2017 Fiscal Year Annual Research Report
唾液メタボローム解析による乳癌診断・治療薬選択支援リキッドバイオプシー法の確立
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16H05408
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
北川 雄光 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (20204878)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉本 昌弘 慶應義塾大学, 政策・メディア研究科(湘南藤沢), 特任教授(非常勤) (30458963)
高橋 麻衣子 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (50348661)
関 朋子 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (70528900)
林田 哲 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (80327543)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 乳がん / 唾液メタボローム / 診断 |
Outline of Annual Research Achievements |
組織の摘出や生検を施行せずに、血液などを用いて固形癌の診断やバイオマーカーの探索を行うリキッドバイオプシー法が提唱されている。本研究では唾液による早期乳癌のスクリーニング技術を確立する。さらに、進行再発乳癌患者の薬物療法による病勢の変化と、唾液メタボローム解析の発現パターンに、相関が認められるかを検証する。これにより、唾液によるリキッドバイオプシーが薬剤選択の基準として使用可能である事を示し、将来の臨床試験における基礎的根拠を確立することを目的とする。我々は、これまでに唾液が体内の様々な情報を反映している体液として、口腔内のみならず全身性疾患の診断応用への可能性を模索してきた。研究分担者である、慶應大学・先端生命科学研究所の杉本らは、CE-TOFMS(キャピラリー電気泳動・飛行時間型質量分析装置)を用いて、大腸癌や胃癌組織における網羅的な代謝プロファイルの測定を行ってきた。CE-TOFMSは解糖系・TCA回路に代表される中心炭素代謝や、核酸・アミノ酸合成など、エネルギー代謝に関連する主要な代謝物である、イオン性物質測定を得意とする。そのため、これらの代謝異常が多く認められる癌の研究や代謝レベルでのバイオマーカー探索に有用な方法であることが立証されている。これまでに慶應義塾大学において乳癌患者111名・健常者51名の計162名の唾液・血液サンプルが採取された。これによると、唾液より205の代謝物が定量可能であり、そのうち健常者と手術可能早期乳癌患者(未治療)の間で有意差が認められた物質は約60種類であり、唾液により良好に乳癌患者を健常者と鑑別することが可能であった。これらの治験をもとにして、大規模臨床試験を行い、早期乳癌スクリーニングにおける診断アルゴリズムの確立を目指す
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに慶應義塾大学において乳癌患者111名・健常者51名の計162名の唾液・血液サンプルが採取され、こちらに対して先行して解析が行われた。この解析結果を検証すべく、慶應義塾大学病院・帝京大学病院・東京医大病院・東京医大八王子医療センターの4施設において、規模を拡大して実施することを行った。すでに東京医大病院では乳がん患者のサンプル採取が開始されており、同院の検診センターを通じて健常者のサンプルも収集がすすんでいる。これらをCE-TOFMSおよびさらに精度を高めたLC-MSを使用して唾液メタボローム解析を用いた診断法の確立を試みている。昨年までの問題点は乳癌患者と健常者の間に年齢差が存在することであり、現在までに症例の集積を追加で行い、年齢差は解消されている。さらに、LC-MSでは安定しなかったアッセイ系を見直し、新たな手法を用いることで現在は結果にばらつきの少ない測定方法を確立し、大量の唾液メタボローム解析を行う準備を整えた。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの進捗状況」で述べた診断方法の確立をもとにして、本年度は臨床試験を遂行する。本試験では、training setとvalidation setの2つのコホートについて、感度・得意度・正診率などを判定し、実際の臨床応用を試みていく予定である。また、BRCA陽性の遺伝性乳がん・卵巣がん症候群でフォローアップ中の患者を対象として、唾液メタボローム解析の推移と乳癌・卵巣癌の発症に相関があるか否かを検討する新しい試みを開始する予定である。
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