2017 Fiscal Year Annual Research Report
トランスポゾン遺伝子発現誘導システムをiPS細胞に応用した歯の再生技術の開発
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16H05519
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
江草 宏 東北大学, 歯学研究科, 教授 (30379078)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新部 邦透 東北大学, 大学病院, 助教 (50468500)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 再生歯学 / iPS細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、iPS 細胞から歯胚再生を誘導する戦略として、上皮間葉相互作用という三次元的な発生環境の模倣(空間的模倣)に加えて、歯胚発生のキーとなる遺伝子を本来の発生過程で発現している時期を模倣して誘導するアプローチ(時間的模倣)を提案する。これを実現するため、トランスポゾンを利用した遺伝子導入法から導入遺伝子の発現のOn/Off を自在に制御する技術を応用する。本研究の目的は、歯胚発生のキーとなる遺伝子の発現が調節可能なiPS 細胞を作製し、発生過程の時間・空間的な模倣による歯胚誘導を試みることによって、iPS 細胞を用いた歯の再生技術の基盤を確立することである。 初年度には、歯の発生に関与するBMP-4およびAmelogenin遺伝子をPiggyBacベクターシステムを用いてマウス歯肉由来iPS細胞に導入し、テトラサイクリン(Tet)制御性-On/Off発現誘導システムが作動することを確認した。今年度は、作製したBMP-4遺伝子導入iPS細胞株を浮遊培養によって細胞凝集塊(胚様体)を形成させ、培地にTet(ドキシサイクリン)を添加して強制発現させたBMP-4が胚様体の分化の方向付けに及ぼす影響を検討した。iPS細胞胚様体にBMP-4遺伝子を強制発現させると、中胚葉系および上皮(非神経外胚葉)系の細胞へ誘導されることが明らかとなった。また、このiPS細胞塊をマウス皮下に移植すると、形成したテラトーマ内には、中胚葉に由来する軟骨組織が有意に多く含まれていた。さらに、BMP-4を強制発現させて作製したiPS細胞塊にのみ、非神経外胚葉に由来する多数の毛包の形成を認めた。本研究成果は、BMP-4の遺伝子操作が、iPS細胞から中胚葉や非神経外胚葉に由来する組織/器官への自己組織化を容易にする可能性を示す知見であり、これを基に次年度の研究を展開する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画の申請書には、平成29年度までに歯胚の発生に関与する遺伝子の発現をTet制御性にOn/Off可能なiPS細胞を樹立し、その遺伝子の強制発現がiPS細胞の歯原性細胞分化に及ぼす影響を検討することを計画していた。これについては、BMP-4遺伝子発現誘導システムの作動が確認できるiPS細胞株の樹立に成功し、この遺伝子の強制発現がiPS細胞胚様体を中胚葉系および上皮(非神経外胚葉)系の細胞へ誘導することを明らかにしている。このように、得られた知見を基に次の研究段階に進める状況にあるため、本研究は順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までに作製したTet誘導性BMP-4発現制御iPS細胞株を用いてBMP-4遺伝子の発現を誘導し、胚様体を中胚葉系あるいは上皮(非神経外胚葉)系の細胞へ分化を方向付けた後に、成熟した軟骨細胞あるいは歯原性上皮細胞の構造体への自己組織化誘導を試みる。分化の程度はRT-PCR、Western blotting解析および免疫蛍光観察等により確認する(担当:研究代表者・江草)。このようにして得られた細胞塊を、マウスあるいはラット腎臓被膜下へ移植し、テラトーマ形成の有無を観察する。また、iPS細胞由来成熟軟骨細胞構造体をラット膝関節軟骨欠損モデルを用いて移植し、その軟骨再生への影響を明らかにしていく(担当:研究分担者・新部)。
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