2017 Fiscal Year Annual Research Report
救急医療における中毒診療のパラダイムシフト -中毒物質の迅速検査システムの構築-
Project/Area Number |
16H05495
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
舟山 眞人 東北大学, 医学系研究科, 教授 (40190128)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
臼井 聖尊 東北大学, 医学系研究科, 講師 (80567884)
藤田 友嗣 岩手医科大学, 医学部, 助教 (50721974)
久志本 成樹 東北大学, 医学系研究科, 教授 (50195434)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | プローブエレクトロスプレーイオン化法 / 薬毒物 / 質量分析 / 中毒診療 |
Outline of Annual Research Achievements |
探針エレクトロスプレーイオン化法(Probe Electro Spray Ionization、PESI)は、試料の前処理がほとんど不要で、迅速かつ簡便に物質の検出を可能とする比較的新しいイオン化法である。これまでに我々は、PESIとタンデム型質量分析計(MS/MS)を組み合わせたPESI-MS/MSを用いて、臨床中毒分野における血中薬毒物分析への応用を目指して研究を行なってきた。昨年度は,血清中のアセトアミノフェン(APAP)を対象として、PESI-MS/MSによる迅速試験法の開発に着手し良好な結果を得た。そこで本年度は,PESI-MS/MSによる血清中APAPの定量分析法についてバリデーションを行なった。APAPを添加した血清を内標準物質APAP-d4 (IS)を含む10 mM ギ酸アンモニウム:エタノール溶液(1:1 v/v)で希釈したものを試料 (10 μL)として、PESI-MS/MSによる測定を行なった。測定モードはポジティブ、定量用トランジションとして,152 >110,152 > 65 (APAP 用) および156 >114 (IS 用)を用いた。分析バリデーションの項目としては、検量線の直線性,真度・精度,検出限界,定量下限などについて評価を行った。PESI-MS/MSは、1 試料あたり0.3 分の測定時間で血清試料中からAPAPを検出することが可能であった.定量用に作成した検量線に関しては 1.56-200 μg/mL (中毒を想定した領域)において妥当な直線性(R2=0.998)が得られた。また、この範囲内におけるQCサンプル(高,中,低濃度)の%RSD は6% 以下であり,%REに関しては3% 以下 であった。検出下限値は 0.30 μg/mLであり,定量下限値は 1.0 μg/mLであった。いずれも臨床中毒分野への応用としては十分な値であると考えられた。本法は初期治療へ貢献可能な薬毒物迅速スクリーニング法として有用であると考えられる.次年度は本法の分析対象薬毒物を増やし臨床での利用を目指していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、最初にアセトアミノフェン(APAP)を対象としてプローブエレクトロスプレーイオン化-タンデム質量分析法による分析法のバリデーションをおこなった。その結果,分析バリデーションの各項目で,臨床中毒分野への応用としては十分な値を得ることができた。またグリホサート、グルホシネート、パラコート、ジクワット、サリチル酸など臨床中毒上重要な化合物について,APAP 同様に検出可能かどうか,予備的な試験を行なったところ,いずれの化合物も血清試料から迅速かつ簡便に検出できることがわかったため,次年度はこれら化合物についても詳細な検討を行なう.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も、日本中毒学会が指定する「分析が有用な中毒起因物質」を中心として、PESI-MS/MSによる血清中薬毒物の直接分析をさらに推進していく予定である。すなわち予備試験において検出が可能であったグリホサート、グルホシネート、パラコート、ジクワットおよびサリチル酸などについてより詳細な検討を行ない、臨床中毒分野への応用を目指していく。
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