2016 Fiscal Year Annual Research Report
Fundamental research on the development of next generation bone tissue engineering
Project/Area Number |
16H05546
|
Research Institution | Matsumoto Dental University |
Principal Investigator |
各務 秀明 松本歯科大学, 歯学部, 教授 (80242866)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
住田 吉慶 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 准教授 (50456654)
李 憲起 松本歯科大学, 総合歯科医学研究所, 講師 (60350831)
井上 実 松本歯科大学, 歯学部, 助教 (90599036)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 骨再生 / 組織工学 / 再生医療 / サイトカイン / アポトーシス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、細胞移植後に起こる局所での炎症やサイトカイン発現の詳細と、これらが移植された骨芽細胞に与える影響の詳細を明らかにすることを目的としている。また、移植細胞に対する障害を最小化する方法を解明することで、さらに効率的な次世代の骨再生方法を開発することが狙いである。平成28年度には、骨再生の動物実験モデルを用いて異所性に培養骨を移植し、細胞移植後の組織からRNA を抽出することで、局所におけるサイトカイン発現を解析した。細胞移植部位においては、IL-2、 IL-4、IL-6,、TNF-αの発現が認められた。また、TNF-αに対する免疫組織化学染色を行ったところ、移植された細胞(担体周囲)に強い発現が認められた。移植細胞のアポトーシスを確認するために染色したところ、担体周囲の細胞に多くの陽性細胞が認められ、細胞移植後1週間程度の間に多くの細胞がアポトーシスにより失われていることが推測された。TNF-αは骨芽細胞に作用し、その細胞死を誘導する。したがって、TNF-αの発現を抑制し、移植された細胞のアポトーシスを抑制するための免疫抑制方法についての検討を行った。強力な免疫抑制剤である副腎皮質ホルモンを3回および7日間連続で投与し、サイトカインの発現および細胞死に対する影響を検討した。その結果、ステロイドの投与はIL-4の発現低下は見られるものの、IL-6の発現は逆に上昇させた。また、いずれの群においてもTNF-αの発現には有意な影響を与えなかった。以上から、細胞移植部位におけるサイトカインの発現は、全身的なステロイドなど抗炎症剤の投与の影響を受けにくい可能性が示唆された。今後は局所におけるサイトカインの制御の可能性についても検討する必要があると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
移植部位におけるサイトカインの発現解析については、real-time PCRおよび免疫組織化学により詳細な検討を行うことができた。その一方で、サイトカイン発現抑制のために検討した副腎皮質ホルモン(ステロイド)の全身投与では、局所におけるサイトカイン発現の抑制が十分に得られなかった。短期間のステロイド投与(3回)および1週間の連続投与についても検討したが、いずれも局所のサイトカインレベルには影響が少なく、明らかな抗炎症効果を認めなかった。ステロイドは臨床においても広く免疫抑制や抗炎症に用いられており、今回の実験にて移植部位における炎症性サイトカインのレベルに低下が見られなかったことは予想外の結果であった。このため、移植部位におけるサイトカイン制御には、通常の手術や移植における免疫応答、あるいは炎症のメカニズム以外のシステムが影響していることが推測されるため、今後は抗炎症あるいはステロイド以外の方法についても検討する必要があると考えている。この点については予測した成果が得られなかったため、目標を達成するためには新たな方法を今後検討する必要がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の研究成果の問題点として、副腎皮質ホルモンによってサイトカインの発現抑制が得られなかったことがあげられる。しかしながらその原因は不明であり、メカニズムを理解する必要がある。そこで、今回免疫抑制剤であるFK-506を投与し、その影響を検討することを検討している。また、もともとの実験計画として、全身投与ではなく局所におけるサイトカイン制御の方法として、IL-10に着目している。したがって、新たにIL-10を投与することで、サイトカインおよび細胞死の回避が可能かについて検討することでも効率的な骨再生につながる成果が期待できるものと考えている。
|