2017 Fiscal Year Annual Research Report
シェーグレン症候群発症におけるマクロファージの重要性
Project/Area Number |
16H05511
|
Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
新垣 理恵子 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学系), 准教授 (00193061)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 安希子 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学系), 助教 (70452646)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | シェーグレン症候群 / マクロファージ / 自己免疫疾患 |
Outline of Annual Research Achievements |
SSモデルマウスを使用して、SSの標的臓器である唾液腺組織中のマクロファージの動態を解析し、SS発症に呼応して標的臓器の唾液腺中にF4/80陽性マクロファージが増加することを見出した。多くの組織において恒常性維持の重要な機能(アポトーシス細胞の貪食・除去等)をマクロファージは担っているが、組織によっては血中の単球が浸潤してくるのではなく、組織常在のマクロファージがその機能を担っている(肝臓のクッパー細胞等)。そこで唾液腺にも常在マクロファージが存在するのではないかと考え、健常マウスの唾液腺マクロファージを解析したところ、浸潤マクロファージとは異なる分化マーカーを示すマクロファージの存在を見出した(F4/80+CD11bhigh)。一方でSS発症初期や炎症に応じて骨髄から唾液腺に浸潤してくるマクロファージはF4/80+CD11blowであった。そこでこれら2種類の唾液腺マクロファージの貪食能を解析したところ、F4/80+CD11bhighの唾液腺常在型マクロファージの方がより強い貪食能を示すことが明らかとなった。また唾液腺マクロファージがSS病態に応じて産生するケモカインやケモカイン受容体の発現をPCR-アレイを用いて検討したところ、F4/80+CD11bhighの唾液腺常在型マクロファージがF4/80+CD11blowのマクロファージに比較して非常に多くのケモカインを産生していることが判明した。それらの中で最も発現比が高かったCCL22ケモカインに注目して解析する。抗CCL22抗体やCCL22阻害剤投与による病態改善を目指す予定である。マクロファージを中心としたサイトカイン・ケモカインネットワークを明らかにすることができれば、唾液腺導管周囲の種々の免疫担当細胞の浸潤・集積メカニズムを知ることができると期待している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SSモデルマウスの唾液腺におけるマクロファージの動態を解析し、病態に応じてマクロファージの数が増加することを明らかにしてきた。また唾液腺には少なくとも2種類のマクロファージが存在し、一般的なM1、M2マクロファージマーカーでは、その分類が難しかったが、CD206及びMHC ClassII、iNOS等のマーカーとCD11b発現の強弱により分類可能であることを見出した。その結果、唾液腺常在で貪食能が高いマクロファージはF4/80+CD11bhigh、 病態発症初期に骨髄から浸潤してくるマクロファージはF4/80+CD11blowであることを利用して精製することが可能となった。これらのマーカーを使用して、唾液腺マクロファージをそれぞれ分離し、それぞれの細胞集団のケモカインやケモカイン受容体発現をPCR-アレイにより解析した結果、F4/80+CD11bhighの唾液腺常在型マクロファージがF4/80+CD11blowのマクロファージに比較して非常に多くのケモカインを産生していることが判明した。それらの中で最も発現比が高かったCCL22ケモカインに注目した。SSモデルマウスの脾臓や頸部リンパ節のT細胞はCCL22の受容体であるCCR4をコントロールマウスよりも強く発現しており、またCCL22に対する遊走能もSSモデルマウスにおいて高かった。またこれらT細胞はCCL22シグナルを受け取ることによってIFN-γ産生やTh1型転写因子(T-bet)の発現が高くなることも確認した。今後さらに、マクロファージから産生されるケモカインの病態に応じた発現とT細胞浸潤を対応させて詳細に解析しようと考えている。それぞれのマクロファージの病態発症への関与を明らかにし、病態発症におけるマクロファージの重要性という新たの方向性からSS発症機序解明に貢献できると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
唾液腺特異的な病態に応じたそれぞれのマクロファージ集団をソーターにより分離精製した唾液腺マクロファージの培養系において、貪食能や抗原提示能を確認する。これらの実験系のコントロールには骨髄由来マクロファージを使用し、貪食能測定には、蛍光ビーズだけではなく、アポトーシスを誘導した唾液腺上皮細胞等を利用する。唾液腺マクロファージの貪食能や抗原提示能が障害(亢進)されていた場合は、マクロマクロファージの唾液腺での機能障害(更新)がSS発症起因の一因であることを提言できると考えている。 また当該マクロファージを枯渇させることができれば、病態への関与が確定され、病態抑制の足がかりになる。SS病態発症へのマクロファージの重要性を議論するには、抗F4/80抗体投与やCD11bノックアウトマウスのような全身性のマクロファージ枯渇ではなく、唾液腺特異的なマクロファージ枯渇が最善の結果を示すと思われる。そこで当該マクロファージに貪食能がある場合は、貪食されるとマクロファージ内で毒性を発揮するクロドロン酸リポゾームを舌下小丘から投与する方法を試作しようと考えている。また唾液腺に特異的に感染するアデノウイルス(adeno-associated virus;AAV2)にcre recombinaseをコードしたウイルス(AAV2-cre)を利用して、入手可能なCCL22等の候補分子loxPマウスにAAV2-creウイルスを感染させると唾液腺特異的に目的分子の発現を抑制することが可能である。この手法の獲得は個体全体における唾液腺特異的な病態を捉えることができるので、今後の唾液腺特異的なメカニズムの解析に非常に有用であると考えている。またマクロファージを枯渇させる時期や量によって病態を制御できれば、マクロファージの病態発症への重要性を確立するだけではなく、治療法への応用が可能になると期待している。
|
Research Products
(13 results)
-
-
-
[Journal Article] Establishment and characterization of a clear cell odontogenic carcinoma cell line with EWSR1-ATF1 fusion gene2017
Author(s)
Kujiraoka Satoko, Tsunematsu Takaaki, Sato Yukiko, Yoshida Maki, Ishikawa Ayataka、Tohyama Rei、Tanaka Michio、Kobayashi Yutaka, Kondo Tomoyuki, Ushio Aya, Otsuka Kunihiro, Kurosawa Mie, Saito Masako, Yamada Akiko, Arakaki Rieko, Miyamoto Youji, Ishimaru Naozumi, Kudo Yasusei
-
Journal Title
J oral oncology
Volume: 69
Pages: 46~55
DOI
Peer Reviewed / Open Access
-
-
-
-
-
-
-
-
[Presentation] シェーグレン症候群モデルマウスにおける濾胞ヘルパーT細胞の解析,2017
Author(s)
大塚 邦紘, 山田 安希子, 齋藤 雅子, 牛尾 綾, 黒澤 実愛, 鯨岡 聡子, 常松 貴明, 工藤 保誠, 新垣 理恵子, 石丸 直澄
Organizer
第106回日本病理学会総会
-
-