2016 Fiscal Year Annual Research Report
ゲノム連鎖とエピゲノムがもたらすA群レンサ球菌の系統進化機構の解明
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16H05501
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
丸山 史人 京都大学, 医学研究科, 准教授 (30423122)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小椋 義俊 九州大学, 医学研究院, 准教授 (40363585)
村瀬 一典 京都大学, 医学研究科, 研究員 (40710869)
中川 一路 京都大学, 医学研究科, 教授 (70294113)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | メチローム / エピゲノム / A群レンサ球菌 / ゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトの重要な病原細菌である「A群レンサ球菌の株特異的病原性発揮機構の解明」を1,000株程度の比較ゲノム解析、ゲノム連鎖解析、トランスクリプトームとメチローム解析から明らかにし、これをモデルとして「細菌におけるエピジェネティック駆動型の適応進化」研究基盤を築くことを目的として研究を進めている。これまで、GASによる劇症型感染症の発症メカニズムを解明するために、本菌の全ゲノム解読および比較ゲノム解析、病原因子の機能解析、また、宿主側の免疫機構解析が進められてきた。こうした研究から、本菌はゲノムサイズが小さい割に多くの病原遺伝子を保有していること、また、病原関連遺伝子の二成分制御システムにおける一塩基多型 (SNP) が劇症化の一因ではないかと報告されている (PLoS Pathog., 2009等)。しかし、本遺伝子のSNPだけでは劇症株のごく一部しか説明できていない。GASによる劇症型感染症の原因を究明するには、CRISPR欠損型においては劇症型株が多く含まれること、急速な単一クローンの拡散機構の解明が重要な課題として残されており、この解明を本課題の目的とする。すなわち、i) 劇症型株特異的遺伝子は存在しないため、劇症型特異的SNPsの関与、ii) ファージによってもたらされる外来性の病原因子の組み合わせ、iii) ファージ由来メチラーゼによるメチル化に伴う病原遺伝子発現への影響、を明らかにする (病原性大腸菌では全遺伝子の1/3に影響を与えることが報告された; Nat Biotechnol. 2012)、ことを進めている。その成果として、本年度の比較ゲノム解析の結果、メチラーゼのゲノム間多様性は、GASの病原性やゲノム多様性をもたらすバクテリオファージによってもたらされていることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予備データからA群レンサ球は、異なる種類・数の制限修飾系を有しており、その多くが可動性因子上に存在し、メチロームプロファイルが株ごとに異なっている。そこで、予備データの6株に加えて、近縁かつ可動性因子上のメチラーゼが異なる2菌株4セットの合計8菌株を選定し、メチローム解析を実施した。メチローム配列取得については、抽出したゲノムDNAについて、ライブラリの作製(インサート長20 kbp程度)、Pacific Biosciences PacBio RS II (P6C4 chemistry) での配列取得を1試料につき500 Mb以上の配列を取得する (5mCを含むメチル化部位の検出のため下記ゲノムサイズのx 250以上のシーケンスが必要)。特に単独で存在し、そのメチラーゼの種類と数に多様性が高いType II制限修飾系に着目する。全A群レンサ球菌株のファージ、Integrative and conjugative elements (ICE) についてコドン使用頻度等を用いて情報的に予測し、染色体上と可動性因子上の制限修飾因子をREBASEデータにより予測した(http://rebase.neb.com/rebase/rebase.html)。これらは、申請書に記載した内容であり、ほぼ同内容を実施できていることから、進捗は概ね順調であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
予備データからA群レンサ球菌は、ゲノム内の可動性因子 (CRISPR) を段階的に変化させることで、系統分化し、高病原性株が出現していることがわかった。しかし、解析した259株では、段階的な変化が未知の箇所でみとめられたことから、1,000株のデータおよび必要な追加ゲノムシーケンスをIllumina MiSeqシーケンサー1ランで行う (MiSeq Reagent v3; 300 bp x 2)。系統樹の主要分岐箇所全てを網羅するため40株分のドラフトゲノム配列を取得する。 予備データでは、近縁種である豚レンサ球菌の例を示している。本菌では、CRISPRのみならず、制限修飾因子、トキシンアンチトキシンなどの細菌の可動性因子に対する抑制因子の系統分化への寄与が明らかとなった。そのため、A群レンサ球菌においても可動性因子とその抑制因子の系統分化への寄与を解明する。 また、ブタレンサ球菌の際に明らかになった、多様化に関わりうる上記の免疫システムが存在するゲノム領域, defense locusが本菌種にも存在するのかを解明する。
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Research Products
(5 results)