, Kobori A, Kushima I, Hashimoto R, Fukumoto M, Koike S, Ujike H, Arinami T, Tatebayashi Y, Kasai K, Takeda M, Ozaki N, Okazaki Y, Yoshikawa T, Amano N, Washizuka S, Yamamoto H, Miyata T, Itokawa M, Yamamoto Y, Arai M.
-
Journal Title
Biochem Biophys Res Commun.
Volume: 479(3)
Pages: 447-452
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
-
-
-
-
-
-
-
-
-