2017 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of the microRNA-mediated RNA networks in castration resistant prostate cancer and development of innovative treatments
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16H05462
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
市川 智彦 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (20241953)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関 直彦 千葉大学, 大学院医学研究院, 准教授 (50345013)
坂本 信一 千葉大学, 大学院医学研究院, 助教 (70422235)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 前立腺癌 / 癌抑制 / 転移抑制 / 去勢抵抗性 / microRNA / 泌尿器癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
microRNAではguide鎖が遺伝子発現を制御し、相補的な配列であるpassenger鎖は関与しないとされていた。次世代シークエンサーを用いた解析を行い、passenger鎖であるmiR-145-3pが去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)において発現が低下していることを初めて示した。miR-145-3pが標的とする4つの遺伝子を同定し、予後予測マーカーとしての可能性を明らかにした。これらの成果をBr J Cancerに発表した。ホルモン感受性前立腺癌(HSPC)ならびにCRPCにおけるmiR-150-5p(guide鎖)とmiR-150-3p(passenger鎖)について解析し、いずれもヒト前立腺癌細胞株の遊走能や浸潤能を抑制することを示した。標的遺伝子としてSPOCK1を同定し、microRNAネットワークに着目した新規治療開発の可能性について明らかにした。これらの成果をInt J Oncolに発表した。前立腺癌においてmiR-205-5pが制御する37個の候補遺伝子を同定した。The Cancer Genome Atlas databaseを用いて解析し、37個のうち7個の遺伝子(HMGB3, SPARC, MKI67, CENPF, CDK1, RHOU, POLR2D)について、発現亢進が疾患特異的生存率の低下に関連していることを明らかにした。HMGB3遺伝子についてさらに解析を進め、HSPCならびにCRPCにおいて発現が低下していることを明らかとした。新たな治療標的を同定するための手法を確立するとともに、これらの成果をJ Hum Genetに発表した。前立腺癌の臨床症例についてもデータをまとめ英文誌に論文発表した。その他の泌尿器癌においてもmicroRNAに関する解析を行い英文誌に論文発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要にも示したとおり、microRNAではguide鎖が遺伝子発現を制御し、相補的な配列であるpassenger鎖は関与しないとされていた。次世代シークエンサーを用いた解析を行い、passenger鎖であるmiR-145-3pが去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)において発現が低下していることを初めて示した。これにより、研究が大きく展開し、前立腺癌におけるmicroRNAによる遺伝子発現の制御に関する機序の解明に向けて大きく進展することができた。以降、guide鎖のみでなくpassenger鎖についても解析を進めた。研究実績の概要にも示したとおり、passenger鎖であるmiR-150-3pからは標的遺伝子としてSPOCK1を同定した。また、網羅的遺伝子解析やin silico解析、The Cancer Genome Atlas databaseを用いた解析により、効率よく候補遺伝子を絞り込む手法を確立した。miR-205-5pからは7個の候補遺伝子まで絞り込むことができ、臨床検体における発現解析と一致した結果が得られることも示すことができた。 また、その他の泌尿器癌においても同様の手法を用いて解析を行い、候補遺伝子を同定することが可能であることを示すことができた。これらの成果も英文誌に発表し、microRNAによる癌制御の解明に向けて、研究を進めることができた。 以上に示すとおり、本研究課題はおおむね順調に進展していると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
CRPC剖検検体の癌部で発現が抑制されているmicroRNAに着目し、癌細胞株(PC3/PC3M/DU145)にmicroRNAを核酸導入し、細胞の増殖能・遊走能・浸潤能について、癌抑制効果があるか、検討を行う。癌細胞の増殖を抑制、あるいはアポトーシスを誘導するmicroRNAを「増殖抑制型microRNA」、癌細胞の遊走能・浸潤能を抑制するmicroRNAを、「転移抑制型microRNA」の候補として機能分類する。機能分類できた「癌抑制型microRNA」については、順次、microRNAが制御する分子経路の探索を開始する。続いて、①microRNA導入細胞の網羅的な発現解析(microアレイ解析)、②microRNAデータベースの活用(miRBase;TargetSCan)、③臨床検体の発現情報(Gene Expression Omnibus)を組み合わせる事で、microRNAが制御するタンパクコード遺伝子の効率的に探索する。また、microRNAが制御する膨大な遺伝子群を、KEGG(Kyoto Encyclopedia of Genes and Genomes)に当てはめて機能分析する事で、microRNAが制御する分子経路を効率よく探索する。これらの計画が順調に進んだ場合は、CRPCで活性化している分子経路を遮断する戦略を考案し、まずin vitroにおける検証を行う。活性化シグナルの起点が細胞表面の受容体であれば、現在、臨床で使用されている分子標的薬を組み合わせた治療が考えられる。また、細胞増殖シグナル受容体やECM受容体(インテグリン)の阻害剤に関しては、上市前の抗体薬や低分子化合物が多数報告されている。入手可能な抗体薬や低分子化合物についても同様に研究対象として、その有効性について確認する。
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Research Products
(14 results)