2016 Fiscal Year Annual Research Report
血管内皮障害に基づく炎症・自然免疫活性化の制御による同種・異種肺移植成績向上戦略
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16H05432
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
佐原 寿史 鹿児島大学, 医用ミニブタ・先端医療開発研究センター, 准教授 (90452333)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 和彦 鹿児島大学, 医用ミニブタ・先端医療開発研究センター, 教授 (40241103)
清水 章 日本医科大学, 大学院医学研究科, 大学院教授 (00256942)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 移植・再生医療 / 肺移植 / アデノシンA2A受容体 / 異種肺移植 / 自然免疫 / 免疫寛容 / 前臨床実験 / ミニブタ |
Outline of Annual Research Achievements |
移植医療における課題である臓器不足の抜本的解消と長期予後の改善には、肺に豊富に含まれる血管内皮障害を契機とする炎症・凝固系/自然免疫系の活性化を制御することは必須である。特に本研究では、障害により生ずる内因性の炎症促進因子の制御や、炎症・凝固制御因子の枯渇に対する再賦活化をはかる研究に着手した。 平成28年度はこのうち特に炎症・凝固制御因子に着目した実験として、前臨床MHC確立ミニブタ脳死肺移植モデルを用いて、周術期のadenosine A2A receptor agonistの投与による移植肺への影響の評価を行った(目的1)。この結果、脳死ドナーおよび移植周術期のレシピエントへのadenosine A2A receptor agonist投与によって、移植後早期の虚血再灌流障害が抑制されるだけでなく、長期予後にも影響を与え、移植肺免疫寛容誘導に至る可能性が得られた。Adenosine A2A receptorは、自然免疫や獲得免疫をつかさどる様々な免疫担当細胞に発現しており、今後どのような機序により長期予後改善が得られているのか評価を進める。 また本研究は異種肺移植モデルの成績改善をはかるものであり(目的3)、平成28年度は予定に先駆けて、代表者が客員准教授を務める米国コロンビア大学においてブタ・ヒヒ間異種肺移植実験を開始し、移植肺の急性拒絶に関わる因子、あるいはそれを克服するものとして重要な因子の解析に着手した。全例手術あるいは術後管理に問題なく実験を行うことができており、今後生検検体や各種細胞学的評価を進めていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は研究計画に従い、MHC確立ミニブタを用いた慢性肺移植実験モデル(臨床に準じ、ドナー肺での炎症を惹起する脳死移植モデル)を用い、炎症・凝固制御因子の投与による短期・予後効果が得られる薬剤を見出すことができた。さらにH29年度以降に予定している異種肺移植実験にも予定に先駆けて着手しており、順調に進展しているものと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に確立した、adenosine A2A receptor agonistの周術期ドナー+レシピエント投与が有効であるという知見を受け、この治療がドナーに対して、あるいはレシピエントに対してのどちらが有効であるかを評価する。さらに今回の治療が心停止ドナーを用いた移植の際にも有効であるかについて評価する。一方で異種肺移植モデルについては、平成28年度に実施した実験から得られた肺組織検体や細胞学的検査の結果解析を進め、異種移植肺の生着阻害因子、あるいはその克服をいかに行うかという点について、特に炎症・凝固系/自然免疫系の活性化をいかに制御するかという点に焦点をあてて検討を進める。
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Research Products
(5 results)