2016 Fiscal Year Annual Research Report
上皮膜イオン濃縮機構による全身水収支診断とドライマウス治療戦略
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16H05527
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Research Institution | Matsumoto Dental University |
Principal Investigator |
中本 哲自 松本歯科大学, 歯学部, 教授 (30514989)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒岩 昭弘 松本歯科大学, 歯学部, 教授 (10195571)
山口 正人 松本歯科大学, 歯学部, 助教 (30410434)
小町谷 美帆 松本歯科大学, 歯学部, 助教 (00387432)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 口腔乾燥症 / 唾液腺 / 糖尿病 / 顎下腺 / カルシウムイオン |
Outline of Annual Research Achievements |
口腔乾燥症は潜在的な患者を含めわが国でも800~数千万人の患者が存在するといわれ、とくに高齢者での歯科的管理に大きく影響する。超高齢社会にあるわが国において、個別の歯科治療よりも、口腔全体に影響を及ぼす口腔乾燥の治療技術の確立は、大規模に適用でき、国民の福音となる。 研究では治療技術開発の端緒として、全身疾患に関連した口腔乾燥発症メカニズムの検索として、糖尿病モデルマウスを用いて解析した。糖尿病モデルマウスではコントロールマウスと比較し、顎下腺腺体レベルで唾液分泌が減少していた。糖尿病マウスで分泌に重要な役割を果たす腺房細胞の割合の減少が確認されたものの、分泌に必要な膜タンパクを免疫組織学的解析では、水チャネル(AQP5)、ムスカリン性レセプター(m3)およびNa-K-2Cl共輸送担体(NKCC1)のいずれも差を検出できなかった。さらに、細胞レベルで副交感刺激に伴う細胞内のカルシウムイオン上昇では糖尿病モデルマウスで有意な減少が観察された。すなわち、糖尿病においては腺房細胞の構成割合変化と、液体成分を分泌する腺房細胞レベルでの反応性の減弱の総和として唾液分泌が減少している可能性が高い。糖尿病において、唾液腺の末梢に器質的変化が強く現れていることは、本疾患に伴う口腔乾燥治療が極めて困難であることを示している。しかしながら、器質的変化が可逆的であるか、不可逆であるか、現時点で不明であるため、今後の研究が不可欠である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の一部が成果として学術誌に掲載され、本研究の新たな可能性が示せたため、概ね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では平成29年度はin vivoの研究に移行する予定であったが、平成28年度の結果を踏まえ、糖尿病関連の解析をまずは追加する。その端緒として、糖尿病治療薬そのものが唾液分泌に影響を及ぼすかどうか検証する。併せて高血圧治療薬が分泌にどのように影響するのか解析する予定である。その過程で当初の計画にあったNKCC1の機能解析を行う予定である。
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