2017 Fiscal Year Annual Research Report
Analysis of oral microbiome formation and effect on host immunity
Project/Area Number |
16H05512
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
小松澤 均 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 教授 (90253088)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松尾 美樹 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 准教授 (20527048)
大貝 悠一 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 助教 (40511259)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 口腔細菌 / マイクロバイオーム / 抗菌性因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究目的である口腔マイクロバイオームの多様性及び形成機序を明らかにするために、本年度は下記の研究成果を得た。 1)唾液を用いたメタゲノム解析:昨年度に収集した刺激唾液サンプル191検体のメタゲノム解析をT-RFLP法を用いて解析を行った結果、細菌の種類、構成比率は個体差が大きかった。今後、分離した菌の性状解析の結果をもとに、関連性を検討していく。口腔の黄色ブドウ球菌の分離の有無との相関性の認められる菌種などを検討したが、現時点では明らかにできなかった。 2)分離したS. mutansの解析:分離したS.mutans134株について、昨年度にバクテリオシン遺伝子保有状況を確認したが、さらにその発現性について検討を行った。当初、液体培地で培養し、発現解析を行ったが、多くのバクテリオシン遺伝子発現性が認められなかった。発現条件の検討した結果、寒天培地上での発現性が強く認められたため、全株の発現性を検討している。全ての解析が終了していないが、遺伝子を保有しているにもかかわらず、発現性を示さない株の存在があることが認められた。また、分離した菌株の全ゲノム配列の決定を行っており、次年度初めには解析が終了する。得られたゲノム情報から、各菌株の性状解析、バクテリオシン遺伝子の多型性等の解析を進める。 3)レンサ球菌種の共培養試験:分離したS.mutansのバクテリオシン産生株を用いた、他種レンサ球菌との共培養試験を行った結果、バクテリオシン産生菌の種類により、構成する比率が変化することが明らかとなった。 本年度は、メタゲノム解析、分離菌の全ゲノム配列決定などに重点を置き、マイクロバイオーム形成と抗菌性因子との関連性を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していたメタゲノム解析は本年度終了し、口腔細菌の分離もS. mutansについては十分に行えた。他レンサ球菌種や他属菌の分離も当初は同時に行う予定であったが、それぞれに操作が煩雑であるため、S. mutansを中心に行った。一部、同一口腔内から複数のレンサ球菌種、歯周病原因菌を分離しており、今後も必要に応じてさらに分離する。また、バクテリオシン遺伝子の発現性検証の結果から、株間での遺伝子発現性に多様性があるため、バクテリオシン遺伝子領域の多型性の可能性が認められたため、S. mutans134株について全ゲノム配列の決定を試みた。これまで、多検体でのS.mutansゲノム配列の比較はなく、今後の解析により有益な情報が得られることが予想される。 共培養実験については、当初考えていたよりも、条件設定が難しかったが、寒天培地上で行うことで安定した結果が得られるようになってきており、今後さらに検討を行い、複数の菌種を用いた共培養系の確立ができると思われる。すでに、予備実験的にはバクテリオシン産生菌の種類や発現性により、in vitroでの口腔レンサ球菌種の構成比率は変化することを明らかにしている。 宿主免疫に及ぼす影響の検討がやや遅れているが、これはゲノム解析などの実験が多く入ったためであるが、ゲノム解析からは有益な情報が得られることが期待されるため、全体的には順調に進んでいると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28, 29年度に分離した細菌を中心に、バクテリオシンが細菌叢形成に与える影響について検証し、形成した細菌叢のマイクロバイオームとしての機能解析を行う。 (1)口腔細菌の性状解析:口腔から分離したS. mutans菌134株について、種々のバクテリオシン遺伝子破壊株を作成する。遺伝子破壊株を用いて、他種レンサ球菌との共培養試験を行い、バクテリオシンの細菌叢形成に及ぼす影響について検証する。また、他種レンサ球菌、歯周病原因菌の分離:種々の細菌の分離を行い、共培養試験等の検証を行う。 (2)細菌叢解析:平成29年度に明らかにした約200サンプルの唾液のメタゲノム解析を用いて、S. mutansの産生するバクテリオシンの種類と産生性との関連性について、検証する。また、メタゲノム解析で同定された菌種について、個々の菌種間での相関性について検証する。 (3)抗菌性因子解析:分離菌の唾液中のディフェンシン、リゾチーム、ペルオキシダーゼ、ラクトフェリン等の種々の抗菌性因子に対する感受性について検討する。 (4)分離S. mutansのゲノム解読:平成29年度末から行っている分離したS. mutans菌株全てについてゲノム解読を継続して行う。ゲノム情報から、バクテリオシン産生遺伝子の詳細な遺伝子情報を得ることで、分離菌の性状との関連性について検証する。また、S. mutansのゲノムタイピングを行い、バクテリオシン遺伝子との関連性について検証する。 (5)マイクロバイオームの機能解析:種々のバクテリオシン産生菌を用いて、複数のレンサ球菌種と共培養し、バイオフィルムを形成後、病原性細菌のバイオフィルムへの定着性について比較検討する。併せて、共培養した培地を用いて、宿主細胞への影響について検証する。
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