2017 Fiscal Year Annual Research Report
侵襲時再生治療の新たな展開:幹細胞移植と新規若返り因子・長寿ホルモン補充の有効性
Project/Area Number |
16H05498
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小倉 裕司 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (70301265)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉矢 和久 大阪大学, 医学部附属病院, 助教 (40379201)
嶋津 岳士 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (50196474)
入澤 太郎 大阪大学, 医学部附属病院, 助教 (50379202)
清水 健太郎 大阪大学, 医学部附属病院, 助教 (60379203)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 再生 / 幹細胞移植 / 若返り因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、侵襲時再生応答からみた新たな治療戦略として、血管内皮および腸管上皮の修復・再生効果をもつ幹細胞移植に加え、新規若返り因子、長寿ホルモンの補充療法の有効性を評価することである。以下の2点に目標を絞り研究を進めてきた。①外傷、敗血症、two-hit modelの異なる多臓器障害モデルにおいて、骨髄間葉系幹細胞、骨髄由来単核球細胞、腸管上皮幹細胞の細胞移植の効果を評価した。新規若返り因子GDF(成長差別化因子)11投与の効果を評価した。②各種細胞移植、GDF11の補充にともない、血管内皮および腸管上皮における再生応答の発現変化を評価した。 その結果、平成29年度は、骨髄由来単核球細胞 (BMMNCs)移植が抗炎症作用、組織修復作用を発揮して急性炎症侵襲モデルにおいて有効性を示すことを見出し、以下の知見を得た。12週齢ラットの熱中症モデルを用い、健常ラットの大腿骨、脛骨より骨髄液を採取し、BMMNCsを単離した後、侵襲暴露直後に静注投与した、一個体に対して1×107個を静注投与した。BMMNCs移植群、コントロール群の7日間生存率、血清サイトカイン、組織学的検討を行った。その結果、BMMNCs移植群は7日間生存率が有意に高く(80% vs 48%)、また暴露後3、6、12時間後の血清IL-6、TNF-α、Histone H3などの炎症マーカー、ICAM-1、Syndecan-1の血管内皮マーカーの濃度は有意に低かった。またコントロール群では侵襲暴露後6時間後の肺組織に間質浮腫や炎症細胞浸潤、血管内皮障害などの著明な炎症所見を認めたが、BMMNCs移植群ではこれらの所見が抑制されていた。以上の結果から、BMMNCs移植は、過剰な炎症反応の抑制を通して侵襲反応を制御し、臓器障害や生命予後を改善する可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、以下の2点に目標を絞り実施している①外傷、敗血症、two-hit modelの異なる多臓器障害モデルにおいて、骨髄間葉系幹細胞、骨髄由来単核球細胞、腸管上皮幹細胞の細胞移植に加え、新規若返り因子GDF(成長差別化因子)11および長寿ホルモンadiponectin補充療法の効果を評価する。②細胞移植に加え、GDF11、adiponectinを補充し、血管内皮および腸管上皮における再生応答の発現をマイクロアレー法及びメタボローム解析を用いて明らかにする。 現在、①に関して各種細胞移植と新規若返り因子の評価が既に進んでおり、今後有効な組み合わせの評価を予定通り進める。②に関して腸管上皮の再生応答の評価、腸管内容のメタボロームが既に進んでおり、今後血管内皮も含めた評価を予定通り進める。 以上より、本研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までの研究結果をもとに、重症外傷(クラッシュ症候群)、敗血症(盲腸結索穿刺)、外傷後敗血症による多臓器障害マウスモデルにおいて、各種幹細胞細移植とGDF11、adiponectin補充療法の併用が血管内皮、腸管上皮の修復・再生を促進して臓器障害を軽減するか、生存率を改善するか、を比較検討する。血管内細胞移植には、健常マウスの脛骨、腓骨から採取する骨髄間葉系幹細胞、骨髄由来単核球細胞を使用する。この際、骨髄間葉系幹細胞は、採取した骨髄細胞を特殊培地に接触させ、培養増殖させて回収する。骨髄由来単核球細胞は、採取した骨髄細胞をフィコール法で遠心分離し、単核球成分を分離して回収する。骨髄間質細胞および骨髄由来単核球細胞はそれぞれ5x106個を1単位とし、それぞれの細胞1単位を各侵襲モデルの侵襲直後、侵襲3時間後(two-hitモデルでは2次侵襲直後、3時間後)のタイミングで血管内移植する群に分け、各群の血管内皮における再生、免疫応答を中心に経過を比較検討する。また、同スケジュールでGDF11、adiponectinの補充療法を行い、細胞移植の併用にともなう再生応答各指標、免疫応答各指標、炎症反応各指標の変動、ケミカルメジエーターの動きを経時的に評価するとともに、病理組織診断による各臓器障害、および生存曲線が改善するか否か評価する。特に、自然免疫応答として血中DAMPs、細胞内インフラマソームの活性化、獲得免疫応答としてTregの活性化を経時的に評価し、各細胞移植が、再生応答だけでなく、免疫応答バランスにどのような効果を及ぼすかを明らかにする。さらに、各多臓器障害モデルにおける各細胞移植の有効性を比較検討し、侵襲の種類による細胞移植の反応性の違いを明らかにする。
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